自作問題解説 その3

こんにちは。いろはも終わったことだし、いろはの問題で作問技術的な面で書けることを書こうと思います。つまり、いろはの問題のネタバレ注意。

私は作問するとき、本、ネット、問題集などでいわば受動的に(まあ本を読んだりする行為自体は能動的ですが)得た情報をもとに作ることが多いです。というか多くの人はそうだと思います。

しかし、別の方法として「有名なもの(で掘れそうなもの)を思いつく→実際に出題できるか調べてみる→出題できそうなら問題文を考える」という順で作問することがあります。「有名なものを思いつく」フェーズは、テレビやYouTubeで取り上げられているネタから「これ有名だな」と発想したり、歩いてる時とかに「掘れたらクイズにできそうな有名単語ないかな〜」と考えて思いついたりしています。

今回は、それが上手くいった問題を紹介します。

Q. アメリカの歯医者によって発明された当初は「Fairy Floss」と呼ばれていた、歯に悪そうなお菓子は何?
A. わたあめ

これは我ながらかなり良い問題だと思っています。この問題は、VTuberの配信でスイーツの話題が出たか何かで、「わたあめって見た目の完璧さからのがっかり感やばいよな。あれを改善したわたあめ出てこないし、もうあれが完成形なんやろな」と思ったときに「じゃあわたあめ作った天才調べるか」と思ったのが作るきっかけでした。

英語文献まで辿って調べてみると、歯科医のウィリアム・モリソンがお菓子屋さんと共に開発したとの情報が。そのときのメモがこれです。

歯医者のウィリアム・モリソンが菓子屋のジョン・C・ウォートンと開発
→綿飴

これでも悪くはないんですが、いたずらに固有名詞を連発したくないなとは思いました。また、この事実を見たとき「歯医者」という点に意外性を感じましたが、それをどこまで表現しようか迷いました。

私は前々から「(国名)の(職業名)(名前)が〜した」という構文を紋切り型に採用することに疑問を感じていました。国名も職業名も出す必要があるのかわからない問題も多いし、名前を出されても全然知らない人なので結局音の並びとしてしか処理できないし、どこに面白さを感じればいいのかわからん、と思っています。この辺は「問題は面白くなければならない」「フリには意味があって欲しい」という私の思想が色濃いですね。

しかし、意外な職業の人が意外なことをしていたという面白さはある場合があります。カナダの大道芸人がサーカスを作っても面白くありませんが(シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスは面白いです)、カナダの歯科医がラクロスを競技化したのはまあ面白いかなと思います。

ということで、「現状のつまらない構文のままで面白く出題できるような、発明者の職業の意外性を軸に据えた問題」をいつか作ってやる、という逆張りオタクの熱意を持っていたわけです。

そこで、この問題について、「歯医者」が「甘いお菓子=虫歯になりそう」を発明したという面白さを軸にしようと思いました。そのときのメモがこちら。

歯医者でもあったウィリアム・モリソンらが発明し、当初は「Fairy Floss」と呼ばれていた、歯に悪そうなお菓子は何?

「歯に悪そうな」を落としにすることで面白さの軸を明らかにしようと思ったわけです。そして、最後に「ウィリアム・モリソン」いらねえな(軸がぶれかねないので)、と削り完成。最初はわたあめの発明者の名前を知りたくて調べたので、冷静に当初のアイデアを捨てる決断をできたことに成長を感じました。「アメリカの」とつけたのは後ろに英単語を出す自然さと、何も言わないと日本だと誤解されそうという意図がありますが、まあなくても大丈夫ですね。

この問題は、「既存の問題の面白さを研究しいつか使おうと思っておく」という意識のもと「発想→調査→成文化」までうまくいった例だと思います。

他に発想から行った例で書きたい問題としては

Q. 漫画『NARUTO』では子供時代のナルトが孤独な気持ちで、黒澤映画『生きる』では死期の近い主人公が自分の仕事に満足して乗るものは何?
A. ぶらんこ

これがあります。この問題は、VTuberの兎田ぺこらさんが『アマガミ』というギャルゲーを実況プレイしていた際、ヒロインの七咲がぶらんこに乗るシーンを見て思いついた問題です。ぺこらさんと『アマガミ』スタッフの方にはSpecial Thanksの気持ちを送りたいです。

最初は『NARUTO』と『アルプスの少女ハイジ』の共通項を思いつき、その後すぐ『生きる』も思いつきました。「ぶらんこ」から来る天真爛漫なイメージとのギャップ、「ジャンルが違うものの共通項の方が面白い」という自分の中での原則に従い、『NARUTO』と『生きる』の共通項に決めました。

映画『生きる』だけだと若干具体的な映画に結びつけるのが難しいか?と思いましたが、「黒澤明の映画」にすると「岸本斉史の漫画」もつけねばならず、文が長くなるだけです。そこで、名前がまだない猫を「漱石の吾輩」と表現するテクニックを思い出し「黒澤映画」という慣用表現があることに気付いて最終的に問題文を決定しました。

まあこんな感じで「発想はある程度大胆な裏切りを意識しつつ、細かい表現は分かりやすさ重視」を意識して作問しています。

また長文になってしまいましたが、読んでくれた方はありがとうございました!

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