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体系的「場」つくり理論シリーズ その6組織のコミュニケーション・デザイン&マネジメント


「コミュニケーション」が組織力を、そして会社力をいかに高めていけるかについて考察してみます。
コミュニケーションとは、「人間」の間で行われる知覚・感情・思考の伝達行為です。この伝達行為をベースに、人と人の間で「意志の疎通」が行われたり、「心や気持ちの通い合い」が行われたりと、「相互に理解し合う」ことでコミュニケーションが成立します。
組織社会では、コミュニケーションによって人の感情、意思、思考、知識などさまざまな情報が伝えられ、受け止められながら創造的知識生産活動が行われます。
またコミュニケーションの機能は情動的であり、相手の意識や行動を制御するとともに、「共感」を呼び起こす行為でもあります。
さらに、コミュニケーションは言葉による会話や対話に、表情、身振り手振りといった非言語メッセージが統合されて成立するリアル空間でのものと、バーチャル空間(メール、チャット、TV電話などICTツールやメタバース等を媒介した場)を通じて成立するものがあります。

最近の技術進歩でバーチャルとリアルのボーダーがなくなりつつありますが......、息遣いや香りを感じられるのはリアルだけです!

■コミュニケーションが活性化し活力ある「場」を創造するには
 私は、こうしたコミュニケーションの特性を十分に認識した上で、組織を構成する人の気持ちや思いに焦点を当てた「総務」の実践、つまりインナーブランディングをベースにした「場」の創造が、組織を変革し会社力を高めるきっかけになると考えています。
コミュニケーションを活性化し活力ある「場」を創っていくには、集団の中での人々の「意識」や「行動心理」を理解することが大切です。そして、組織規模に即した総務戦術、つまりワーカー数とワークスペースの調和と場の演出を考えなくてはなりません。
社員・役職員すべてがお互いに顔と名前がわかる規模の会社と、何千、何万という社員がいてオフィス拠点が国内外に多数展開している組織のコミュニケーション戦略は異なります。オフィス内で働く社員・役職員すべてがお互いの顔と名前が認識できる規模(100人程度の人員数)では、社員同士が仲間、同僚意識を持ちながら仕事上のコミュニケーションは比較的スムーズに行われます。
この規模の組織では、リアルコミュニケーションを主体としたコミュニケーションマネジメントが可能です。
社長主催の朝会やタウンホールミーティング、日々の業務の打ち合せは、知った者同士で効率的なテーブルワークが有効に機能します。
「場」の一要素たるワークプレイスは社員が自律的に創ることができます。一方、組織が一定規模以上になると、お互いの名前や顔を直接認識できなくなります。同じ組織やチームで働いていても、話したこともない人が増えてきます。この段階にある組織のコミュニケーションマネジメントには、物理ワークプレイス内のリアルコミュニケーション環境と、ICTツールを活用したバーチャルコミュニケーション環境やメタバース空間を融合した場つくりが求められます。

また、組織規模に関係なく、働く人々が交わりを持ち、共通話題で盛り上がり、共感し、同じ会社で働く仲間としての喜びと達成感を分かち合える環境創りを心掛けなくてはなりません。しかしながら、それぞれの仕事を持つ社員・役職員は、自分の仕事に関係ないと思っていることや、興味、関心のないことには意識が向かいません。また、話したことがない人との会話は、共通話題がなければ成立しません。

■相互コミュニケーション誘発の有効な仕掛け総務ミッションの一つは、価値観の異なる人の行動心理と人間関係の状態を観察して、担当業務が異なり日頃交わりの少ない、ないし、交わりのない人達の相互コミュニケーション誘発の仕掛けを「場」に創り出すことにあります。
有効な仕掛けの一つがIoTツールやAIの活用と運用の洗練化です。ユニファイド・コミュニケーション(統合的なコミュニケーション通称UC)の仕掛けを構築したり、メタバース空間を構築し、リアルコミュニケーションを補完すながらメタバースとの相互乗り入れでもある「マルチバース」化への取り組みです。
デジタルネイティブ世代は、デジタルリテラシーが高く、意識や感情の伝達をチャット、メール、LINEなどのツールを使いこなしてコミュニケーションをしています。彼らは、業務でもプライベートでもバーチャルコミュニケーションが当たり前になっており、どの組織でもリアルコミュニケーションが面倒と思う人は少なからず居るのではないでしょうか。
常識的な感覚では、バーチャルよりリアルコミュニケーションの方が望ましいコミュニケーション手段、と思われていると思います。リアル対面会話では、場の雰囲気、空気感、臨場感や相手の表情、息遣いなどノンバーバルコミュニケーションを含めたコミュニケーションができます。
相手への気遣いや、ホスピタリティを伝える表情(笑顔や目線)や、さりげないオーラを相手に感じて貰えるのもリアルコミュニケーションの強みです。しかしながら、組織が大きくなればなるほどリアルコミュニケーションができる機会が減ってきます。忙しい日々の中、いちいち話し合う時間を取ることはできません。
メールで一斉連絡しておけば仕事効率も高まりますが、反面、無機質なコミュニケーション場になる懸念もあります。仕事でもプライベートでも、相手の心に届くコミュニケーションとは、リアルコミュニケーションとバーチャルコミュニケーションをバランス良く使い分けることです。このバランスのとれた使い分けを実践させていく取り組みがコミュニケーションマネジメントです。
今後はメタバースやらマルチバースなどの空間を織り混ぜたコミュニケーションデザインが求められてきます。総務部門と情報システム部門等が協力体制を築いて取り組むべき課題です。

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