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本を読んでいた 庭にたき木がほしてあった すると 雨が降り出した
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『全日本児童詩集第一集』(川端康成編、むさし書房、1958年10月20日9版、そうてい考案=竹中郁)を均一コーナーの棚に見つけた。編集責任者の名前がビッグ。川端康成、林芙美子、与田準一、丸山薫、村野四郎、梅木三郎、阪本越郎、久米井束、井上靖、安西冬衞、小野十三郎、竹中郁、坂本遼、足立巻一。
《さしえはこどものすきな絵の先生がたにかいてもらいました》とあってその先生方がまたなかなかの人選。小磯良平、吉原治良、井上覚造、川西英、須田剋太、山崎隆夫、前田藤四郎、田川勤次、池島勘治郎、沢野井信夫、津高和一、早川良雄。これは当時としてはどうだか分からないにしても今の目で見ると驚くべきメンバーである。
巻頭の「父兄、先生へ」より引用しておく。なお奥付けによれば初版は1950年10月1日。
この詩集は一九四九年十一月刊行を目標に同年三月編纂を企画したもので、以来一般の公募を行うとともに「銀河」「赤とんぼ」「作文」「こども詩の国」「少年少女の広場」「少年朝日」「きりん」など諸雑誌に掲載された詩、学校、学級文集中の詩を出来るかぎり集めて、慎重に何度も選考し直したものです。
編纂にあたっては、総花式を排してあくまで作品本位としましたため、一つの地方、一つの学校の作品が多数を占め、また同一人の作品が数編掲載される結果ともなりましたが、方針上やむをえないことであり、またこれは児童詩において指導がいかに大切で強い影響を与えるかという事実を示すものと思われます。また、雑誌「きりん」の作品が多数を占めたことも、平常の訓練の大切さを如実に物語っております。
こどもの詩は、まあ、こどもの詩である。鋭いところもあれば、物足りない感じもする。それは、大人の詩でも、そうは変わらないのかもしれないが。竹中郁の言葉を引いておく。
詩はめんどうな約束はないし、長くかく必要もないし、ほかの文学形式とくらべて、いちばん子どもに似合っている。
だから、詩をかく子どもに出あって、話をすると、みなにこにことして楽しそうにわたしをみつめた。わたしが詩をかく人間だと知って警戒しないのである。仲間だと思うのである。わたしの方でも、子どもを仲間だと思って、くだけてたのしく話をした。
いずれ、忘れっぽいのがあたりまえの子どもは、詩を作るのを忘れてしまうだろう。十五六歳にもなればきっと忘れてしまう。それでかまわない。子どものころに、感じる訓練と、それを述べる訓練とを経ただけで、それは十分ねうちがある。
子どもよ、詩をかく子どもよ、すこやかなれ。
詩にはめんどうな約束はない、というのは本当かな? と思ったりするが、野暮なことは言わないでおく。
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最後にこどもの本の詩をひとつ引用しておく。
雨
本を読んでいた
庭にたき木がほしてあった
すると 雨が降り出した
ぽつぽついうのをききながら
一〇五ページの中ほどを
むちゅうになって読んでいた
一〇六ページへかかったとき
雨の音がおおきくなった
それでもまだ
たき木をとりこむ気持ちにならない