玄奘西へ行く16
豚小屋で母豚の腹を蹴破り誕生したなんとも奇なる妖怪猪八戒。その後どんな生き様だったのだろうか?成長物語の記録は無いので想像するしかない。
腹から飛び出した時から大人なのだろうか?腹から出たあと周りの豚を全て叩き殺したと言うから赤ん坊ではあるまい。少年の姿で生まれてきたのかもしれない。
赤ん坊で生まれ数分のうちに少年の姿に成長した。事にしよう。
村では大騒ぎになる。なにしろ体は少年だが顔は黒豚だ。気味が悪い。
妖怪だ殺せ!村人は鍬や鎌を手に八戒を追い詰める。
命からがら逃げ出す事数知れず、麻袋に穴を開け被り顔を隠し乞食をしながら暮らした。それでも飯を食っている時などちょっとした時に素顔を見られ大騒ぎになった。
森に潜み野生の暮らしをした事もあったが人間の食べ物の味が忘れられずまたすぐ人里に戻ってきた。
そのうち運命的な出会いをする。
ある村で食べ物を盗み人間に捕まった時、そこに居合わせた道士に引き取られた。
「豚の子よ、お前にこの世で生きる力を授けてやろう。ワシと一緒に来るが良い。」
道士は豚に仙術を教えた。前世が軍神だけあって豚の技はみるみるうちに上達し、そして師匠の妖怪退治を手伝うようにった。
普段は人間に姿を変え街や村での生活も難なくこなす。
ところがある時、これは妖怪退治業の宿命であろうがとてつもなく強い妖怪に立ち向かい師匠はあっけなく殺されてしまった。
「お前は妖怪だな?命は助けてやろう。妖怪のくせに人間の味方などして見下げ果てた豚だ。」
妖怪はそう言って去った。
師を失い人間との繋がりが絶たれた豚の生活は次第に荒れていった、が、仙力を手に入れた豚は最早人間に虐げられる存在ではなくなっていたのだ。
この頃には身体も立派に成長していて人間には歯が立たないほどの怪力。
子供の頃の恨みはらさでか?とばかりに悪行三昧。
過去虐げられた村に舞い戻ると皆殺しにして火をつけた。男は串刺し、女は犯したあとチャーシューにして吊るし、子供は男の子は食ってしまい、女の子は育てて嫁にしようとするがだんだん面倒くさくなってこれまた食ってしまった。
そんな事を繰り返していると当然人間たちも黙ってはいない。賞金稼ぎの道士、王の派遣した軍隊、時には妖怪、ありとあらゆる刺客に付け狙われる事数百年、筋金入りのお尋ね豚となっていったのである。
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