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創業初期を支えてくれた伝説の個人タクシー

今から10年前。創業3年目から5年目の時期は、3歩進んで2歩下がるような局面が続く厳しい時期でした。組織の成長のみならず、大企業のインターネット活用への期待も次第に高まっていき、案件が大型複雑化していったのもこの時期からでした。

そんな中、関西の某大手優良企業から超大型案件の引き合いがありました。案件の規模感としては少なく見積もっても7億円以上。当然ながらマルチベンダーチームで競争するWebの世界では超大型コンペとなります。

通常であれば、この規模の案件は大手のシステムインテグレーターなどが全体統括すべき案件ですが、この頃からデジタルマーケティング基盤構築の全体推進役としては、戦略やクリエイティブも含めたコンサルティングができる会社がリードすべきだという風潮も出始めていました。

そういう時代の変化の流れもあり、イントリックスが案件の全体統括をすることになりました。大手システムインテグレーター、専門分野で尖った実績を持つ開発会社やパッケージベンダーなど、ベンダー5社からなる提案チームを組成し、約3ヶ月にわたる戦いが始まりました。

ベンダー5社の強みや思惑、利害関係を調整しながら競争力のある提案に全体をまとめ上げていくプロセスは想像以上に大変でした。また、クライアントのWeb活用に対する意識は恐ろしく高く、10年前の時点で1日当たりのWeb経由の売上高をKPIとして定め各地域の販社トップもWebサイト上の顧客行動を常にチェックしているような企業でした。

当然ながらクライアントのリーダーの要求水準も恐ろしく高く、特にプレゼン後からベンダー決定までの1ヶ月間は毎日のように電話で3~4時間は話をし、水面下で色々な調整を行っていました。

社員数はこの頃20名前後。各分野の優秀な人財が揃いつつありましたが、大型案件に対応する上では社内体制だけでは足りず、要所に外部の腕利き人材も数名登用したチーム編成が必要で人材調達や関連する調整にも追われました。

当然ながらやることは山のようにあり、深夜の1時、2時くらいまで仕事をして終電がないのでタクシーで帰宅する日々が続いていました。当時は家庭の事情もあり、千葉県の柏から通っていたので体力的にも限界に来ていました。

そんなある日、偶然に出会ったのが “三枝タクシー”でした。

その日は午前3時くらいまでやることがあり、溜池山王にあった当時のオフィスを出ていつものようにタクシーに乗り込み、行き先を告げました。

ん、何かいつも座っているシートと明らかに違う・・・

わたしの様子を察したベテランの運転手の方が間髪を入れずに「遅くまでお疲れさまでございます。シート横のボックスにお酒とおつまみをご用意していますので、どうぞお好きなように召し上がってください」

生まれてはじめてタクシーの運転手の方から耳にするセリフに驚いたわたしは、「これ料金とかはどうなっているんですか?」と聞くと、通常運賃内にすべて含まれているとのこと。

そんなタクシー世の中にあるんだ・・普段とは明らかに異なる体験に戸惑いながらもビールと柿の種をいただいているうちに車は首都高に。明らかに他の車とは違う滑らかな加速と安定感、あまりの乗り心地の良さに「この車は何という車種ですか?」と聞くと、日産のリンカーンと言う高級車でシートは特注仕様になっているとのこと。

普通のタクシーでは感じたことのない、体の疲れが取れていく感覚に目を閉じて浸っていると、「ボックス横のそのボタンを押してください。マッサージ機能も使えます」。とこれまた驚きのセリフが。

押してみるとシート裏にあるマッサージ装置が作動して背中の凝りをほぐしてくれるではありませんか!!!

何なんだこのタクシーは・・・俺は疲れて夢でも見ているのか。

わたしは仕事の疲れを完全に忘れてこのタクシーのことをもっと知りたいと思い、色々と質問をしていきました。そのタクシードライバー“三枝さん”は、元々は大手タクシー会社で教官を務めていた優良ドライバーで定年になってから独立して個人タクシーをはじめたとのことでした。

コンセプトは「セルシオクラスの高級車で超快適に目的地までお送りします」で、三枝さんはじめ同じコンセプトでサービス提供する腕利き個人タクシーグループがあり、そのリーダー格が三枝さんだったのです!

そんな話をしていたのもつかの間、40分くらいで自宅まで快適に送り届けてくれた三枝さんにお礼を告げると、「お疲れさまでございました。またよろしくお願いします」と“三枝タクシー”と大きな文字で書かれた一枚の名刺を渡してくれました。

これがその後10年近くお世話になり、創業初期のわたしを支えてくれた“三枝タクシー”との最初の出会いです。

(後編に続く)

#創業初期を支えてくれた伝説の個人タクシー

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