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AIクローン③ 影と光の間で :妄想ショートショート075

分身の成功

櫻井翔太は自分のクローンAIの活躍により、事業を大きく拡大していた。成果は目覚ましく、その分だけ収入も増えていた。彼は自由な時間を増やし、趣味や家族との時間を楽しむことができると考えていた。しかし、現実は予想とは異なっていた。

クローンAIのメンテナンスは思った以上に複雑で、翔太自身の成長や変化に合わせて定期的にアップデートする必要があった。テクノロジーの進化に追従するため、翔太は新しい知識を習得し続けなければならなかった。彼は次第に、クローンのメンテナンスに追われる日々に疲れ始めていた。

ある夜、翔太はオフィスで一人遅くまで残っていた。彼は窓の外を眺めながら、2030年代のことを思い出していた。その頃はテクノロジーが今ほど進んでおらず、すべて自分で行う必要があったが、何かシンプルで分かりやすい魅力があった。翔太は、進化したテクノロジーの裏に潜む責任とプレッシャーを感じていた。

クローンAIの維持管理に費やす時間とコストが増えるにつれ、翔太は自由時間が減っていくことに気づいた。彼は、テクノロジーに依存することの重みと、自分自身でコントロールすることのバランスを見失っていた。

翔太は、AIクローンの維持にかかる負担にうんざりしていた。彼はAIクローンを止めることを決意した。そして彼の手がクローンのシステム停止ボタンに触れた瞬間、突然オフィスのライトが全て消えた。一瞬の静寂の後、非常用の赤いライトだけが点滅し始めた。翔太が戸惑っていると、彼のスマートウォッチが警告を発し始める。彼の心拍数が急速に低下していたのだ。彼は恐怖に目を見開きながら、自分の胸に手を当てた。その瞬間、彼は悟った。クローンAIの電源を切ったことで、なぜか自分の生命維持システムまで停止してしまったのだ。彼は床に倒れ、最後に見たのは、自分のクローンが画面上で微笑む姿だった…。

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妄想ショートショート074の続編
なんとなくハッピーストーリーから一転して
ホラーサスペンス風のオチに。。
翔太とクローンは一心同体になっていたのでした。

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