Teal組織の入り口としての家族経営

出口庸平

以前からTeal組織に興味がありました。そして近頃、中小零細で家族経営の会社は、案外Tealで掲げる3つの要素を内包しているんじゃないか?と思うようになり、経験や考えをまとめました。

Teal組織についてはいろんなところで解説されています。概要を理解するには以下の記事がわかりやすいです。

自己組織化する組織、ティールを前進させる3つのブレイクスルー


Teal要素①:全体性

~妻との関係、自身の心の持ちようが変わる~

妻の実家の仕事を手伝うようになって、当たり前ですが、妻と仕事の話をする機会が増えました。これまで、妻にとって私の仕事は「わからないことだらけ」で、関わりたくても関われない存在。しかし今は、子供のころからよく知るところで夫が働いていて、夫の上司は自身の親。むしろ私よりも関われる領域が大きくて、私の働き方について手や口をどんどん出してくれます。「職場の暑さ対策が十分じゃないから熱中症が心配。冷間タオルや扇風機付き作業着をホームセンターに見に行こう。母さんにも、何か対策を考えてもらうよう相談しようかな」のような。家族が自分の仕事に参戦してくれるのは、なかなか心強いものです。

また私自身も仕事への意識が変わりました。これまでは、家とは別人になりきって出勤する毎日でした。家と職場で求められる役割が異なるので、意識的というより結果的にそうなっていました。もちろん今の職場でも、家とは違う役割を求められます。しかし、だからといって別の自分になりきることができません。なぜなら、家での私を職場の上司が知っていて(実家のリビングでいびきをかいてうたた寝する姿を、お義母さんに見られてる)、”仕事ができる自分”を演出しようとしても、まあ、限界があるからです。状況としても、また心の持ちようとしても、生活と仕事がにじみ合うようになりました。


Teal要素②:セルフマネジメント

~メンバー全員が事業全体を理解し仕事をする~

今の会社は、社長、社員2名、私、の4名。今誰が、何をやっているのか、報告や連絡がなくても全員がわかっていて、少しさぼっているのも、おそらく、なんとなく、ばれてる。全員が全体を把握できる、そんな規模感です。価値づくりの工程もいたってシンプル。当社は木材加工(お客様のご要望に合わせ木を削る仕事)をやっていて、手順を分解すると、①素材の受入れ→②オーダーの確認→③仕分け・段取り替え→④加工→⑤検品→⑥梱包→⑦出荷の7工程で完結。「今から〇〇さんのナラ材の加工やりますね」と後工程を担うメンバーに伝えると、「今日の夕方引取りだもんね。了解。先にやっちゃおう」みたいなやり取りでコミュニケーションが完結し、意思決定されていく。全員が現状を理解しているから出せるスピード感があります。


Teal要素③:進化する目的、あるいは存在目的

~家族経営組織の存在目的とは~

冒頭で紹介した記事では、「進化する目的」について以下のように述べられています。

進化する目的とは、いわゆる創業者が決めたビジョンやミッッション・ステートメントとはちがって、変化に適応した方向性のことを指します。その方向性は一部の限られた人が決めて推し進めていくのではなく、組織全体として探求し続けていくなかで、立ち現れてくるイメージです。

なかなか難しいですね。こちらでは自転車旅行のメタファが紹介されています。この例えは今の職場にぴったりですが、だからといって、じゃあ自社の存在目的に耳を傾けているか?と問われれば、そこまでの意識はまだございません…と答えざるを得ません。顧客との関係に真摯に、懸命に取り組んでいるという表現が一番しっくりきます。

顧客や社会のニーズが目まぐるしく変化する現在。この50年で木材業界が様変わりしたことは、諸先輩方のお話や過去の資料を見ると間違いありません。組織の存在目的を進化させなければ、この先生き残れないでしょう。固定されたミッションを実現しようとする組織とは異なり、生活の維持が根底にある家族経営体においては、提供価値や存在目的を進化させ、生き残ることに抵抗はありません。その点において、結果的に、組織の存在目的は進化していくのだと思います。


もちろんすべての中小零細家族企業がそうだという言いたいわけではありません。また家族経営だからこそ、意思決定の難しさや閉塞感があるのも事実です。ただ、5名以下の組織で、身内と仕事をして強く感じるのは、「仕事は生きることの延長にある」という事実です。大きな組織では、各々社員の役割は分化し、自身の行動がどんな結果に結びつくのか、わかりづらいものです。また、与えられた役割に応じることが第一優先になるので、自分自身の在りようと切り離して仕事に当たるケースが多いように思います。私自身も、これまで「生きる」ために「働く」というと関係でとらえていて、2つの概念は分断されていました。

たかだか100年前の人々の仕事をイメージすると、高度に機能分化した組織で働く人はほんの一握り。みんなもっと生活と仕事がくっついていたはず。Tealだとか、そんな難しい概念は置いておいて、生きることと働くことが溶け合う日々が続く中で、なんというか、人間的な毎日が送れているなと感じます。この感覚をしっかり保ちつつ、社員に広げ、社会ニーズに即した価値を提供し続けられるよう、組織を常にEvolveさせたいものです。

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