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木材を生き物として実感したことはありますか?


木材の大半は家になる

林野庁によると、日本の木材のおよそ4割がパルプに、3割が製材用になるそうです(参考:林野庁ホームページ)。製材される木材の8割が建築資材ですので、紙になるものを除くと、一般的に流通するほとんどの木が建物になると考えて差し支えなさそうです。

家を建てる材料ですから、安定した品質が求められます。しかし、私自身改めて驚いていますが、木というのは想像以上に「一定」ではない。反ったり、曲がったり、割れたり、膨らんだり。それはもう、皆個性的。そんな個性をできるだけ抑え込み、品質を一定にする工夫を重ねてきた歴史が日本にはあり、いろんな知恵が業界全体に根付いています。当社が扱う木材もほとんどが建築資材ですから、品質を安定させるための努力を日々重ねています。職場の大先輩からたくさん知恵を伝授いただきつつも、一方で「木ってそもそも生き物だし、一定にしようとしても限界があるよな」という思いもある。そう、本当に当たり前ですが、木って生き物で、だからこそ、それぞれ個性があるのです。


生き物だから「種類差」がある

ちょっとぶつけただけですぐにへこんじゃう超デリケートな米栂(ベイトガ)という材は、加工が容易なので室内の敷居や鴨居によく使われます。一方、鈍器として殺人に十分使えるんじゃないかと思うくらい重くて堅いマニルカラという材は、屋外デッキ用として使われます。またベイマツは、ヤニが多くて下手に触ると手がネチャネチャに。そしてなんと言ってもヒノキは香りがいい。削ると工場中が独特の香りで充満します。木は種類によって全く異なる性質を持っていて、それぞれ用途が異なるし、趣も違います。※冒頭の写真はマニルカラとヒノキ

生き物だから「出身地」がある

先ほど紹介した米栂は北米、マニルカラはブラジル、ヒノキは日本出身です。「こいつ、ブラジルの熱帯雨林からはるばる来たのか~」とか「この子を育ててくれた人は、どんな人だろ?」などと、加工しながら育った環境を想像するのは楽しいものです。

生き物だから「個体差」がある

樹種が同じでも、材それぞれに個性があり、差があります。乾燥がまだ不十分で重たい材、フシがめちゃくちゃ多い材。スギなんかだと、色が全然違ったりする。個人的には真っ白なスギよりも、少し桃色がかったものが好みです。


個性を活かす用い方

昔の大工は木の個性を活かしながら上手に使った、というのはよく聞く話。もちろん今でも材によって用途が違うし、うまく使い分けもしています。でももっと、「生き物としての個性」に価値を感じてもらえるような、そんな用途開拓ができないものか。個性があるということは、物語があるということ。この物語性が、マンションや建売住宅での画一的な生活にオリジナリティを持ち込んでくれるはず。今や木目調の壁紙やビニル床がどんどんホンモノの表情に近づいています。木材っぽくて、コンビニエンスなものがいくらでもある中で、本物の木材を提供する価値は「生き物を用いる」ことの意味や豊かさをユーザーと共有することにあると感じるのです。

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