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DAO を身近に!

日経新聞がDAOを取り上げで記事化しています。
どんな解説本を読むより、現場に目を向けたDAOのあり方と課題を考えてゆく事が大切ですね。

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次世代インターネット「Web3」の技術を活用し、株式会社とは異なる「DAO(分散型自律組織)」と呼ぶ組織形態を作って新事業創出につなげる動きが広がる。医療やスポーツ、教育の分野で投資家や患者、ファンなどのステークホルダーを巻き込み、コミュニティーを大きくする。社会の関心を高めて暗号資産(仮想通貨)などを用いて投資を呼び込み、長期的な視点で課題解決に取り組むのが狙いだ。

「資金や専門知識を集める場として機能させたい」。バイブバイオのアロク・タイ最高経営責任者(CEO)はこう話す。株式会社ではなくDAOという組織形態として運営するバイブバイオは「ラフォラ病」や「NF2」などの希少疾患を対象に研究を進めている。

2022年にはすでに米イニシャライズド・キャピタルなどから1200万ドルを調達して研究資金に充てるが、23年にも発行を検討しているのが「バイブトークン」と呼ぶ独自の仮想通貨。トークン保有者は株主のようにDAOの運営方針の意思決定に参画することができる。

トークンはブロックチェーン(分散型台帳)で発行し、資金の流れなどを記録する。取引履歴はメンバー同士が把握でき、透明性の高い運営につなげられると期待する。将来はトークンを市場で取引できるようにすることで、流動性を高める。こうした技術をDAOの運営につなげる。

希少疾患の数は世界で約7000種類あるとされる。治療薬や治療法が見つかれば患者の命を救える可能性が高まるが、一つ一つの疾患は患者数が少ないため収益化が見通しにくく、製薬会社など開発資金の出し手は少ない。投資回収が見込みにくいプロジェクトは進行しにくい。

そこでバイブバイオが希少疾患治療薬開発プロジェクトのハブとなり、投資家や製薬会社、患者団体など資金やノウハウの出し手を巻き込みやすくする。成果が生まれたり、研究対象が増えたりしてくればDAOの参加者が増えると期待できる。DAOの拡大はトークンの価値上昇にもつながる。

関係者がDAOをつくり助成機関などとして役目を担わせて科学研究を進める形は「DeSci(ディサイ、分散型科学)」と呼ばれる。大手製薬会社やバイオベンチャー、大学が個別に行う共同研究は閉鎖的で、外部からは見えにくい。DeSciは患者や研究者なども参加する形でステークホルダーを分散させて推進を図る。

DeSciに詳しい人工知能(AI)スタートアップ、アラヤ(東京・港)の濱田太陽リサーチャーは「研究結果を外部に公開して社会に役立てる『オープンサイエンス』の考えが根底にある」と指摘する。

希少疾患だけでなく、基礎研究にも応用が可能だ。世界のDeSciの中でも最大規模なのが、人間の長寿に関する研究の活性化を目指すビータDAOだ。参加メンバーは9000人を超え、15の研究プロジェクトが進められる。

プロジェクトの一つ、デンマークにあるコペンハーゲン大学のモルテン・シャイビークヌッセン氏の研究室はビータDAOから25万ドルの助成を得た。10億件を超える処方箋データを機械学習で分析し、健康長寿につながる薬の候補を見つける研究を進める。

DeSciの立ち上げを支援する企業もある。ビータDAOの設立に携わったのがスタートアップの独モレキュールだ。資金調達や経営支援を手掛ける。基礎研究は内容が有望でもビジネスに結び付かない「死の谷」問題に直面する。モレキュールのハインリッヒ・テッセンドルフ氏は「死の谷に橋をかけて研究を支援する」と強調する。

DAOは科学技術だけでなく、スポーツや教育、地域創生にもつながる。サッカーJリーグのアビスパ福岡(福岡市)は2月に同社のDAOに参加するためのトークンを発売した。購入者はクラブの運営やイベントの企画に参加できる。サッカー愛好家だけでなく、Web3に関心がある人などから、年間1億円の資金調達を目指すとともに、ファンの裾野を広げる。

DAOの企画では、スタジアムの魅力度向上や新グッズの開発などを想定する。イングランド・プレミアリーグのアーセナルに所属する冨安健洋選手がユースに所属していたことから、「第2の冨安」育成や仮想空間「メタバース」上でのサッカー観戦など中長期的なテーマにも取り組む予定だ。

アビスパ福岡は23年シーズンでJ1への定着と、強豪クラブへの仲間入りを狙う。報酬の観点でも、優れた選手を獲得したり、チームに残ってもらったりするための原資として、試合のチケット販売やスポンサー収入など以外にも収益源を多様化する。平田剛久マーケット開発部副部長は「DAOを通じて、多くの関係者とチームを一緒につくっていく」と話す。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)や米ハーバード大学、英オックスフォード大学など世界の有力大学が共同で、教育分野における「EduDAO」を結成している。各大学のブロックチェーンの研究グループらが参加し、Web3関連のプロジェクトに多額の投資実績がある「BitDAO」から資金提供を受ける。

独立組織であるEduDAOから資金が各大学の研究や製品開発向けに配分される仕組みで、ブロックチェーン分野でのイノベーションを促進したり、学生や教員が自由な活動を続けながら資金を得たりすることができるようになる。

DAO 法的枠組みが不明確
黎明(れいめい)期にあるDAOには課題も多い。まずは法的根拠が不明確だ。例えば、米国のワイオミング州やテネシー州で組織として認められるなど法的な枠組みに位置づけようとする動きは一部であるが、「各国の政府や行政機関も頭を悩ませている」と西村あさひ法律事務所の稲垣弘則弁護士は指摘する。
仮想通貨交換業大手FTXトレーディングが22年11月に破綻し、Web3に対する不信感から資金調達環境が悪化していることも影を落とす。小規模実験を繰り返して成果や課題を確かめ、社会的意義を突き詰める姿勢が求められている。
また、調達した資金で価値を創出している例が少ない点も挙げられる。「現時点ではお金が循環する構造をつくれている成功モデルが少ない」と日本でDeSciの普及を目指す「DeSci Japan」を立ち上げた東京大学の伊山京助氏は指摘する。投資家から調達した資金を事業化して還元する仕組みを早期につくる必要がある。
(DXエディター 杜師康佑、大越優樹、水口二季)

DAOとは 
分散型自律組織の略でダオと読む。株式会社で一般的な株の代わりに、組織に関わる人に「トークン」を割り当て、特定の人に依存せずに参加者全員で組織を運営する。意思決定は参加者の投票で実施され、決定事項はブロックチェーンで取引を執行する「スマートコントラクト」により、自動で実行される。

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