自作問題解説 その2

ダイキリです。「その1」を公開したところ、「めちゃくちゃ参考になりました」と言われたので味を占めて「その2」を書きます。今回は「前フリ+落とし」構文を相対化しようという話です。

では問題

Q. ホメオボックス遺伝子の発見者ゲーリングが注目した「8本肢の蝶」の像がある、有名な世界遺産はどこ?

A. 東大寺

この問題は「早押しチャンピオンシップ」という難問主体の企画に提出した問題です。また、

Q. スペインのセビリア大聖堂とドミニカ共和国のサンタ・マリア・ラ・メノール大聖堂が墓の所在地を主張している歴史上の人物は誰?

A. コロンブス

という問題を、夏の自分の企画(難易度は様々)に提出しました。それぞれ落としが「有名な世界遺産」「歴史上の人物」とかなり濁されており、1つのヒントで構成された問題となっています。

これらの問題はどちらも早押しとして出した問題です。現在、クイズ界の問題は、面白い前フリがあっても、「前フリ+落とし」で「正解を出させる」ことに主眼が置かれた問題が多い気がします。実際には、そんなこと考えずとりあえず「フリ+落とし」構文に当てはめてしまっている例もあると思います(私がよくやってしまう)。

特に、簡単な問題群を謳う企画や大会では、特に落としをつける問題が多く見られます。これは、構文に従っているというよりも、「正解が出て欲しい」という思いで作成された問題文なのだと思います。早押しですから、前フリで押せる人はそこで差がつけられるし、知っている人がいなくても落としで正解は出るし、こっちの方がいいだろうということですね。

この考え方に文句はないし、一つの妥当な意見だと思うのですが、最近、私は「正解させるための落とし、ない方がスマートな問題ある説」を意識して作問しています。

具体的には、一般常識(一般教養と言った方がいいか?)レベルだと思われる単語が答えの問題について、切り口系の面白い事実で勝負する問題の場合、落としで情報は増やさなくていいだろう、と思っています。特に、切り口が周辺的なエピソードだったりする場合、短文だと落としが急転直下になりすぎて、あまり綺麗な問題にならないことが多いので、面白エピソードだけで問う、ということですね。

このような「フリ+落とし」構造からの脱却は、かなり前から自然とやっていたものの、早押しチャンピオンシップ後、先輩の鶴崎さんと話したときに明確になりました。「この問題なんで落としつけちゃったの?」と言われ(まあその問題はふざけて落としをつけた問題だったのですが)、ああ、「フリ+落とし」をデフォルトだと思ってしまっているかもな、という意識が生まれました。

有名な事物や人物が答えだと、答えが必ずしも出なくても、結構妥当感というか、理不尽な難問感はなく、むしろ面白い問題だな、という印象になる気がしています。

私は個人的に「正解できそう」「知ってそう」なのに「答えられない」「知らない」というのが面白い問題の秘訣だと思っています。というのは小学生ぐらいのとき、クイズをいつも出してくれる父に勝とうと超難問を出したらそう言われ、その後父の出してきた問題がまさにそういう問題で、非常に面白いと思ったからです。

有名単語が答えだと、どこかで出会っていてもおかしくない感が出るので、問題そのものが多少難しくても、参加できないような難問だと思わせることがあまりないのでは、と思っています。有名単語が答えなら前フリだけでいい、ってのはこういう作問思想に基づいていますね。

じゃあ何が有名なの?ってのは難しくて、早押しチャンピオンシップには他にも

Q. 九谷焼の窯元・青郊窯が「持ち歩く九谷焼」「大切な思い出をしまう陶箱」をテーマに製作したのは、どんなもの?

A. USBメモリ

という問題を出しました。この問題は「九谷焼でできたものもある〜」みたいな前フリにするのではなく、自然にこの構文になりました。前フリに使っても前フリ時点で確定ではない可能性を考えさせてしまい、この事実を知っていても押せない、というのがメインでした。が、「ユニバーサルシリアルバスを略した〜」みたいな落としをつけたら台無し感はあると思います。

じゃあなぜこんなに自然に切り口のみの構文に移行できたかと考えたら、「USBメモリ」というのが一般語彙だったからかなと思いました。わざわざ説明するほどのものでもない、ということですね。しかし「東大寺」「コロンブス」は固有名詞だし、なんか説明したい気持ちもちょっとわかります。これらよりはマイナーだけど有名、みたいなものはさらに「説明したくなる」ので、落としを無意識につけたくなります。

しかし、この「無意識につけた」フリ・落としというのはやはり一度意識的に考えるべきだと思っています。「本当にこのフリは必要か?」というのを落としのレベルまでちゃんと考えて作問したい、って話です。

最近、そういう視点で自作問題ストックを見てみると、次々に「落としない方が綺麗だわ」って問題が見つかり、落としを削りまくったりしました。自分では出来ているつもりでしたが、やはり意識するとしないとでは大違いですね。

ってことで「その2」は終わりです。前回と違って最近考えたこと、みたいになりました。「その3」も気が向いたら書きます。次はその問題固有の話がしたい気分。

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