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後で効く 冷酒と 彫刻家の独り言

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彫刻家大黒貴之のオピニオンや独り言をまとめています
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専門家とはどういう人のことをいうのだろうか:あと「仕事中の彫刻家」のこと

彫刻家の大黒貴之です ある日ラジオから「専門家とはどういう人のことを言うのか?」という話題が聞こえてきました。 その話によると「専門家とは自分に何ができて、何ができないのかを知っている人」だといいます。 なるほど、それが結果的に1つのことに特化していくことだというのは一理あるなと思いました。 僕が彫刻家と言い始めたのは2002年からでした。ベルリンのギャラリスト、セミヨンさんが「君は彫刻家なんだよ」と言ってくれたのが、大きな切っ掛けの1つでした。 また関西のある彫刻

縁起の間 -⽩梅・⽯楠花・彫刻・⾦⽊犀

彫刻家の大黒貴之です。 2020年、東京のMARUEIDO JAPANで開催された個展に合わせて執筆したテキスト「両義の間にある揺らぎ「間-振動」-⾃然 時間 ⾔葉 数字 縁起 ⽣命彫刻、ドローイング、インスタレーション 」から抜粋したものです。 ・・・・・ 10 代、20 代の頃は、⾃宅にある庭の樹にはそれほど愛着も無かったが、近年、何故か急に⼼を惹かれるようになっている。 中でも⽩梅と⽯楠花、それと⾦⽊犀の 3 本の樹々が特に気に⼊っている。⽩梅については、私が幼

アーティストに必要なのは抽象的思考?具体的思考?

彫刻家の大黒貴之です。 「あなたの話は抽象的でわかりにくいよ」 或いは 「あなたと話していると何言っているのはさっぱりわかんない」 抽象的なイメージを言葉に乗せて人に伝えることはなかなか難しいことですし、アートの世界でも「抽象はわかりにくい」という言葉はこれまで何度も聞いてきました。 何かを商品化することやメッセージを伝える時に「わかりやすい」ことはそれだけ多くの人に届きやすいということです。 確かに、伝達手段としての「わかりやすさ」は大切なことです。 細谷功氏

テーブルに「つく」こと、或いはそこから「たつ」こと

彫刻家の大黒貴之です。 「雑感ノート-20190107-」より インターネットが一般向けサービスとして日常に張り巡ったのは確か1995年頃だったと記憶している。 それ以前、情報はテレビ、新聞、書籍などのメディアか人からの見聞など、アナログなものだった。今のようなSNSなどもなかったし、また情報も簡単に手に入る環境でなかった。 学生の頃、「現代アート」とは一体どういうものなのかよくわかっていなかった。美術雑誌やそれに関連する本はあったが、なんだかよくわからない小難しい表

アーティストのセルフブランディング : 作家ができること、できないことを考える

彫刻家の大黒貴之です。 これからは個人の時代だと聞くことがしばしばありますが、これは同時に個人で全ての責任を負うことを意味していると解釈しています。 ですので、アーティストも自身で情報を発信したり、記録を残すことは少しずつでもやっておくほうがいいのではないかと考えています。 その意味で、情報が整理されて蓄積されいくWebサイトやブログ、またnoteのようなプラットホームはとても価値あるものだと思います。 一方で、1人でできることには限界があることもまた確かなことです。

現代アートの作家として生きていく人、やめていく人

彫刻家の大黒貴之です。 日本にはたくさんの芸術・美術大学、或いは芸術学部があります。 そこから毎年数多くの学生が卒業していきます。 学生時代にこんな話を聞いたことがあります。 「作家(アーティスト)になる志を持って学校を卒業した学生たちは、 5年後、100人中10人になり、それからまた5年後には半分になる」 つまり、22歳で大学を卒業したとして、32歳になるときには、95%の卒業生が作品をつくることをやめているというのです。 経済的、もしくは環境的にやめざるを得な

芸術家に必要な3つの大事な要素を考える

彫刻家の大黒貴之です。 アート作品はいかにして後世にまで残っていくのでしょうか? 「巨大アートビジネスの裏側-誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか」(石坂泰章【著】)によると作品が制作されてから60年後が、その大きな節目になるのだといいます。 それは以下のようなプロセスを踏んでいくそうです。 1.ある人が最初に作品を購入する(購入から最初の1ヶ月後にも鮮度が保たれているかどうか) 2.作家の世代が第一線から退く(作品制作から約30年後の評価) 3. 作品を購入

【信用と信頼】 アーティストにとっての「信用」とは何だろうか

彫刻家の大黒貴之です。 アーティストというと
好き勝手に振る舞う世間離れした人のように
思われることも時にあるかと思います。 確かに、世間を見渡すといろいろな人がいます。 あの人は信用できる人だ。

 あの人のいうことは信頼できるので間違いない。 浮世離れしているようなイメージの作家(アーティスト)の活動にも
この信用と信頼というものが大きく関係しているように映ります。 「信用」と「信頼」の違いはどういうものでしょうか? 「信用」とはその人がこれまでに培ってきた