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現代文化(VTuber)と伝統文化(落語)の継承と融合 VTuber富士葵トークセッションレポート

2021年2月20日~22日に神田明神にてKANDA FESTIVALが開催されました。2月23日に開催されたVTuber富士葵トークセッションの1部と2部に参加してきたので、そのレポートを書いていきます。

イベントは録画録音禁止、撮影は写真のみ可能(ただし落語中は撮影不可)というルールでした。私の書いたメモと記憶を頼りにどんなイベントだったかを振り返っていきます。

1部と2部は大まかなトークの流れは同じで、細かいトークの内容や落語の演目が異なっていました。そのため1部と2部で内容が重複する部分は省略していきます。

1部:オープニング

今回のトークセッションの司会を務められる中村祐美子さんがイベント前の諸注意を読み上げ、定刻通りに舞台の幕が上がりました。ちなみに中村さんは葵ちゃんが以前出演したイベント「Fight!」のMCを務められた方でもあり、約3年ぶりの再会とのこと。

KANDA FESTIVALのテーマは「現代文化と伝統文化の継承と融合」。このトークセッションでは現代文化代表としてVTuberの富士葵ちゃんと、伝統文化代表として落語家の桂竹千代さんが出演されました。

まずは二人の自己紹介。中村さんが葵ちゃんに「神田明神には来たことがありますか?」と質問すると、葵ちゃんは「プライベートでも来たことがあります。初めて来たのは雑誌の取材でした」と答えます。

この雑誌の取材というのは過去に葵ちゃんが「電撃萌王」で連載していたコラム「葵と東京デート」のことだと思います。葵ちゃんが神田明神を紹介しているのは2018年12月号で、未読の方も電子版で読むことが可能です。

竹千代さんの自己紹介では、今会場にいる人たちは100%葵ちゃんのファンだと思う、いつもは5~6人しかお客さんがいない、と言って会場を湧かせていました。また古典が好きな竹千代さんによる神田明神のウンチクも披露されます。神田明神の名前の由来が「平将門の体が祀られていることから、カラダがなまってカンダになった」というウンチクには関心させられました。

1部:歴史について

自己紹介の後は中村さんによる神田明神の歴史の紹介です。天平2年から続く歴史1300年の由緒ある神社です。葵ちゃんもこんな歴史あるステージに今立てて光栄と言っていました。神田明神の歴史をすべて綴ると長くなるので、詳しく知りたい方はWikipedia等をご参照ください。

伝統文化の代表、竹千代さんから落語の400年の歴史が語られます。落語には線香が燃え尽きる短い間に即興で演じる噺や、客が出した3つの言葉を噺の中にすべて登場させて一席にまとめる「三題噺」などがあるそうです。

そして竹千代さんは実は最初落語家を目指していたわけではなく、お笑い芸人を志していたそうです。大学では落研に入っていたそうですが、それもお笑いをするために入ったとのこと。しかし芸人では芽が出ず、友人から落語を勧められて今の道に進むことになりました。

現代文化の代表、葵ちゃんがYoutubeの魅力を語ります。葵ちゃんはYoutubeの魅力に
「やりたいことを気軽にできること」
「世界中の人が動画を出しているので、料理からプラモデルの作り方まで何でもあること」
をあげていました。

葵ちゃんは歌や〇〇やってみた動画を出したり、生放送でみんなと交流したりしている、と自身の活動内容を竹千代さんに説明します。竹千代さんもYoutubeのチャンネルを持っており、登録者数1000人を目指しているそうなので、みなさんぜひチャンネル登録よろしくお願いします。このトークセッション1部の後、16人チャンネル登録者数が増えたそうです。

1部:お互いへの質問

葵ちゃんから竹千代さんへの1つ目の質問は
「落語の台本は何分くらいの長さで、どうやって覚えていますか?」
竹千代さんの答えは
「落語の歴史の中で最長は90分くらい、普通に長いもので35分くらい」
覚え方については
「落語の先生にやってもらったものを録音して何度も聞たり書いたり真似をしたりして覚える」
とのこと。

覚えたら先生に見てもらい、許可をもらって初めて落語家さんはお客さんの前で演じることができるそうです。加えて本番でミスを誤魔化す技術や、ミスしても堂々とやることの大切さも説いていました。

葵ちゃんの2つ目の質問は
「落語家の職業病はありますか?例えばカフェで隣の席にいる人たちの会話を聞いて『こうすればもっと面白くなるのに!』と思ったりしますか?」
竹千代さんの答えは
「ある。そういう話をノートに書いて添削したりする」

質問する側が交代になり、竹千代さんから葵ちゃんへの質問は
「好きなタイプは?」
気になる葵ちゃんの答えは
「夜中に相撲を取りたくなった時に一緒に取ってくれる人」
これだけ聞くと意味が分かりませんが、要するに「葵ちゃんのノリにひかずに、ウェーイ!と一緒にノッてくれる人」の事だそうです。葵ちゃんはゲラなので一緒に笑って欲しいとも言っていました。

次の竹千代さんの質問は
「葵ちゃんのチームは何人で運営してますか?」
葵ちゃんの答えは
「1.5人?2人くらいです」
ちなみに魔界チームと相撲は取らないそうです。

次の竹千代さんの質問は
「Youtubeのチャンネル登録者数が伸びるには?」
葵ちゃんの答えは
「最初はどういうのが自分にあっているかはわからないし、歌動画も『こういうのは聞かれないんだな』ということもあるし、出してみないと反応がわかりません」
と答えてから
「激辛とかどうですか?『落語家が激辛食べてみた』とか。『落語家が香水を話してみた』も良いかも」
と続けて、竹千代さんも
「ドルチェ&ガッバーナとかね」
とノッてくれました。

竹千代さんは続けて
「今後やってみたいことはありますか?」
葵ちゃんは
「今はコロナでロケに行けないけど、日本の文化を紹介する『Focus on Japan.』をまたやりたいです。今日みたいに落語などの歴史ある文化を紹介したい」
と答え、続けて竹千代さんや落語家さんにインタビューする方法を聞くなど、前のめりでした。

まだ時間があったため、最後に葵ちゃんから
「落語家さんの流派同士は仲が良いんですか?」
という質問がありました。竹千代さんは
「流派に関係なく仲が良いです。同じ流派で演じることもあるけど、外の仕事では普通に他の流派と一緒になります」
と答え「もちろん個人的に仲が良い悪いはありますけどね」と付け加えました。

1部:小噺

そしていよいよ竹千代さんによる落語が始まります。竹千代さんが「落語を今日初めて生で見る人はいますか?」と聞くと会場の半分くらいの人が手を挙げます。そして落語に欠かせない扇子と手ぬぐいの使い方を説明してくれました。

扇子と手ぬぐいを使ったクイズも行われ、ズズーと何かをすする動きをして「何を食べているでしょう」と聞くと、葵ちゃんは「ラーメン」と答えますが不正解。会場にいるお客さんにも挙手制で回答してもらい「そば」「うどん」「ペヤング」「激辛ペヤング」などの回答が出ますがすべて不正解。正解は「ゴマ味噌タンタンメン」で葵ちゃんも「わかるかーい!」とツッコミます。

竹千代さんはそうして会場を温め、本題の前の枕として竹千代さんが昔お客さんが1人しかいない会場で落語をした体験や、世界で一番短い小噺などを披露されました。本題は有名な小噺「時そば」。

竹千代さんの「時そば」は内容のアレンジもあり、話し方や間の取り方は流石プロの落語家さん、聞いているうちにグイグイ引き込まれました。文字ではこの面白さや話の空気やテンポが伝えられないため、気になる方はぜひ寄席へ竹千代さんの落語を見に行ってみてください。

事前に竹千代さんから指導を受けたという葵ちゃんが初めて挑戦する落語は「九官鳥」。こちらも有名な小噺なので、Youtubeなどで検索すると大まかな話の内容を知ることができます。演じ終わった後の葵ちゃんの感想は「間の取り方が難しかった」でしたが、竹千代さんからは
「誰だ?」「新聞屋です」
「誰だ?」「新聞屋です」
「誰だ?」「新聞屋です」
「2時間近くやりました」
の間の取り方が上手かったと褒められていました。

1部:エンディング

中村さんから「竹千代さんが葵ちゃんの生放送に出たら面白そうですね」と投げかけると「ぜひぜひ」と二人とも乗り気な様子。いつかコラボが実現すると生放送で竹千代さんと葵ちゃんの落語が見られるかもしれませんね。

最後に竹千代さんは
「最先端のVTuberと落語とは400年くらい歴史の差があります。同じ舞台に立てたのが新鮮でした」
葵ちゃんは
「歴史ある舞台に立てたこと、落語を教えていただいたこと、コロナの中こうしてみんなが集まってくれたことが、うれしかったです。本当にありがとうございました」
と今日の感想を述べました。

その後は竹千代さんの本日の物販や今後の講演の宣伝、葵ちゃんのコラボフードと2ndアルバム「シンビジウム」の宣伝をして、1部は終了となりました。

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2部:オープニング+歴史について

オープニングや神田明神や落語の歴史については1部2部で大きな違いはありませんでした。神田明神の歴史を聞いた後の葵ちゃんのコメントが「Youtube活動を始めた理由に、日本や日本の文化を世界に紹介したいという大きな夢があるので、今日歴史あるステージに立てて光栄です」となっており、1部から少し変わっていました。2部の方が夢を語っていてエモいですね。

葵ちゃんは2部ではYoutubeの魅力で
「ゆりかごから墓場まで、見たい時に見たいものを手のひらの上で全部見られること」
「知らないものを知るきっかけになること」
をあげていました。

また自身の活動については「生放送で吹矢を吹いたり、ルームサイクリングをしたり、鬼退治をしたり、祭りをしたり、釣りをしたりしています」と紹介して中村さんと竹千代さんを困惑させていました。

「なぜ吹矢?」と質問されると「吹矢で風船を割れたらご褒美をくれると言われたから。もちろん人に向けては吹きません」と答えて安心させようとする葵ちゃんが可愛かったです。

「なぜお祭りをしようと思ったの?」という質問に「コロナでお祭りがなかったので、みんなでワイワイしたいと思ったからです」と答えていたのは、少しグッときました。

2部:お互いへの質問

質問コーナーではまず葵ちゃんから
「落語は自分の個性を出していいんですか?クラシック音楽みたいにそのまま演奏するのが良いのでしょうか?」
という質問があり、竹千代さんが
「古典落語はそのままやることにこだわる本格派もいます。(1部で説明したように先生に習った後)自分なりに噺の内容を足し引き、カスタマイズをする人もいます。現代落語はゼロからオリジナルの話を作ることもあります」
と答えます。

次に竹千代さんから葵ちゃんの歌の練習法や歌が上手くなるコツを質問し、葵ちゃんは練習法は
「歌を何度も聞いて覚えて、自分なりに歌詞を解釈します。発声練習はやっていません」
と答え、コツは
「歌が上手い人の真似をします。この辺は落語と歌は似てますね」
と言っていました。

続いての葵ちゃんの質問は
「落語家になるのは狭き門ですか?例えば今日会場に来ている人が竹千代さんの落語を聞いて落語家になりたいと思ったらなれますか?」
竹千代さんの答えは
「師匠に弟子入りをすればなれます。この師匠の弟子になりたいという強い熱意があれば。ただし弟子を取っていない人もいます」
とのこと。葵ちゃんが「だってさー、みんな」と会場に振り笑いを起こしていました。

2部:小噺

2部では竹千代さんは枕に過酷な野外の環境で落語をした話や、流しそうめんの隣で落語をした話などをして、本題で演じた落語は「猫の皿」でした。1分2部とも竹千代さんの落語は枕から面白く、本題でも現代風なアレンジがされていて、とても聞きやすかったです。

葵ちゃんが演じたのは「与太郎噺」の「出張(他行ともいう)」。初めて落語を演じた葵ちゃんの感想は「見るのとやるのとでは全然違いますね」でした。

二人の落語が終わった後は、VTuberが落語を生で演じたのは初めてなのでは?いつか二人でコラボをして歌や落語や激辛をしたいですね、と盛り上がりました。

2部:お客さんからの質問

2部はお客さんからの質問を受け付けるコーナーがありました。

昔「落語家は師匠から名前をもらう」というウンチクを聞いたことがあったので、私は手を挙げて
「師匠の竹千代さんから弟子の葵ちゃんに名前を付けるならどんな名前にしますか?」
と質問しました。

落語家さんは師匠から1文字もらって名前を付けてもらうそうです。竹千代さんは師匠の桂竹丸さんから1文字もらい前座の頃は「竹のこ」、二つ目に昇進して「竹千代」と改名しました。

葵ちゃんにつける名前も「竹」を付けたいということで、青竹、竿竹などの案が出ます。途中で竹千代さんが「好きな食べ物は?」と聞き、葵ちゃんが「ラーメン」と答えると、ラーメンからメンマ、シナチクという案も飛び出します。

そして竹千代さんが「富士だから竹富士なんていかがでしょう?」と提案し、中村さんも「激しめのダンスを踊りそうな名前ですね」と面白いコメントしてくれました。こうして竹千代さんから葵ちゃんに「桂竹富士」という名前が付けられたのです。この短時間で素敵な名前を考えられる竹千代さんの即興力に脱帽でした。

2つ目のお客さんからの質問は
「話が上手くなるにはどうすれば良いですか?合コンでモテるように話が上手くなりたいです」
で、竹千代さんは
「やはり場数です。芸人時代は週8で合コンに行っていました」
と答え、
「ビールはのどごしが美味しいんですね。つまり喉が長いほど美味しく感じられます。ビールはキリンが美味い」
と、合コンで使える小噺を披露します。中村さんも
「キリンのビールが置いてある居酒屋でだけ使えますね」
とツッコミを入れます。

3つ目のお客さんからの質問は
「三題噺はどうやって作るんですか?」
で、竹千代さんは
「即興は難しくて実は三題噺が苦手です。テンプレートとしては3つのお題の中で自分が一番広げやすいお題を話の軸に置きます。そしてもう1つのお題を最初の方で使用して、残りのお題をオチに使います」
と答え、葵ちゃんからも
「お客さんから話題をもらって話すのは生放送でのフリートークに通じるものがありますね」
とコメントがありました。

2部:エンディング

エンディングの流れも1部2部でほぼ同じでした。葵ちゃんの感想は「今日来てくれてありがとうございました」の後、2部では「今日の夜生放送で会いましょう」と付け加えられました。中村さんも歌劇団のみなさんに「今日はずっと葵ちゃんと一緒ですね」と言ってくれました。

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まとめ

トークセッションと銘打っただけあって、落語家さんとVTuberのトーク力が際立つイベントでした。始終和やかで笑いの絶えないイベントになったのは、司会の中村さんと出演者の竹千代さんと葵ちゃんの人柄がよく出ていた気がします。

こうした2つの異文化を交流させつつ、エンターテインメントとして楽しいイベントに昇華するというのは、非常に難しいとは思いますが、VTuberの世界を広がることにもつながると思うので、今後も挑戦していって欲しいと思いました。私は落語はYouTubeで見るくらいだったのですが、寄席にも行ってみたいと思ったので、お客さんの世界を広げるきっかけにもなると思います。

今回落語に初挑戦した葵ちゃんは勉強になったと言っていましたし、今後の活動で役立つ経験もたくさんあったのではないでしょうか?いつか「桂竹富士」の落語がもっと大勢の人の前で披露される日を楽しみにしています。

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