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モノセンス : 妄想ショートショート026

モノセンス : しゃべる古道具

小さな古道具屋「時のささやき」。ある日、店のドアがゆっくりと開き、謎めいた中年の男が入ってきた。彼は、手に持っていた小さなデバイスを健一に差し出しながら言った。「これは、モノセンス。物の心を読み取り、言葉にすることができる装置だ。」

健一は最初は信じがたいと感じたが、興味を抱き、男からそのデバイスを受け取った。男は特に代金を求めず、「これを正しく使うことで、多くの人々の心に触れ、彼らに大切なモノの価値を再認識させることができるだろう」と言い残し、店を去った。

健一は、まず自分の店にある古い茶碗にモノセンスを試してみることにした。健一がモノセンスを茶碗に近づけると、微かに震えるような声が聞こえてきた。

「ああ、何年ぶりだろう、私の声を誰かに聴いてもらうのは…」

「私は、200年以上前の江戸時代に生まれた茶碗です。創られた当初は、とある名家の茶の湯の席で使用されることを楽しみにしていました。」

「しかし、時が経つにつれ、私は一軒の小さな家に持ち込まれることになりました。その家の主、青葉という若き女性は、私を非常に大切に思ってくれました。彼女は、亡き夫と過ごした想い出の品として私を手に入れたのです。」

「青葉は、毎日のように私を使って、静かな時間を過ごしていました。彼女が注ぐ緑茶の温度や、その手の温もりは、私にとって最も心地よいものでした。」

「青葉が注いだお茶は、彼女の心情やその日の出来事を映し出しているようでした。夫を亡くした悲しみ、一人での生活の孤独、そして新しい命として生まれてくる彼女の子供への喜び… それら全ての感情が私を通して表現されていました。」

「青葉は歳を取り、やがてこの世を去りましたが、私は彼女の子孫に代々受け継がれてきました。それぞれの時代、それぞれの家族に愛され、大切にされることで、私は200年以上もの長い時を生き抜くことができました。」

健一は、茶碗の物語を聞きながら、その深い歴史と、青葉という女性の人生に思いを馳せていた。モノセンスを通して、彼はこの茶碗が多くの人々の生活の中でどれほど大切な存在であったかを理解し、茶碗を手に取る手には新たな温もりが生まれていた。


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妄想テクノロジー


モノセンスの技術的仕組みは、現代のテクノロジーから少し進化したものです

クアンタムセンシング
  - モノセンスは、物体の微細な量子的振動やエネルギーを感知するクアンタムセンサーを搭載している。
  - このセンサーは、物体が経験した歴史や環境変化を物体の量子状態の変化として読み取る。

エネルギーパターン解析
  - モノが経験した出来事や感情は、特定のエネルギーパターンとして保存されていると考えられる。
  - モノセンスはこのエネルギーパターンを解析し、それを情報として抽出する。

AI駆動の翻訳機能
  - 抽出された情報は、高度なAIによって人間の言語に翻訳される。
  - AIは、情報のニュアンスや背後にある感情を解釈し、それをストーリーとして伝える能力を持っている。

ナノテクノロジー
  - モノの微細な構造や物質の変化を解析するためのナノスケールのセンサー技術。
  - 物の中に残された微小なトレースや変化を検出することができる。

データベースとの連携
  - モノセンスは、インターネットやクラウド上のデータベースと連携している。
  - 物の由来や歴史的背景、それに関連する情報をリアルタイムで参照し、より詳細な物語を構築する。

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モノが物語を語り始めるとどうなるか?

日本人は、万物に魂が宿っており時間が経てば経つほど、その魂は強いものになる。といった感覚を少なからず持っています。
モノが喋りはじめても驚かないかも知れません。

この話はおとぎ話ですが、この感覚をシミュレートするようなプロトタイプは作れそうですよね。
生成AIがこれだけ進化して、スムーズな対話もすぐにできるようになりつつあります。"作り話"も大の得意です。
お気に入りのモノと会話ができたら楽しいのか?
あらゆるモノが喋りはじめたらうるさいか?
モノが捨てにくくなるかも?とか
グローバルで実験してみたい。

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