木本大介の二流のプロフェッショナル「アグリ創研株式会社代表取締役社長 浅野卓さん」
サマリ
【媒体】
【トークテーマ】
オープニング
浅野さんのビジネスの入り口
ビジネスは歴史から学べ
抽象化が得意
概要
4人目のゲストは、アグリ創研株式会社代表取締役社長の浅野卓さん。
前回のゲスト「友利昴さん」からの紹介だ。
浅野卓さんは、アグリ創研の社長に留まらず、多様な経歴をお持ちだ。
失礼ながら、友利さんから紹介されるまで存じ上げなかったのだが、経歴を見て驚いた。
何者!?
何がどうなると、こんな轍ができるのか。
端的に言えば「多能」だ。
しかし、ご本人はお認めにならないどころか、抗うような姿勢をお持ちだ。
収録直前の打ち合わせの時には、番組としてまとまるか正直不安だった。
実は収録中もどこに向かっているのかわからない不安を抱えながらの進行だった。
しかし、収録が終わったとき、ようやく気づいた。
「あー、この人ブレていないんだ」
そう、軸とスタンス(言い換えると、ベクトル)がブレていないのだ。
そんな「根強い浅野ワールド」を垣間見てみよう。
トークテーマ
オープニング
浅野国際特許事務所のWebサイトを見ると、浅野さんの経歴が多岐にわたることが分かる。
一言で言えば、「何の人?」
大学で法律を専攻していた浅野さんの知財の入り口は、東京理科大学のビジネススクール(知財専攻)にあった。
自分に売りをつける。
このために門戸を叩いたそうだ。
その後、早稲田大学の法学研究科に戻り、いろいろな分野に顔を出す。
浅野さんの行動原理は、「人生なりゆき」という言葉に込められていると感じる。
そのときどきで求められていることをやっていった結果が今に至る。
生存戦略を強く意識したキャリア形成をされてきたと感じた。
浅野さんのビジネスの入り口
浅野さんが起業したのは2023年。
まさに3.11の直後だ。
過去にお付き合いのあった方から農水分野を勧められ、活動をしていくうちに吉野杉と出会う。
たまたま読んでいた論文から快眠物質「セドロール」のトレンドをつかむ。
新規事業の成功美談として振り返るのは簡単だが、先行き不透明だったあの頃にそのような動きができる人はそう多くないだろう。
ビジネスモデルは、どこかで見たことのある絵になる。
ビジネスモデルは歴史に学べ、とはよく聞く言葉だ。
過去の先人が作ったモデルを現代に当てはめる。
これはビジネスモデルに限らず、知財実務でも同様だろう。
そんなビジネスモデルの創出に必要なスキルを問うと、抽象化という言葉が返ってきた。
「抽象化を進めると、どんな話も自分事にできる」という言葉には、大いに賛同する。
浅野さんが自身を評した「課題キーワードとビジネスを結びつける力は強い自負がある」という言葉には、力が込められていた。
浅野さんがそのような力を身に着けた背景には、物覚えの悪さがある。
眼の前の事象を絵を描いて理解するスタイル。
絵にすることで、「どこかで見たことあるぞ」という感覚を覚えるそうだ。このスタイルが、抽象化力を培った。
ビジネスモデルを創出する人は、おしなべて抽象化が得意である。
非常に納得感のある話だ。
知財業界は、人生にそのまま役立てる。
そんな浅野さんは人生を特許書類になぞらえてこう語ってくれた。
明細書的感覚
これは、自分の最大範囲を規定するもの。
浅野さんで言えば、
・知財戦略
・ブランド戦略
・事業モデルの構築
この3本柱が最大範囲だ。
特許請求の範囲的感覚
これは、勝負ポイントを絞るもの。
浅野さんで言えば、
・農林水産
・地域経済
明細書で規定した最大範囲から、自分の勝負ポイントを抽出する。
この感覚を持って、抽象化スタイルを駆使してなりゆきに任せた結果が今の浅野さんである。
むすび
浅野さんは、キャリア形成について、最後に次の言葉で締めくくった。
知財分野の感覚は、いろんな分野で使える。
知財は潰しが効く。
知財の外にこそ知財の考え方が使える領域が広がっている。
最後に、「知財の知識が経営に活きていることは?」と問うてみた。
すると、「「知財の知識」を「経営に」ではなく、経営の分野では当たり前の話だが、知財の分野では当たり前ではないことが多くある」と返ってきた。
自ら経営もしている浅野さんらしい答えだ。
僕の持論だが、知財家は、抽象化と具体化の往復運動が体に染み付いた人種である。
知財家は、ありとあらゆるものを自分事としての無形資産に変換する素養が備わっていると改めて思った。
浅野さんのように、最大範囲と勝負ポイントをうまく組み合わせる、それを適材適所で変えていく。
技術革新が早く、且つ、不確実性の高い現代では、そんな生存戦略が合っているような気がする。
次回予告
次回は、浅野さんがご子息に見せる「背中」を少しだけ覗き見させて頂く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?