玄奘西へ行く21

般若心経のお陰で即喰われることを回避した玄奘はアジトの柱に括り付けられ、妖怪二匹は奥でまた喧嘩を始めた。
はよぼんさんを返して来い!仏の匂いがしてたら金剛力士にも居所がバレよる。はよ!はよ!全くずうたいだけデカくて頭の足りんやっちゃ!
うるさい!こうなったら意地でも唐僧の肉をお前にも食わせてやる!そうすれば仏門からも縁を切られてちょうどよいわい!
唐僧の肉を食うと不老長寿のご利益があると言うのは道士たちのばら撒いたデマである。このため多くの唐僧が殺され食われてしまった。
ああ、早くみんな助けに来てくれないかな?

その頃悟浄一行。
「孫行者は霊山に登り金剛力士を連れてきて欲しい。訳はあれこれあれこれこうこう言えば良い。」
「心得た!」そういうと悟空は雲に飛び乗った。
「ワシは?ワシは何をするんだ?」
お前様は虎の妖怪を叩き殺してくれ!おう!任せとけ!虎なんか怖くもなんともねいや!
悟浄と八戒は敵のアジトへ向かった。
夜がふけ皆が寝静まった頃二人は八百里黄風嶺に辿り着いた。洞窟には門は無く、不気味にその口を開けている。
「きっとこの中だ、黄風怪の術に気をつけろ。眼鏡を忘れるなよ!」
八戒は鼻を鳴らし勇んで洞窟に入ると何やら喚いた。
頼もしい豚だ。力が有り余ってるのだろう。
俺は師匠を探そう…

喧嘩してる二人の妖怪。黄風怪が入り口の喧騒に気づいた。
何やら騒がしいやないか?まさかもう猿がきよったんちゃうやろな?
ふむ、虎も耳を向けた。
「様子を見てくる。」虎が立った。
豚と虎が出会った。
「なんのようだ豚野郎!」
「ワシらの師匠を返しやがれ!さもないと叩き殺して毛皮を剥いでやるぞ!それとも生きたまま皮を剥いでやろうか?」
豚は馬鍬を構えて言った。
「唐僧の事か?ワハハ!もう食ってしまったわい!お前の師匠は美味かったぞ!骨ならまだあるから髄でも啜るか?この豚野郎!」
「なっなにを…」豚は師匠が食われたと聞き動揺した。
「兄者、師匠はもう食われちまったようだ。どうする?辞めるか?」
「袈裟を着て念仏を唱えているうちは妖怪は結界に入れん、虎の嘘だ!怯むな八戒!虎を殺せ!叩き殺せ!」悟浄が言った。
おうよ!八戒は馬鍬を構えて虎に飛びかかった。
豚の猛突進ぶりに一瞬怯んだ虎だが歴戦の虎である。すぐに応戦する。
かなりの力技の応酬、洞窟中に振動が響くこと半刻ほど。いろいろ頭では戦いの情景が浮かんでいるのだけれど描写が難しいので割愛。とにかくヘビー級の戦いを各々想像して欲しい。

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