玄奘西へ行く25
一行西へ向かうこと数日。小高い山々の連なるを進む。万寿山と言う山の中腹あたりに五荘観と言う仙人の住処があった。
まだ昼過ぎであったが疲労甚だしいので玄奘は荘を訪ねてしばし休ませてもらおうと言った。
「ここは道の仙人、鎮元大仙の棲家だ。仏教徒を歓迎しまい。やめておこう師匠。」悟浄。
「でもとびきりいい匂いが漂ってくるなぁ…なんだろう赤子のスープかな?」鼻をヒクつかせ八戒は門に吸い込まれそうになった。
「道士たちは信用ならぬ、師匠先を急ごう。」
悟空は玄奘の手を取った。
いやいや、我らの歓迎のための食事かも知れない!行こう!と豚。
門の前でガタガタしていると二人の童子が現れた。
「お待ちしておりました。西方天竺までの旅のご一行様。」
なんと!それみたことか!歓迎の席が設けられている!
我が主人、鎮元大仙より厚く歓迎するよう言いつかっております。あいにくぬしは留守であるがとにかくお入りくだされ、と、四人は早速奥の屋敷に通された。
御弟子達はここでしばし待たれよ、と玄奘だけが奥に通された。
「なんだワシらにはこれっぽっちかよ!」八戒は卓のわずかな食べ物を見てがっかりした。
お!でも酒があるぞ!ありがてえ!三人は早速酒盛りを始めた。
「肉が食いてえな。」
アホ!由緒正しい仙人の屋敷で仏僧にナマグサなど出すものか!この餅で我慢しろ。
「今頃師匠は豪華なご馳走でもてなされてるのだろうな…いいなぁ!」
「ちと覗いてみるか!」と悟空は言うと蝉に変わり戸の隙間より奥の間に入り込んだ。
中では童子二人と玄奘が卓を囲み食事と歓談を楽しんでいた。
玄奘は童子からやたら煽てられ褒められ上機嫌である。さ、さ、般若湯をどうぞ!子供達は杯の乾く間なく酒を注いだ。
「さて、我が師より、三蔵法師様がお見えになられた時には必ずや我らが宝物を献上せよとのお達し、ぜひご覧くださいませ。」
童子の1人が皿を持ってきた。
この屋敷の庭になる人参果と言う果物で、三千年に一度花開き、三千年に一度実をなし、そして三千年かけて熟す。食えば四万七千年の寿命が約束されると言うまあ大体こればっかりなよくある中国の秘宝であった。
皿を覗けば、のせられているのは人間の赤子である。もう死んでいるのか?動かない。
ひえっ!
玄奘はゾッとした。
さ、どうぞお食べくださいませ。童子達はニコニコしながら勧めた。
これ果物な訳ないよな?どうみても赤ちゃんじゃん。でもこの人たちは果物って言ってるな。食べないと失礼にあたるかな?いや食べてもし肉だったら、あー人食いはまずい!人食いが天竺でお経もらえるわけないよ!でも仙人が怒り出したら?
どうしよう?
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