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2022/11/21 マレーシアの混沌とする政治

マレーシアでは11/19に下院(日本で言う衆議院)の解散総選挙が実施された。開票結果が出揃い、どの勢力も(マレーシアには政党がたくさんあり、それぞれ連合を組み選挙を戦っているので「党」ではなく「勢力」と表現する)過半数を取ることはできなかった。

ここから混沌とする議席争いが始まる。

国王は選挙のあった19日から2日後の21日の午後2時までに、政権を担える勢力の確定と、首相候補の確定を行うよう、下院議長と各勢力のトップに求めた。

実はマレーシアの混沌とする政治は2018年の総選挙から始まる。日本の政党の枠組みと重ね合わせる方が分かりやすいと思うので、実際の政治思想やイデオロギーを除外して、日本のそれっぽい政党名と、マレーシアの政治家の本名を使って説明を進めていこうと思う。

私は決して政治に詳しいわけではないので、印象的な出来事をざっくりと説明するだけなので、8割主観、2割うわさレベルで読んでほしい。

登場する役者たち

  • UMNO (統一マレー国民組織): 自民党?

  • BN (国民戦線): 自民党を中心とする連立グループ

  • PH (希望連盟): 以前の民主党

  • PN (国民連盟): 後述

2018年政権交代以前のマレーシアの政治

マレーシアではこれまでBNと呼ばれる与党連合が長年政権を担ってきた。そのBNの中心にあるのが、イスラム教徒の権利を重視するUMNOという政党だった。

UMNO党はマレーシアの独立当時から政権を担ってきた政党で歴史が長い。日本で言う「自民党」のような存在だろうか。

歴史の授業で聞いたことがあるかもしれない。ルックイースト政策が有名なマハティール首相が「自民党」で長期政権を担っていた。その後彼自身が指名したアブドラ氏、ナジブ氏と首相の座が引き継がれていった。

求心力を持っている首相が退陣し、その後の後継者が首相の座に着くと、さまざまなスキャンダルや問題が噴出し、権力争いも起こり、政権の維持が難しくなるのはどの国も同じだ。

「自民党」のナジブ氏が首相だった頃、大規模な汚職事件が発覚し国内で大問題になった。内閣改造による反対勢力の排除、マスコミに対する強権発動によって火消しを行おうとしたが、これがかえって火に油を注ぐ結果となった。

マハティール元首相は2016年に「自民党」を離党し新党を結成する。その後野党の「民主党」に合流し、2017年には「民主党」党首に就任する。

2018年の歴史的政権交代

「自民党」のナジブ首相の求心力が落ちていく中、首相は「衆議院」解散を宣言。2018年に「衆議院議員」総選挙が実施される。

「自民党」は引き続きナジブ氏を旗頭に、対する「民主党」はマハティール元首相を旗頭に選挙戦を戦うことになる。

結果はマハティール氏率いる「民主党」が議会の過半数を獲得し、歴史的な政権交代が実現し「自民党」が下野するという結果に終わった。

この「民主党」の勝利を受けて、世界最高齢の90代のマハティール首相が誕生する。

2020年の政変

実は「民主党」内ではこんな取り決めが作られていた。2018年の総選挙後、マハティール首相の任期は2年とし、2020年5月までにアンワル氏を後継者として政権を委ねるというものだった。

このアンワル氏はマハティール氏が「自民党」で首相に就任していた長期政権時代の最側近人物だった。昔からマハティール氏の後継者として見られてきた。だが、1998年にアンワル氏の同性愛疑惑が取り上げられ、マハティール首相に要職を剥奪され「自民党」からも追放されることとなる。その後「改革」を訴え、マハティール氏の首相退陣を求めるデモを行い、その後アンワル氏は逮捕・収監されてしまう。

この因縁の2人が同じ政治連合で選挙を共に戦い、2年後の後継者として権力を譲ることを約束していたのだ。

しかし2020年になり、マハティール首相の続投を本人が匂わせ始めると事態は動き始めた。因縁の2人の権力闘争と、議会の中での綱引きが始まったのだ。

2月24日にマハティール首相が辞任を国王に表明した。同日、国王は辞任を承諾するとともに、マハティール氏を新しい首相が誕生するまでの暫定首相に任命した。

ここから与党「民主党」の分裂が始まる。マハティール氏のグループとアズミン氏のグループが「民主党」を離脱した。これにより「民主党」の議席は過半数を下回ることになる。

マレーシアの憲法では「衆議院」の過半数の支持を持つ議員が国王によって首相に任命されることになっている。つまり今のままではアンワル氏は首相となることができないということになる。

ここから多数派工作が始まった。

自分が議会の過半数をすでに取ったと主張する両陣営。それに乗じて、自分に有利な条件で拾ってもらおうとする議員たち。議員たちの間にも情報戦が広がっていて、自分の判断をギリギリまで発言せず、思わせぶりな発言が増えていった。

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