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自分を愛したヴィーナス


アントニー・ペンローズ『リー・ミラー 自分を愛したヴィーナス』
(パルコ出版局、1990年12月14日、ブック・デザイン:成瀬始子・鈴木賢一)

京都の町家古本はんのきにてジャケ買い。リー・ミラーはマン・レイのモデルとして知られていますが、彼女自身も優れた写真家・ジャーナリストでした。2008年にパリに滞在していたとき、ちょうどジュ・ド・ポム(写真美術館)でリー・ミラーの写真展が開催されていたので印象深く鑑賞したことを思い出します。

その頃の自分のブログにこう書いています。

リー・ミラー写真展開催中。リー・ミラーは一九〇七年アメリカのニューヨーク州生れ。二十歳のときにニューヨークに出て『ヴォーグ』誌のマヌカンとして活躍。二九年にパリに渡ってマン・レイと知り合いパートナーとなった。今ではマン・レイの被写体として永遠の命を得ているが、三二年には別れてニューヨークに戻り、自ら写真家となることを決意、スタジオを構えて広告や映画のための仕事をした。三四年には大金持ちのエジプト人と結婚してカイロに住み、世界中を旅行し、多くの写真を撮っている。その金持ちと別れたあとはロンドンでローランド・ペンローズといっしょになった。『ヴォーグ』誌のイギリス版『Brogue』のために仕事を始め、ノルマンディ上陸作戦やドイツ第三帝国崩壊直後の状況を撮影することに成功している。

やはり前半ははっきりマン・レイの亜流だが、徐々にリー・ミラーらしさが出てくるところが興味深いし、怖い物なしの性格を多くの写真が物語っており、一人の女の生き様として面白いと思った。

ジュ・ド・ポム美術館。一八六一年にナポレオン三世によって古式テニス場として建てられた。それがすなわちジュ・ド・ポム(le jeu de paume, 直訳すれば「掌の遊び」)である。一九〇九年から美術館になっており、一九八六年にオルセー美術館が開館するまでは印象派の美術館だった。たしかに七六年にここでドガの作品を見たはっきりとした印象がある。それ以後は現代美術と写真のギャラリーとなっている。

アントニー・ペンローズはリーとローランドの息子です。

この本がまたPARCO出版らしく洒落たつくり。帯があるはずなのですが、私が買った本では失われています。残念。ジャケットの両袖を二重折にして大きく写真をレイアウトしたのはアイデアですねえ。成瀬始子さんは石岡瑛子の元で学んだデザイナー。検索してみると『ジョージア・オキーフ 崇高なるアメリカ精神の肖像』(パルコ、1984)も同じ二重折りジャケットです。

印画紙のような厚手のアート紙に別刷で口絵写真を四箇所で綴じ込んであるのもなかなか迫力があります。内容も面白そうなので、いずれ紹介したいと思いますが、本日はジャケ買い報告のみ。

小口側から
ジャケット全体

巻頭口絵
本文

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