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ゴドー(Godot)とは?

サミュエル・ベケット
『waiting for godot』(Grove Press, EVERGREEN BOOK,1954)
『Waiting for Godot』(faber & faber, 2006)

もうかなり前になってしまいましたが、コロナ禍のなか、ふと、ベケットのゴドーを読んでみようという気になって『waiting for godot』(上写真左)を棚の奥から取り出し、何日かかかって読み終えました。まったくもって、いまさらながらの感想ですが、「傑作」です。

どう傑作なのか、とうていつたない筆ではつくしがたいとしても、個人的には、ラッキーという不思議な人物(奴隷のような役目)がいきなり喋り出す、そのマシンガントークというか、C-3POの長広舌じみた、意味不明の長ゼリフが圧巻だと思いました。この版で三頁にわたっています。ここを劇場でどう演じるかでその舞台の善し悪しが決まるだろうな、と思うくらいです。

それからしばらくして「ブ」で新しい目のゴドーを見つけたので買ってしまいました。写真右がそれです。

「ゴドー」の意味について以前のブログに投稿した記事がありますので引用しておきます。

サミュエル・ベケット『waiting for godot a tragicomedy in two acts』(Grove Press, EVERGREEN BOOK,1954, fourth printing)。このゴドーはベケット自身がフランス語から英語に翻訳してイギリスに先駆けてニューヨークで出版した書物。初版は一九五四年刊のハードカバーで、これは相当な古書価(数十万円)。そのダストジャケットと同じデザインのソフトカバー版がこれ。こちらも初刷なら数万円はしているようだ。本書は四刷なのでぐっと下がるのだろうが、まあそれはそれなりに珍しい本だと言える。大学堂書店の表の均一台に入っていた。

ゴドー(Godot)というのはどういう意味なのか。安直だがウィキで調べると、英語版では
フランス語の「godillot 昔の兵隊がはいたブーツ」「godasse 靴」からとったとベケットが述べた説(Roger Blin)
もともとフランス語で書いたので God ではないが無意識にゴッドが頭にあったのかもしれないと認めた説(Peter Woodthorpe)
ベテランの競輪選手の名前 Roger Godeau からで、ベケットがゴドー選手を競輪場の前で待っていた説(Hugh Kenner)

などが挙っている。フランス語ウィキには rue Godot(ゴドー通り)説や競輪選手(Godot)説の他にバルザックの小説『策師 le faiseur』に Monsieur Godeau を待ち続けるという前例があることを指摘している(ただしベケットはこの作品は読んだことがないと否定)。
まあ、とにかくゴッドではないにしても、誰もがゴッドを連想することは間違いない。ベケットによれば、北米ではドを強く言うが、ゴを強く発音するのが本当だそうだ。t は発音しない。とすると、よけいにゴッドに近くなる。


裏表紙の渋いベケット

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