ヒダクマ視察 ~日本の森を活かすために~
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ヒダクマ視察 ~日本の森を活かすために~

出口庸平

岐阜県は飛騨古川に移り住み、地域のために奮闘する友人がいます。松本剛君と言います。前職のアミタに同期入社し、若いころは遅くまで一緒に仕事をし、議論し、そしてよく飲んだ仲。
彼は、アミタの関連会社だったトビムシに籍を移した後、さらにその子会社のヒダクマ(正式名称「株式会社飛騨の森でクマは躍る」)に移って今は飛騨の森、日本の森のために働いています。
今回はそんな松本君のところに奈良県吉野町から視察が来ると聞きつけて、森の勉強・木材の勉強のために私も便乗させてもらいました。

広葉樹の森に入る

日本は、国土のおよそ68%が森林です。今回お邪魔した飛騨市においてはなんと93%(!)が森林で、その7割が広葉樹の森だそう。
木材の世界では、木を「針葉樹」と「広葉樹」に分類します。スギやヒノキなど家を建てるときに使う木は「針葉樹」。成長が早く、まっすぐ育ち、軽くて柔らかい木。加工しやすい特徴を持っています。一方「広葉樹」はかたくて重たい木です。サクラ、クリ、ケヤキ、ブナ、ナラなど材として使う樹種は多様で、かたい特徴を活かしフローリングや家具に使われることが多い木です。
さて日本の森の歴史をみると、太平洋戦争のさなか軍需用の材が大量に切り出され、全国的にどの山もはげ山になりました。その後、戦争が終わり復興で木材が必要になったのですが、山には木が全くない状態……これではいかんと国策として、アクセスしやすい場所から順に生育の早い針葉樹が植えられました。世界全体では人工林の比率が5%程度なのに、今や日本の森は40%が人工林となっています。(wiki「人工林」より)
じゃあ、針葉樹が植えられなかった残り60%のはげ山はどうなったか?戦後70年の歳月の中、広葉樹が勝手に広がったのです。家具や床材として利用価値の高い広葉樹ですが、①計画的に植えたわけではないので施業が非効率、②アクセスしやすいエリアは針葉樹に占領されているので搬出にコストがかかる、という課題があり、国内の広葉樹は放置されるか、あるいは皆伐され太くて立派な木も含め製紙用チップにされていました。
しかしそれではもったいないと、飛騨では「広葉樹を活かすための施業」の検討が始まっています。森林組合・製材所・建築家・デザイナーなどが連携し、経済合理性を担保しつつ木を育てながら伐る方法を確立しようと取り組んでいます。試行錯誤を繰り返し、知見をためているところとのことですが、「60%の手つかずの森」へのアプローチが始まっているのです。

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森の説明をする松本君

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取り組みは始まったばかり。失敗も含め確実に知見をためている


Cafeでアイス用スプーンをつくる

広葉樹の森を見た後は、映画『君の名は。』の舞台となった飛騨古川駅にほど近いFabCafe Hidaに移動しました。FabCafe Hidaはヒダクマの運営する、レーザーカッターや3Dプリンターなどを使ってものづくりができるカフェ。おいしいコーヒーとともにのんびり過ごすこともできるし、デジタルデータを使ったものづくりもできる。さらには木工体験や宿泊までもできちゃいます。詳しくはHPをご覧くださいませ~~。
さて今回私たちは、木のスプーン作りを体験しました。この体験のミソは、アイスもセットでついていて自ら製作したスプーンをその場で使って使い心地を味わえるところ。体験プログラムって、ものを作るプロセスを楽しむものではありますが、本来道具は使ってなんぼ。作ってそのままお蔵入りしないよう、「作って、使う」がセットになったプログラムです。私自身はスプーンの口当たりにいまいち納得できなくて、自宅に持ち帰ってからスプーンの裏側をもう少し削りました(持ち帰った後、手直しできるよう紙ヤスリも付いてくる)。

スプーン1

スタッフの丁寧で優しい指導のもと、体験スタート!

スプーン2

アイス用スプーンを真剣に削る吉野のおじ様たち

スプーン3

体験終了後すぐにアイスの試食。スプーンの口当たりを確かめる。


吉野杉・吉野檜のふるさと、奈良県吉野町の皆様と

今回飛騨の視察に同行させてもらったのは、奈良県吉野郡吉野町の皆様。吉野地域は日本最古と言われる人工林のふるさとです。全国的には戦後に植林された森がほとんどですが、吉野の人々は室町のころから脈々と木を植え続けてきました。長い歴史の中で培った技術は、節がなく、まっすぐまん丸で、太さが均一な銘木を生み出し、吉野杉・吉野檜というブランドを確立するまでになったのです。
しかしお話を聞くと吉野町の木材産業は、扱い量ベースで最盛期の6分の一、金額ベースで8分の一になったとか。「このままでは山から木が出せなくなる!」と吉野の皆さんは強い危機感をもって、吉野杉の家(吉野杉で作ったゲストハウスの運営)、愛・学習机プロジェクト(吉野町小中学校の机を吉野杉で作るプロジェクト)、木育キャラバン(出前木育事業)など、新しい取組みにチャレンジされています。

吉野杉の家

「吉野杉の家」(写真参照:https://www.onestory-media.jp/post/?id=776)


飛騨と大阪、その違い

飛騨の風景を見ていると、大阪で毎日眺める景色とずいぶん違うことに改めて気づかされます。都道府県別にみると飛騨市のある岐阜県の森林率は81%と高知県に次いで第二位です。翻って私の事業拠点である大阪府は30%と千葉県と並び最下位!(林野庁「都道府県別森林率・人工林率(平成29年3月31日現在)」)大阪で生まれ育った自らの原体験を振り返ると確かに森を身近に感じたことはなく、「日本の7割は森」と言われてピンとこなかった自分にもうなずけます。
そんな森の少ない大阪で木材を扱うなんて……と一瞬思いましたが、デメリットだけでなく、プラス面もあると思っています。やはりまず大きいのは、ユーザーと物理的に近いということ。日本でも有数の消費地である大阪。顧客へのアプローチ、コミュニケーションにおいて大変有利です。次に、産地に縛られないのもプラスだと思っています。吉野の皆様は「吉野材をどう届けるか」という視点で事業を検討されますが、私は「日本の材をどう届けるか」という視点で事業を考えることができます。このようなプラス面をしっかり活かす展開を考えなければなりません。2045年までの将来予測では、今以上に都市部への人口集中が加速します。コンクリートで囲まれた都市で生活する人々と日本の森をつなぐ事業を検討したいものです。

吉野の皆さんも松本君も日本の森や木のことを真剣に考え、行動しています。現在当社では外国の木材を扱う機会が多いのですが、今回の視察を終えて、今まで以上に日本の木を扱いたい!と思うようになりました。

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今回ご一緒させてもらった皆さんと。
これから一緒に何か面白いことができれば幸せです!!
どうぞよろしくお願いします!!

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出口庸平
大阪で木材加工を営む大信製材株式会社の専務取締役。環境事業を手がけるアミタ株式会社にて営業、企画開発、人事の仕事を経験した後、2019年9月に妻の実家の家業である大信製材に籍を移す。木材を扱うのはもちろん初めてのこと。41歳のおっさんによる新たな挑戦を包み隠さず綴ります。