玄奘西へ行く8

五百年前
顕聖二郎真君と観世音菩薩の二人の天界のエージェントの働きによって捕えられた猴王は即刻死刑の判決を受けその日のうちに八つ裂きにされた。が、すでに不老長寿の身体となっていた猴王の身体を破壊することは出来なかった。いくら引き裂いても叩き砕いても瞬く間に再生してしまうのである。
九千年に一度なる実を食せばその寿命は世界の終わりと等しくなるとされる蟠桃の実、千二百本分を一日で全て平らげ、その足で神々の肉体補完用のこれまた不老長寿の秘薬、金丹、神々全員分をこれまた一度に平らげてしまった猴王の身体はもはや世界そのものと言っていいほどのエネルギー体となり天界を脅かした。。
困り果てた玉帝(中華ファンタジー世界の皇帝)は太上老君を呼んだ。
太上老君とは仙人化した道教の祖、老子の天界での通り名である。
「それは難儀な…」
話を聞いた太上老君は考え込んでしまった。
「金丹はアインシュタイン老の質量保存の法則にのっとり原子のエネルギーを凝縮し一粒とした秘薬中の秘薬、その秘めたるエネルギーは莫大でございます。その百八粒全てを食ったとは…」
八卦炉でその猿を四十九日焼き続ければあるいは一旦エネルギー体に戻せるかもしれない、と太上老君は白衣と防護メガネを着用しながら言った。
早速猴王を消滅させるため八卦炉に押し込めた。
火を入れ四十九日後大変な事が起きた。
炉が爆発して中から身長一里(500mくらい)の黒焦げの石猿が飛び出してきたのである。
「メルトダウンじゃ!毒の灰が降るぞ!」
太上老君は叫ぶと荷物をまとめるとあっという間に煙となって逃げ去ってしまった。それを聞くと神々も次々にお札だけをその場に残し逃げ去ってしまった。残されたのは下界の生き物たちだ。
この時の爆発で世界中が炎に包まれたと言う。

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