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夕暮れ忌、その他


『柵』no.9(詩画工房、昭和62年8月20日、表紙絵=田川勤次)

『柵』は大阪府豊能郡能勢町の志賀英夫氏のやっておられた詩誌。志賀氏については以前ブログに書いていますのでご参照ください。

追悼・志賀英夫
https://sumus2013.exblog.jp/27817422/

久しぶりに見つけたので買ってみました(もちろん百円です)。桑島玄ニも寄稿していますし、衣更着信の翻訳も載っています。

『柵』第九号目次

志賀氏の「身辺雑記」に足立巻一の「夕暮れ忌」に出席したことが記されています。足立巻一の死については寺島珠雄さんの文章を先日この note でも引用しました。

馬 15
https://note.com/daily_sumus/n/n0c9bb8e00075

八月一日 足立巻一さんを偲ぶ会・夕暮れ忌に出席する。桑島玄ニさんと二時間前に落ち合う約束で、三宮駅に着いたらすごい夕立にあった。それでも定刻前には晴れて、参会者の長い列がつづき、予定の出席者数をはるかにオーバーする盛会となる。松本昌子・島田陽子・みくに年子・福中都生子・寺島珠雄・松尾茂夫の諸氏と懇談できた。池田昌夫さんにお合い出来たのは旧柵刊行当時から四十年ぶり、益々ご壮健でいらっしゃる。》(p80)

八月一日午後三時より神戸三宮東サンパル七階会場で二百余名参会して開催され、陳舜臣の講演、杉山平一と桑島玄ニの挨拶があり足立夫人が謝意を述べた、またこの日を記念して遺稿集『日が暮れてから道は始まる』(編集工房ノア)が上梓された、と「通信」欄に出ています(p78)。

もう一点、寺島珠雄さんのエッセイ「ちいさな詩集二冊」が掲載されていますので少し引用しておきます。タイトル通り、久永元利詩集『雪屋食堂』(編集工房ノア)と筧槙二詩集『赤猫』(山脈文庫)の紹介文です。前者は大阪の西の端、尼崎に近い加島で雪屋食堂を経営している著者の二冊目の詩集だそうです。

  午報に集まる
  木型模型屋の金
[かね]やん
  鉄工所の精ちゃん
  プラスチック成型の徳永はん
  大めし・豚汁・キムチ
  中めし・うどん・天麩羅皿
  カレーライス・ラーメン
  コップ酒・冷やっこ

「うどん・定食・ラーメン」から部分引用の孫引きです。

久永が追慕する清水正一(一九八五年没)にしても、蒲鉾の製造販売という家業とのけじめをつけながら、家業に即した佳篇を多く遺したのであった。久永の遠慮をそれとして受けとめた上でなお、この詩集の名『雪屋食堂』をいいと思う。店の実在を熟知する私ゆえとなることかも知れないが、そっけないような『雪屋食堂』の四文字に虚実皮膜の間[あわい]を感じるのだ。

  霧の重みで
  竹林が戦
[そよ]いでいる
  夜
  五十余回の誕生日の
  祝酒に
  降り出した雨の音を
  楽しんでいる

 右は作品「筍」の書き出し。》(p76)

妻と店を営み、子を育てる久永は、当節フツーのなどと表記される以前の、正味に普通の生活者だが、だからこそ正味に普通な生活者の例に洩れず、実は独自固有な道程を経ておりこれからも踏んで行くことをこのちいさな一冊は示している。》(p77)

寺島珠雄さん自身にも「食」にこだわりのある詩作品が多いのを思い起こさせるです紹介文です。

果樹園まで
https://sumus2013.exblog.jp/23951538/

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