「大川隆法の霊言はインチキだ」と言い切ることにした理由

大川隆法

 幸福の科学・大川隆法による「霊言」なるものはインチキです。デタラメです。たわごとです。

 って、信者以外はみんなわかってますよね。

霊言デタラメ

 でも実はぼく自身はこれまで、基本的に「霊言はインチキだ」と断言したり幸福の科学批判の理由にしたりすることを避けてきました。もちろん、腹の底ではインチキだと思っていたので、「これ見れば、言わなくてもみんなインチキだとわかるよね?」という意識でものを言っては来ましたが。

 それがなぜいまになって「霊言はインチキだ」と断言するようになったのかについて書こうと思います。

香港民主活動家の命を危険に晒した「霊言」

 9月4日に幸福の科学が『幸福実現NEWS』として、香港民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏の守護霊の霊言と称するものを発表して以来、やや日刊カルト新聞社は計3度の抗議活動を呼びかけ実施してきました。

9/16 東京・新宿での幸福実現党によるデモ行進へのカウンター
9/22 東京・高輪での幸福の科学・東京正心館前での抗議活動
10/6 東京正心館前での第2回抗議活動

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『幸福実現NEWS』には、周氏の守護霊の言葉として、周氏がさも香港独立や、そのための香港への自衛隊派兵を求めているかのような内容が掲載されていました。周氏本人がTwitter上で、自分はそのような主張はしていないと表明し、削除を求めました。しかし幸福の科学は「周庭氏の守護霊の発言を紹介したものであり、地上の御本人の発言ではありません」という趣旨の理屈で、周氏からの削除要請を拒否しました。

「幸福実現NEWS」特別号に関する周庭氏への対応について(ご報告)

 『幸福実現NEWS』は中国のメディアに取り上げられ、中国版Twitter「微博」で炎上しました。その中で中国メディアは幸福の科学を「邪教(中国で言うカルトみたいなもの=日本とはちょっと意味が違う)」であると解説しつつも、香港への自衛隊派兵を求めるかのような内容が「霊言(つまりインチキであり大川隆法のたわごと)」であることは伝えませんでした。つまり、周氏本人がそう発言したかのような報道でした。

 自由や人権や民主主義のための運動は、中国においては命がけです。逮捕、投獄、拷問もあれば、もちろん殺される人もいます。ましてや香港の独立や自衛隊の派兵を求めているなどとなれば、それが事実であろうがなかろうが、中国当局にとっては弾圧を正当化する恰好のプロパガンダになります。

 中国メディアの報道は確かに誤報ですが、勘違いを生み出すような情報発信をしたのは幸福の科学です。

 『幸福実現NEWS』には「守護霊」という言葉はあったものの、「守護霊」や「霊言」についての設定解説は載っていませんでした。当然、その内容が「霊言」という宗教儀礼によって教祖の口から語られたものにすぎず、客観的な真実ではないことがわかるような記述もありません。それどころか周氏の顔写真を大きく掲載して、一見して周氏本人へのインタビュー記事であるかのような装いで掲載していました(周氏による削除要請後、顔写真を削除し本文や見出しに「守護霊」と書き加えた改訂版に差し替え)。

幸福実現NEWS(改訂前)

 にもかかわらず幸福の科学は後日、周氏の「霊言」と称するものを書籍として発刊します。『幸福実現NEWS』に掲載されたのは抜粋で、書籍には全文が収録されていました。さらに幸福の科学は「香港革命は神の革命だ!」などと叫ぶデモを東京、大阪、広島、愛知で行い、周氏とは別の香港民主活動家・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏の「霊言」と称するものも収録し書籍化しました。

 やや日刊カルト新聞社が抗議活動を繰り返しているのは、こうした一連の動きに対するものです。そしてぼくが「霊言はインチキだ」と断定するようになったのも、これがきっかけです。

「設定」に支えられている霊言

 霊言はインチキである。誰もが感覚的にはわかっていても、それを客観的に証明することは簡単ではありません。

 宗教は、教祖なり幹部たちなりが決めた設定次第でどうとでも言えてしまう世界です。幸福の科学も同じです。たとえば、幸福の科学では坂本龍馬の霊を降ろしたと称して「自衛隊を廃止して宇宙戦艦ヤマトを建造せよ」といった趣旨の霊言を発表しています。以前、まだ教団広報がぼくの取材を受けていた頃に、広報職員に尋ねました。要約するとこんな感じです。

──坂本龍馬の時代には自衛隊も宇宙戦艦ヤマトもなかった。なぜ坂本龍馬は知ってるのか。

「坂本龍馬先生は死後も霊としてこの世を見てきていらっしゃいますので、死後のこともご存知なのです。おそらく宇宙戦艦ヤマトもご覧になっていたのでしょう」

 ああそうですか。としか言いようがないですが、そうなんです。彼らの中では。

 死者の霊だけではなく生きている人物の霊を呼び出すことについても、ちゃんと(?)設定があります。

──なぜ生きている人の霊まで呼び出せるのか。霊を抜かれた肉体が動かなくなったりしないのか。

「人には、肉体に入っている霊とは別に5人の守護霊がついています。生きている人物の霊言は、この5人のうちの1人を呼び出すものなので、降霊中でも肉体はいつもどおり活動できるのです」

 ほかにも広報職員にいろんな質問をしました。

──なぜ外国人の霊も日本語をしゃべるのか。

「霊言は大川総裁の言語中枢を通じて発せられるからです。いわゆる霊媒師などと違って、大川総裁は霊的なキャパが大きいので、降霊中もご自身の意識は失われません」

──イエス・キリストの霊が「アイ・アム・ジーザス・クライストゥ!」と英語でしゃべるのはなぜか。イエスの時代に英語はなかったのでは?

「イエス様の母語はアラム語か何かですよね。イエス様も死後、この世を見てこられているので、皆さんにわかり易い言葉を選んだのではないでしょうか」

──明治天皇の霊が「明治です」と言って登場するが、明治は元号であって天皇名前ではない。明治天皇本人が自分を「明治」とは言わないのでは?

「明治天皇も死後、この世を見てこられているので、皆さんにわかり易い言葉を選んだのではないでしょうか」

──生きている人の名前を勝手に使って発表するのは本当にやめたほうがいい。

「でも、実際に霊がこうやって喋っているわけですし」

 何が「実際に」だよって話ですが、万事こんな調子。霊言の基本設定に基づいて「だって霊が言ってるんだもん」というわけです。

 全然関係ないですが広報の人が遠い目をしながら「景山民夫さん(幸福の科学信者だった作家で、1998年に自宅の火災で死去)は完全燃焼の人生でしたねえ」とつぶやいた時は、ぼくはどう反応していいのかわからなくなりました。

 幸福の科学では霊言によって様々な人物の過去世が示されます。大川きょう子氏(元妻)の過去世はアフロディーテだとか大川宏洋氏の過去世はアポロンだとかエロスだとか、そういった類いです。ところが教祖と対立したりすると、過去世が別の下劣なイメージの人物等に変更されることがあります。きょう子氏の過去世は後に、実は「裏切りのユダ」だったことにされました。

 過去世が変わってしまう時点で、霊言の内容が正しくなかったということではないのか。いえ、それは幸福の科学への理解が足りません。「だって霊が言ってるんだもん」式の発想で忖度するなら、「霊が、前はああ言ったけどホントはこうなんだと言ってるんだからそうなんだ」で解決です。

 霊言の基本設定が正しいという前提に立つ限り、どうとでも言えてしまいます。

 霊言の内容を一つ一つ検証し、矛盾点などを探し出すことはできます。しかし矛盾点についてすら「だって霊が言ってるんだもん」で正当化してしまう霊言を、客観的にインチキであると証明するのは至難の業です。

 基本設定がインチキであると客観的に証明するためには、「霊など存在しない」なり、あるいは「百歩譲って霊は存在すると仮定しても大川隆法の能力はニセモノだ」なりを証明しなければなりません。できるのは証明ではなく、「こんなテキトーなもん信じるのアホらしい」といった類いの評論くらいでしょう。

 霊言が真実であると証明することは不可能です。だから2014年に「幸福の科学大学」は不認可にされました。しかしインチキであるということを証明するのもほぼ不可能です。宗教ってそういうもの。

霊言本を読まずともインチキだと言えるようになった

 ところが、今回の周庭氏の霊言をめぐって、幸福の科学は霊言の基本設定を崩壊させる声明を公式に発表しました。霊言の基本設定は霊言を正しいと言うための唯一の拠り所です。これが崩壊したので、個々の霊言を精査するまでもなくインチキだと言えるようになりました。実に画期的な出来事です。

 もともと幸福の科学の設定では、こう書かれています。

幸福の科学公式サイト
人間には、一人にひとりずつ「守護霊」がいます。「守護霊」は、地上に生きている人の「潜在意識」であり、生きている人の「本心」「本音」そのものです。
(略)
生きている人の守護霊霊言を行うと、まるで本人そのもののような立場で語ることが多く、守護霊でありながら、自分が守護霊であると分からず、「本人」だと思い込んでいる場合もあるほど、本人とほとんど一体化しているのです。

 守護霊霊言とは本人の本心・本音であり、守護霊は本人とほとんど一体化しているというのが、従来の基本設定でした。ところが周氏から抗議を受けると「本人の言葉じゃない。守護霊の言葉だからいいんだ」という設定に変わってしまいました(「幸福実現NEWS」特別号に関する周庭氏への対応について(ご報告))。

 ちなみに、周氏の抗議に幸福実現党がこのような回答をした後に幸福の科学が出版した周氏の霊言本『自由のために、戦うべきは今 習近平vs.アグネス・チョウ 守護霊霊言』には、霊言について〈本人の潜在意識にアクセスしたものであり、その内容は、その人が潜在意識で考えていること(本心)と考えてよい〉という説明が掲載されています。

 これらは霊の言葉ではなく、声明文や書籍で教団の言葉として発表されているものです。「だって霊が言ってるんだもん」ではありません。

 霊言を正当化する唯一の根拠が「基本設定が正しい」という点にある以上、ご都合主義で基本設定が変わってしまうなら客観的に見てインチキです。もはや霊言本を読むまでもありません。

カルト批判と教義否定とは違う

 長々と書いていますが、無駄な理屈です。霊言がインチキだなんてことは、こんな理屈をこねなくてもみんなわかっていることです。

霊言デタラメ

 ぼくがこれまで霊言をインチキだと断言せずにいた点には、インチキであるとの客観的証明が困難であること以外に、もうひとつ重要な理由がありました。それは、原則論としてはカルト問題とは教義が真実であるかどうかの問題ではなく、カルト批判は必ずしも教義否定ではないという点です。

 「カルト問題」への取り組みにおける「カルト」とは、違法行為や人権侵害を行う集団を指す言葉です。「間違った教義や思想を信じる集団」ではありません。

 インチキなら詐欺ではないのかと思う人もいるかも知れません。通俗的な言葉としての「詐欺」を指すのであれば間違いではないかもしれませんが、法律上はちょっと違います。この辺りはまた別の話になるので、興味のある人は調べてみてください。

 有り体に言えば、どんなに間違ったバカバカしい信念を持っていても、違法行為や人権侵害がないなら「カルト」として扱われることはない、ということです。これは信教の自由や思想信条の自由を否定せずにカルトの問題を扱う上で、絶対にブレてはならない重要な考え方です。

 なのでぼくは極力、幸福の科学の信者の皆さんが信仰している教義をインチキだとか言うことを避けてきました。ぼくがこれまでやってきた幸福の科学への批判は、霊言という宗教儀礼を使って敵対者を中傷する行為や、信者の恐怖心を煽って献金や伝道活動に邁進させる手法も含めた金銭や労働力の収奪、幸福の科学学園(中学高校)等での2世信者の扱いといった人権に関わる部分についてのものです。

 もともと、存命中の有名人に対する名誉毀損なり侮辱なり、あるいはパブリシティ権侵害的な何かなり、霊言の内容によってはターゲットにされた人々への権利侵害的な側面はありました。2011年に大川隆法が妻・きょう子氏との離婚騒動のさなかにきょう子氏の霊を呼び出したと称して誹謗中傷したことが、ぼくが幸福の科学を「カルト」と断定するようになったきっかけでした。霊言を問題視しつつ、その真偽を論点にはしないというのが、これまでのぼくの姿勢でした。

 これに対して香港をめぐる今回の霊言は、人命にすらかかわりかねない問題を引き起こしています。こうなると霊言そのものを批判する必要がより一層高まります。

 カルト批判は教義批判ではないというのが基本ですが、実際問題、カルトが引き起こす問題は教義によって推奨あるいは正当化されているケースが少なくありません。教義が正しいか間違っているかは別としても、具体的な人権侵害行為を支える論理としての教義への批判は、言うまでもなくカルト批判において欠かせません。

 大川隆法の霊能力が本物だと仮定しても、降霊中も大川隆法の意識は失われておらず大川隆法の言語中枢を通じて霊が発言しているという霊言の基本設定があるのだから、霊言の内容については大川隆法が検閲可能です。ならば、周庭氏の命を危険に晒すような内容の霊言を発表した責任は、大川隆法にあります。

 つまり霊言の基本設定を正しいと仮定した場合でも、霊言は人命をも脅かす有害なもので、その責任は大川隆法にあるという点はゆるぎません。しかも前述のように、教団の公式声明によって霊言の基本設定は崩壊し、インチキであることが明白になりました。

 いま幸福の科学は、インチキな霊言に基づいて香港民主活動家の命を危険にさらしながら、「香港革命は神の革命だ」などと言って香港民主化運動にちょっかいを出しています。幸福の科学では海外での民主運動などを支援することで影響力を強め、日本で革命を起こし大川隆法を頂点とする宗教国家を樹立することを目指しています。

 もちろんそんなことができるはずがありません。しかし、かつて教祖を日本の王様にしようとしたカルト宗教が何をしでかしたか、皆さん御存知ですよね。野望が達成されなくても、達成しようとするプロセスとしてオウム真理教のによる殺人やテロは起こっています。

 いま霊言のインチキさと有害さがここまでリンクした以上、そのことを積極的に断言する必要を感じています。

 教団は、守護霊は本人の本心であるという触れ込みで霊言映像を信者に5,000円で視聴させたり千数百円の書籍を何冊も買わせたりしてきました。なのに「守護霊霊言は本人の言葉ではない」などと言い放つなら、信者すらも騙しているということではないでしょうか。

 幸福の科学の問題に気づいて脱会した人達を含めて詳しい人達から見れば、「何をいまさら」な話ばかりだと思います。

 いま教団の外から見える公式発表だけを根拠にインチキと言えるようになったということは、これまで長い間、幸福の科学を批判してきた人たちの正しさを誰でも容易に確認できるようになったということです。

 先日、日刊ゲンダイが「幸福の科学大学」が近く再申請予定であることと、萩生田光一文部科学大臣との関係の危うさを報じました(萩生田文科相の後押しで「幸福の科学大学」ついに開学か)。宗教系大学だから問題なのではありません。このようなインチキな霊言で信者を支配し、日本社会をも支配しようとしているカルト集団による大学を認可していいのか、という問題です。

 大学の問題については、また別の機会にいろいろ書きたいと思います。

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