note神社

削除記事復活! note事務局様、神対応

 先だって、幸福の科学に関するぼくの記事をnote事務局様が削除した件ですが、4月26日、記事が復活しました。しかもnote事務局様からは非常に丁寧な謝罪に加え、同様のミスを防ぐための社内体制の変更という、こちらが要求してもいなかった内容のご連絡までいただきました。

 ぼくとしては、感謝はもちろんのこと、尊敬の念すら抱くほどの神対応です。ざっくりとですが順を追って経緯をご報告したいと思います。表現者の権利をきちんと守ろうとしてくれるnoteは、表現者には嬉しい希少なサービスなのかもしれません。

■発端は幸福の科学からの抗議

 削除された記事は、「藤倉容疑者の本心(霊言ではありません)」というタイトルの記事です。幸福の科学の施設への建造物侵入容疑でぼくが書類送検された件について、経緯の説明や幸福の科学の施設内の実態などをリポートする内容でした。

 その中で、幸福の科学の御本尊である「エル・カンターレ像」の写真(藤倉が撮影したもの)や幸福の科学が出版した書籍の一部を引用した部分がありました。これについて幸福の科学が著作権侵害に当たると主張し、note事務局様に対して「送信防止措置依頼」なるものを弁護士名義で送りつけてきました。

 送信防止措置というのは、要するに削除のことです。プロバイダ責任制限法という法律で、権利を侵害されたとする側がネット事業者に送信防止措置を申し立てた場合の、事業者側の対応が定められています。

 今回の(というか、たいがい「いつも」ですが)幸福の科学の申し立ては言いがかりに近いものでした。彼らが指摘していた「エル・カンターレ像」の写真は、ぼくや知人が施設を参拝した際の記念写真に写り込んでいるものだったり、あるいはその像を文章で評論するに当たって必要部分を引用として掲載したにすぎません。これは「写り込み」や「引用」として、著作権侵害とはされない形をとっていました。また書籍の一部についても、その内容を評論する上で必要な部分を部分を引用しており出典も明記しています(詳細は「幸福の科学からの削除要求の詳細わかりました」)。

 もともと、Twitter、Blogger、YouTubeなど、ぼくが文章、写真、動画を投稿する先々で幸福の科学は肖像権だの著作権だの言っては抗議して削除させてきました。なので今回noteに載せるに当たって、ぼくは著作権にも十分配慮し、違法な形にならないよう意識的に掲載していました。

■当初のnote事務局様の対応

 これに対してnote事務局様は当初ぼくに対して、幸福の科学から送信防止措置が申し立てられたという事実も、具体的にどの記事どの部分にどのような問題があるのかも示すことなく、規約違反だから削除するようにと通告してきました。回答期限はたったの3日間でした。

 ぼくは当初この通告メールを見落としていて、記事が削除され、note事務局様から「期日までにご対応頂くことができませんでした。運営事務局で削除致しました」というメールが来て初めて気づきました。

 プロバイダ責任制限法という法律では、送信防止措置の申し立てがあった時、以下のどちらかの場合であれば、ネット事業者がユーザー(発信者)の投稿を削除しても賠償責任は負わない、と定めています(第3条)。

(1) 権利侵害が明らかである場合
(2) ネット事業者が情報の発信者(投稿者)に対して、送信防止措置の申し立てで指摘されている問題部分を示し措置に同意するかどうか照会し、7日をすぎても措置に「同意しない」旨の返答がなかった場合

 ぼくの投稿は(1)に当てはまると言えるほど完全アウトな著作権侵害ではありません。またnote事務局様はどの記事のどの部分が問題なのかも示さない連絡しかよこさず対応期限も3日しかなかったので、(2)にも当てはまりません。つまり違法であり、賠償責任があるということです(詳細は「幸福の科学記事をBANされました」)。

 なので、ぼくは自分の記事が著作権侵害に当たらないことを説明した上で、以下のような趣旨の要求をnote事務局様に対して行ないました。

「削除した記事を回復させた上で改めてプロバイダ責任制限法に則った手順を踏むか、記事を削除したことによって生じる損害を将来にわたって永久に賠償し続けるかを選べ」

 note事務局様の当初の対応はネット事業者の中で特殊ではなく、YouTubeと@niftyを除いて、ほかの有名所のSNSやブログサービスの事業者はだいたい同じです。Twitterは事前に何の連絡もなく無断で削除し、いくら異議申し立てをしても無視されますし、FacebookやBloggerでは異議申し立ての方法した教えてくれません。FC2は、削除の通告はくれるのですが、ユーザーがその通告メールをどこかに転載するとアカウントをロックするというわけのわからないことまでします。

■この後が神だったnote事務局様

 正直、note事務局様の当初の対応から、noteもほかの有名ネット企業と同じか、ふざけんな、とか思っていました。ところが4月26日になって、note事務局様から意外な回答が帰ってきました。概ね、こんな趣旨です。

(1) 本日、記事を復活させた。
(2) 改めてプロバイダ責任制限法に則った手順で、抗議に対するあなたの回答をいただきたい。
(3) 弊社の過誤によりご迷惑をかけた申し訳ない。
(4) 今回の件を受け社内体制も変更し、対応の向上を確立させる。

 しかも、こんなそっけない文面ではなく、ムチャムチャ丁寧な文章でした。

 そして、実際にプロバイダ責任制限法の手順に則り、幸福の科学が送りつけてきた送信防止措置申し立ての差出人情報以外の全文もぼくのところに送られてきて、措置に同意するかどうかの正式な回答書の書式も送られてきました。これにぼくが記入して回答するというのが、プロバイダ責任制限法に定められた手続きです。

 ぼくはあまりに嬉しかったので、措置に同意するかの回答書は期限(7日間)以内に追ってお送りしますとした上で、「ありがとう、むっちゃ嬉しい、note利用してよかった、最高! これからも応援するから頑張って!」的な熱烈なラブレターを送りました。これにもまた、「こちらのミスにもかかわらず温かいお言葉をありがとうございます」みたいな丁寧なお返事をいただきました。

 実はnote事務局様からの上記の回答が届いたまさにその時、ぼくは幸福の科学の映画『さらば青春、されど青春。』のプレス試写を見ていました。幸福の科学の映画を見ると「奇跡」が起こるそうで、「がんが治った」などという信じられない(っていうか信じちゃダメな)体験談もあるほどです。今回のnote事務局様からの回答も、ぼくが映画を見たことによる奇跡なのかもしれません。主エル・カンターレに感謝します。

■この対応、何が凄いのか

 記事は復活しましたが、削除されないと決定したわけではありません。改めてプロバイダ責任制限法に則った手続きがとられた結果、やっぱり削除される可能性も理屈上は残っています。

 でもぼくは、プロバイダ責任制限法に則った手順を踏んでくれるというだけで、ものすごく嬉しいです。プロバイダ責任制限法は、有名ネットサービスの大半が無視しています。ぼくの知る限りでは、これを守った対応をしているのはYouTubeと@niftyだけです。ここにもうひとつ、noteという新たなサービスが加わったわけですから、喜ばないわけにはいきません。

 これは、ぼくに限らず他のnoteユーザーにとっても、大きな利益になります。自分の投稿に誰かから抗議が来ても、フェアに対応してもらえるからです。

 確かにnoteの当初の対応には問題があったと思います。しかし説明をしたら改めてくれたという点も、noteの凄いところです。前項で挙げたTwitter、Facebook、Bloggerなどは、ユーザーとの実質的なコミュニケーションを一切取らないクソ企業です。ところがnote事務局様は、ちゃんとコミュニケーションをとってくれたばかりか、それによる成果までしっかり示してくれました。グローバル企業と国内企業という文化や事情の違いもあるかもしれませんが、だとしてもnote事務局様のような対応のほうが常識的だし、ユーザー思いであることは間違いありません。

 ぼくは、何でもかんでもユーザーが好き勝手に表現できることが「表現の自由」だとは思いません。違法な投稿であれば、そりゃ削除されたり訴えられたりして当然だと思います。かと言って、抗議が来たというだけで根拠もなく一方的に削除されてしまうようでは、合法的な表現すら自由に行えなくなります。

 重要なのは、抗議してくる側と表現した側の双方の主張を検証して、フェアな判断をすることです。

 今回のnoteの件で言えば、ぼくの記事を削除しないと決め込んで幸福の科学の抗議をはねつけることがフェアなのかというと、そうではありません。双方の言い分を聞いてから検討するよ、という手順を踏むことがまず最低限のフェアネスです。

 フェアな手順を踏んだ結果、note事務局様が明確な根拠に基づいて「やっぱ削除すべき事案だわこれ」と判断するなら、それはもう仕方ありません。どうしても納得がいかず受け入れられないとなったら、note事務局様と言い合いをするより裁判所にお伺いを立てる(訴訟をする)べきなのだということでしょう。

■ネット事業者を守る法律

 note事務局様へのメールにも書いたのですが、上で書いたプロバイダ責任制限法の第3条は、ネット事業者に対して一方的に義務を課し罰則を設けるというたぐいではありません。権利侵害が相当明らかな事案でない限り、双方の言い分を聞くという最低限のフェアな対応さえすればネット事業者に賠償責任はないですよ、ということを定めている法律です。ユーザーからの損害賠償請求だけではなく、権利を侵害されたと主張する側からの損害賠償請求についても同様です。

 この法律に従って、権利侵害をされたと申し立てた人の権利とユーザー(発信者)の権利を両方尊重することが、ネット事業者自身の安全や利益を守ることにつながる、という仕組みです。

 ぼくは法律の専門家ではないので、プロバイダ責任制限法が不備のない素晴らしい法律なのかどうかはわかりません。しかし少なくともこうした仕組みというか発想は、よくできているのではないかと思います。

 今後、ほかのユーザーが同じような場面に出くわした際に、note事務局様が常に理想的な対応をできるかどうかまではわかりません。しかしユーザーの異議にも耳を傾け、ミスがあったとわかったら改めることができる会社やサービスは、個々のミスで否定されるべきではない大きな価値を持っていると思います。

 表現を不当に抑圧されることなく、他人の権利を侵害しない限り自由に表現できる場であり、そうやって自由に表現されたものを読んだり見たりできるサービス。今回のnote事務局様の対応には、そんな可能性を感じました。

 今回抗議してきた幸福の科学の教祖・大川隆法総裁は、地球至高神エル・カンターレ。そんな幸福の科学からの抗義に対して、神対応を見せたnote事務局様。

 ぼくはエル・カンターレもけっこう好きなのですが、今回のこの神対決では断然、note事務局様を崇め奉ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?