映画感想【ザ・ゴーレム】
17世紀中期。疫病によって打撃を受け、侵略者の脅威にさらされるユダヤ系コミュニティに暮らすハンナは、カバラの秘術を使って泥人形に命を与えた"ゴーレム"を生み出す。少年のような外見の"ゴーレム"にハンナは強い結びつきを感じるようになるが、実は彼女の想像をはるかに超えた邪悪で危険な怪物だった!
歴史ホラーというものにあまり触れて来なかったので中々に新鮮な気持ちで観ていました。
このゴーレムという名称は皆さん1度は耳にしたり目にした事があると思います。ゲームやマンガでもよく使われます。
特徴としましては土や石で出来たとにかく大きな身体に強大な力を持つモンスター。というのが一般的なゴーレム像で、ましてやそれ以外の姿が想像付かないのが普通じゃないでしょうか。
調べた所によると、「ゴーレム」とはヘブライ語で「胎児」を意味する名称のようで、指導者の元、純粋に動く姿からその名が付いたみたいです。
今作はそんな大きなゴーレムが大暴れするようなパニック映画ではなく、疫病、他宗教徒からの圧力にさらされた小さな村に住む悲しみを抱えた1人の女性ハンナの話でした。
元々ハンナは1度息子を亡くしているので、次にもし、子供が出来たらまた同じ悲しみがやってくるのではないかという事で夫との関係が上手くいってませんでした。
時代もあり、当時女性は子どもを産まないと意味がないと辛辣に扱われていました。
悲しみを背負いながらも生きていくハンナに更に追い討ちがかけられていきます。
他宗教徒からの圧力により村の存続に危機に立たされてしまうのです。
これに対抗する為、ハンナはカバラの秘術でゴーレムを生み出す事を選択する事にしたのです。
ハンナは村に降りかかるネガティブな状況の中で必要だと感じゴーレムを生み出しました。
ハンナが生み出したゴーレムは少年のような姿をしていました。
ただ、姿は少年のようでも力は強大で人を簡単に破壊してしまいます。
それを見た村人が脅威に感じ、ゴーレムを始末する様言っても、ハンナだけはゴーレムを守りました。
それはもしかしたら亡くした子供の幻影をそのゴーレムに移していたからかも知れません。
だから少年の姿で生み出された。その姿はいつまでもハンナの心の中にあった願いの形だったのかと感じました。
言葉も発さなければ感情も示さない。自分に危害を加える人間とハンナが危機に陥った時に破壊行動に移るだけ。
それにも関わらずゴーレムとの特性として、主との一心同体。これによりハンナは強い結び付きを感じ、ゴーレムに対して自分の子供のような愛情を与えたのでしょう。
物語最後にハンナが猛威を奮ったゴーレムに対して取った行動は、自分の息子への責任感にも似たものだったのかも知れません。
最後まで愛情深く向き合ったハンナはこれで悲しみの壁を1つ越えた強い母親になったかと思います。
「ザ・ゴーレム」を通して見えた母親の愛情。
どんな状況でも守り続けた強い女性が観れた作品でした。
ですが、ホラー映画です。これはどこがホラー部分なんでしょうか。ゴーレムが人を殺していく所?
そんな単純なものではありません。
憶測ですが、ハンナがゴーレムを生み出したのは村の為ではなく、もう二度と死ぬ事のない自分の子供を欲しかったエゴから来たものではないかと思います。
ですが、何か生み出すにはそれなりの理由がないとダメでした。カバラの秘術でゴーレムを生み出すという事は禁断のものであって誰もが忌み嫌い避け続けた事です。
そこに他宗教徒からの圧力が加わった事で否応なしに呼べる状況が出来たのです。ハンナはチャンスを掴んだ訳ですね。
見事生み出す事に成功したハンナはそれは愛情を注ぎます。
どんなに周りの人間が殺されても庇い続ける姿は裏返せば狂気そのもの。
そう、この作品には亡くなった息子の代わりに生み出したゴーレムを愛するばかり周りが見えなくなった女性の狂気さが見え隠れするホラーでもあったのです。
美しいBGMやカット、アングル隙間から滲み出る人間の狂気。
これが「ザ・ゴーレム」のホラー要素なのかも知れないと感じました。
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