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【ライブレポート】葵ちゃんとノジョさんの新たな「はじまりの音」〈富士葵活動6周年記念ライブ「Aria」〉

2023年11月17日、富士葵活動6周年記念ライブ「Aria」がShibuya O-EASTで開催されました。11月7日に完全独立を発表した富士葵(以下、葵ちゃん)とキクノジョー(以下、ノジョさん)による、初の二人の力で作り上げるライブです。二人の新たな「はじまりの音」がどんなものだったのか、感想を綴っていきたいと思います。

アーカイブはSPWNにて配信中です。もし少しでも興味のある方は、ぜひアーカイブでも視聴してみてください。

開演前のO-EASTには、全国から集まった歌劇団が整然と並び葵ちゃんのライブの始まりを待っていました。会場内は葵ちゃんの配信や動画で使われる耳慣れたコミカルなBGMが流れています。見回せばオールスタンディングの後ろの方まで人が入っており、葵ちゃんやノジョさんが直前まで宣伝していた成果を感じることができました。その盛況っぷりを確認しながら、会場から開演前までの待ち時間を焦がれるような浮足立つ気持ちを抑えながら待ちます。このソワソワする現地ライブの感覚は久しぶりで、嗚呼ライブに来たんだなという実感が今更湧いてきました。

「これ公開にしたらいいの?」という声からアタック映像が流れ始めます。葵ちゃんとノジョさんが初めて動画を公開したその日から、これまでの歩みが走馬灯のように流れていく映像と、それとともに変わる二人の衣装や姿。最後に今回のキービジュアルにも描かれている大きな扉にたどり着く二人の背中を見送り、ライブの幕が上がります。

1曲目は「Rivive the world」。葵ちゃんの3rdアルバム「THINK YOUR WORLD」の最初の曲で、ライブのスタートを飾るにふさわしい明るい曲です。スクリーンには青空の下に咲き誇る花が映し出され、葵ちゃんも大きく手を振り元気いっぱい。会場のサイリウムも一面の青に輝いて、会場のテンションも最初からぶち上っていました。

「おー、みんな来たねー!」と満足げに会場を見まわした葵ちゃんの声の後に、始まる「テイストレス」。淡々とどこか物憂げに儚げに歌われる声とともに、葵ちゃんの振り付けも俯いたりお手上げのポーズをしたり、しょぼくれた姿で曲の世界を表現していました。その次に歌った「永遠観測」では対照的に会場を温めるように力強く歌声を響かせました。間奏では会場を煽るような素振りもあり、歌劇団もそれに応えるように声と腕を振り上げます。

「富士葵活動6周年記念ライブAriaへようこそ、みんな!」と歌劇団に語り掛ける葵ちゃん。「Aria」がオペラ用語で「独唱する」や「情緒的」という意味を表し、完全独立をした新しいスタートにピッタリだったと、ライブタイトルの説明をします。今日という新しいスタートラインに立ってくれたこと、フラスタ、グッズ、パペターなど歌劇団へのお礼を述べ、「一音一音、一言一言に今の自分を込めて、感情全開でみんなに伝えるので、ついてきてください。一緒に楽しみましょう」と今日にかける思いをこちらにぶつてきました。その言葉を聞いて、思わず私も全部受け止めなければ、と心の襟を正しました。

ここから3曲ロックナンバーが「Eidos」「MY ONLY GRADATION」
「Coke=High」と続きます。「Eidos」で「アオイままでいるよー!」と絶唱したあと、「まだまだー!」と「MY ONLY GRADATION」でなだれ込みます。サイリウムも青中心から色とりどりの色へ。「Coke=High」でも歌声の勢いは衰えることはなく、フェイクを入れたり、会場へ手拍子を煽ったりと、これまで踏ん前できたライブの場数の経験が活きているように感じました。

怒涛のロックゾーンを歌いきり「このゾーンヤバすぎるだろ!」と今日のセットリストを考えた過去の自分を叱る葵ちゃん。歌ってみた動画の「前前前世」を投稿したころの、ロックな曲が似合わない、歌えないと悩んでいたころの自分が、こうしてロックなオリジナル曲を何曲も歌うっていることを感慨深く語ります。生バンドのライブもやってみたいこと、企画動画を続けながら歌ってみたの動画も増やしていきたいこと、今後の展望を希望に満ちた声で語る葵ちゃんと、そのすべてに拍手や「いえええい!」と応える歌劇団。

ロックなゾーンの次はダンスナンバーのゾーン。「クリティカルシンキング」「コヨーテ」とクソダサではない葵ちゃんのダンスが見られます。この2曲は歌う前の葵ちゃんの構えで何の曲を歌うかわかります。バレエ経験者の葵ちゃんのダンスと情緒的な歌声、スクリーンの映像演出が合わさり、息をするのを忘れるほどでした。つくづくライブは総合芸術なのだと思います。特に「コヨーテ」の影の使い方は秀逸。前面スクリーンに映る葵ちゃんと、後方スクリーンに映し出される影が完全にシンクロすることで、葵ちゃんが焚き火の周りを舞っているかのように見えました。

シンビジウム衣装からいつもの制服姿に着替えてきた葵ちゃん。声出しができたライブは4年前の1stライブ「OVERTURE」以来ということで、久しぶりのコールアンドレスポンスをやります。富士イチを見て今日ライブにきてくれた人、ヤマイチきっかけの人、今日レーパンはいてきてる人、朝ピクきっかけの人、頭にお花生やしてきた人、マザー2の人、今日初めてライブに来た人、男子、女子、Xジェンダー、葵のこと好きな人(一番デカい声援)と、葵ちゃんが歌劇団との交流を楽しみます。「それじゃあそんな(葵のことが好きな)みんなをちょっと応援するかな!」とアノ曲へ。

「飛べ―!」と叫び「エールアンドエール」「応援x1000倍返し!!!」と葵ちゃんの応援曲を続けて披露。どちらも富士葵らしさ満載の歌詞でコミカルな曲なのに歌はガチというギャップで笑ってしまいました。歌劇団のコールの一体感も高くて、直接言葉を交わさなくてもライブはコミュニケーションなのだと思いました。葵ちゃんが歌劇団を応援するパワーも、歌劇団が葵ちゃんを応援するパワーも、間違いなく相互に伝わっていました。

6年前にみんなを応援したくて活動を始めた葵ちゃん。そんな葵ちゃんが「人生でこんなにたくさんの人に応援してもらえることは、なかなかない。本当にいつもありがとうね」とまっすぐに歌劇団へ感謝を伝えました。そして今日雨の予報だったのがライブ直前に晴れたことに触れ、葵ちゃんの晴れ女伝説にまたひとつ逸話が刻まれました。そして11月の寒い季節は、ホットのミルクティが美味しい季節だよね、と次の曲への前振り。

「ミルクティ」を歌う葵ちゃんの背景が無人駅のホームに変わり、夜空には星が瞬きます。ここからは葵ちゃんのクリスタルボイスで聴かせるゾーン。葵ちゃんの物語るように歌う声を聞くと、脳裏に歌詞の情景が浮かびます。背景も夜から朝焼けに変わっていく演出も良い味出してました。「雨降るスノードーム」では空が昼から曇り、雨へと天気が移り変わります。歌詞の通り藍色の空に変わっていく中で佇みながら歌う葵ちゃんが美しすぎて切なさに胸が締め付けられる思いでした。続く「8分19秒」では背景や演出は夕焼けの赤に変わり、「誰かのコピーを生きていたんだ」などの自己批判的な強い言葉の歌詞に、今までの甘い空気がピリっと味変。この空気を締める感じのセットリストのセンスは巧みの一言。

再びシンビジウム衣装にお着換えした葵ちゃん。これから先きっと楽しいことばかりじゃない、と現実的な話を口にします。この後の葵ちゃんの言葉はこの日一番大切な言葉だと思ったので丸ごと引用します。

「でもこうして昔から応援してくれる人がこんなにいて、今日初めてライブに来てくれた人がこんなにいて、配信の人もこんなにいて。そうして1つ1つ積み重ねてきた、これからも積み重ねていく、葵の中の思い出は楽しいことばっかりです。そしてその楽しい思い出はいつも必ずこうやってみんながいます。ありがとう。こうして出会ってくれたことに本当に感謝しています」

この言葉を聞いて、推しという存在は楽しいことだけでなく、苦しいことも輝くような思い出に変えてくれる存在なのだな、と思いました。葵ちゃんを知って、気が付けばこんなに長く遠くまで来たけれど、確かに今思い出せるのは楽しかった思い出ばかり。

その後葵ちゃんが活動する上で大切にしている言葉

あ:愛する心
お:思いやる気持ち
い:一期一会
よっしゃいくぞー!

をみんなで唱和しました。

ここで配信で事前に匂わせていた新曲が披露されます。O-EASTの豪華な音響設備のおかげで、まず耳に飛び込んでくる重厚なメロディに鳥肌が立ちました。深海を思わせる映像演出に、葵ちゃんの歌声も神々しく感じました。歌詞に出てくる勇魚(イサナ)とは鯨の古い名前で、鯨はその大きさから富みや豊穣の象徴とされてきました。完全独立を果たし、これから未知なる大海を旅する葵ちゃんとノジョさんにとって、なるほどゲン担ぎにも思える歌でした。

最後の曲は「Bouquet」。最後まで盛り上げようと全力で歌い続ける葵ちゃんの後ろで、空飛ぶノジョさんが花吹雪を咲かせます(ちょっと花吹雪撒きすぎなくらいでした笑)。会場の歌劇団も声援とサイリウムとクラップで応援を最後まで緩めません。「つまずいてもそれでいいの私は強いから」や「最後に笑うべきは私でしょう」という強気でサバサバしたシンデレラの歌詞が、これからの葵ちゃんの前途を表しているようで、最後はこのくらい前のめりな曲が丁度いいよね、と一旦ステージからはけていく葵ちゃんを笑顔で見送りました。

当然会場はすぐにアンコールの声に満たされます。ライブ衣装に着替えた葵ちゃんが歌うアンコール1曲目は「はじまりの音」。疲れを感じさせない元気な葵ちゃんは歌いながら、会場や配信に向けて手を振ったり、手振りや「いくぞー!」という声で会場を煽ったり、ライブならではのコミュニケーションを取ってくれました。ステージと観客席のシンガロングはライブの醍醐味。歌い終わった葵ちゃんの言葉「最高だ」、まさにこの一言に尽きました。

ここで葵ちゃんがライブに魔力を注ぎすぎた結果、メタルギア風になったノジョさんが登場。ノジョさん目当ての人!という質問にも大きな声援が上がります。O-EASTの音響のおかげで新曲の低音が心地よかったこと、パソコンが3台同時に壊れたこと、9月生まれのノジョさんは2023年はこれから運勢が下降気味、6月生まれの葵ちゃんはこれから平穏らしく、二人合わせてややマイナスなこと、その運命をこれからひっくり返してプラスにしていこう!という所信表明など、二人の軽快な掛け合いは実家のような安心感でした。そして葵ちゃんの3rdアルバム「THINK YOUR WORLD」の配信がライブ終了後の21時から開始される嬉しい告知をして、ノジョさんは葵ちゃんにズン!されて退場。「最後の最後まで盛り上がっていこう!」と葵ちゃんの歌が始まります。

「キミの声が聞こえる」について感想を言葉で感想を述べようとすると、どうしてもコレジャナイ表現になってしまいます。だから結論だけ述べると、私は富士葵という人のことが好きなんだと思います。あの瞬間、葵ちゃんと会場にいた人たち、配信で見ていた人たちは、互いにいつもより気持ちが伝わっていたのかな、そうだったらいいなと思いました。

楽しい時間が終わってしまうことを惜しむ葵ちゃん。今回O-EASTのチケットは即完ではなかったけど、これからもっと力を溜めて、みんなと楽しい思い出を積み重ねて絶対帰ってくる、という熱い思いを語ります。最後に歌劇団みんなへ「ありがとうございました」と感謝を述べて、本当に最後の曲「秘密を聞いてよ」へ。

私は葵ちゃんのライブの最後の曲と言えば「ユメ⇒キミ」というイメージだったのですが、「秘密を聞いてよ」を最後に持ってこられて打ちのめされたような気持ちになりました。「離れたくない 君と離れたくないずっとずっと」という歌詞が、あまりにも自分自身の気持ちとシンクロしてしまったから。こんなに名残惜しい気持ちでライブが終わるなんて本当にズルい。次のライブまで待ち切れるか不安です。葵ちゃんも名残惜しそうに、ステージの端から端まで走って歌劇団へ手を振っていました。

最後の曲を歌い終わってしまい「今日は本当にありがとう!またね!また会おうね!大好きだよ!」とステージに幕が下りるまで、最後の最後まで手を振り続ける葵ちゃん。歌劇団のサイリウムも幕が下りた後もしばらく消えませんでした。その光景を見ただけで、このライブが成功だったと私は思いました。

完全独立した葵ちゃんとノジョさんの新たな「はじまりの音」となった6周年記念ライブ「Aria」は、葵ちゃんらしい応援に満ちたものでした。葵ちゃんが歌劇団を応援して、歌劇団が葵ちゃんを応援する。そうして互いにバフを掛け合う関係を、私は尊いものだと思います。葵ちゃんもノジョさんも、歌劇団ひとりひとりも、それぞれ日々の中に楽しいことも大変なこともあって、それでもこうして集まれば素敵な思い出を重ねていける。そういう場所があれば、葵ちゃんもノジョさんも歌劇団もきっとこれからも大丈夫、と無根拠に信じられてしまうパワーを感じるライブでした。

最後に葵ちゃんとノジョさんへ。6周年、そして完全独立体制の初のライブという記念すべき場所に立ち会えたことを嬉しく思います。本当に良いライブでした。これからもお二人が作り上げていくコンテンツを楽しみにしつつ応援しています。

セットリスト
1.Revive the world
2.テイストレス
3.永遠観測
4.Eidos
5.MY ONLY GRADATION
6.Coke=High
7.クリティカルシンキング
8.コヨーテ
9.エールアンドエール
10.応援x1000倍返し!!!
11.ミルクティ
12.雨降るスノードーム
13.8分19秒
14.くじら(新曲)
15.Bouquet
EN
16.はじまりの音
17.キミの声が聞こえる
18.秘密を聞いてよ


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