玄奘西へ行く15

西遊記の問題点に主人公として悟空が活躍しすぎるという点がある。
歴代の講談師により語られているうちに人気のあるキャラの活躍が増えていくのは仕方のない事であろうがおかげで玄奘はすぐ弱音を吐き弟子を叱り妖怪に騙されると言うある意味トラブルメーカーの役に貶められているし、八戒は悟空にいじめられ、悟浄に至ってはもはやいる意味がないくらい何もしない。
これではせっかく奇抜なキャラクター等を集めているのにいかにも勿体無いので悟空の活躍を三人の弟子に分配してしまいたい。
まず道中トラブルを処理するのは悟空でなく悟浄にやらせる。彼はまた探偵としても働く。妖怪の素性を調べたり、敵を倒す作戦を立てたり、金の算段をつけたり。まさに必殺の念仏の鉄の様なキャラクターである。何故悟浄が玄奘の旅に付き合うことにしたかは不明。前世は天界に仕えた仙人で失態をしでかし人間界に転生させられたと言う噂もあるがこれも不明。流沙河(西遊記では河としてあり水の妖怪にされているが本来は砂漠の事らしい。)に棲み人を食らい物品を奪い生活していた。

次に悟空は強くないことにした。五百年前天界で暴れていた頃は強かったかも知れない。が、今は鉄団子と溶けた鉛のスープを食べさせられ続けた結果か?とにかく妖怪たちとまともに戦っても勝てない。これは元々そうだったかも知れない。
強さで言えば八戒の方が上なのである。八戒は元々の西遊記の記述によれば黒豚の妖怪で巷によくある白豚のデブではない。猪八戒の猪はイノシシなので日本ではかつてイノシシとされていた。が、猪は中国では家豚の事らしいのでこれは間違いである。がイノシシの方がワイルドでかっこいいので玄奘西へ行くでは一応黒豚の妖怪としておくが見た目は牙の生えたイノシシを想像して欲しい。
一行が出会う妖怪達と肉弾戦を繰り広げるのは主に猪八戒の役目だ。
しかしそれでは猿は何をするのだ?孫悟空の活躍しない西遊記なんて面白いのか?
どうだろう?
猿にも役目がある。それはこの猿は仙人の修行をしていてしかもかつて天界への出入りを許された存在なのである。手に負えない邪悪な妖怪と対峙した時、すかさず天界に瞬間移動し神々の助力を求めると言うのが猿の役目だ。これは元々の西遊記でも猿がよく使う手でこの技だけは三人の中でこの斉天大聖にしか出来ない技である。主にこれだけ。
これだけで孫悟空の魅力が引き出せるのか?
どうだろう?
怒り狂った豚にもまともに戦えば勝てる可能性は低い。

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