マーケティングとは「ヒトを不幸にする仕事」である
ポエム。
スキ消費と座標消費
ここ最近、「モノを売る」ことについて、いろいろ考えている。世の中の消費活動は二通りあると思っていて、一つはスキ消費、もう一つは座標消費だと思っている。
スキ消費:その名の通り、「あ、これいいな!買おう!」ってやつ。
座標消費:みんながあこがれていて、基準があって、その基準の数値にたどり着こうとする消費。
で、自分自身がマーケターをやっていて、この「座標の消費」は根深い問題だと思っている。
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20世紀以降、ものにあふれてどんどん豊かになっている。なのに、人の幸福の度合いは変わっていない。なぜなのか。
それはモノで充足しなくなったヒトに対して、常に新しい「不足感」を与えることが、マーケティングになっていたからである。だからヒトは常に満足しないように仕向けられていて、幸福になることはない。
「あれが足りない」「これが足りない」、そうヒトの心を操作して、マーケターは市場を広げてきた。そして本当に欲しいものなんてない人達に、「これが欲しい」と思わせることで、その座標移動をさせる消費活動を行ってきた。「年収1000万円にする方法」「フォロワー数を1万人にする方法」、そういった本来欲しくなかった数字を、比較可能なようにして、煽ってきた。
例えば、ついさっき見つけた、クレジットカードの広告。クレジットカードの機能では差別化できないから、「異性によく見られていない」というメッセージで、人に不足感を与えている。
ぶっちゃけクレジットカードなんて何使っても大して変わらない(てかそもそもキレイなねーちゃんの視線はクレジットカードでお金払う前に決まっているじゃないか説)にも拘わらず、この「モテなきゃ!」という不足感を作ることで、クレジットカードの購入へと導いている。
で、これは実際にこれはお金になる。不足感を覚えさせられるからだ。ボードリヤールは、このように言っている。
「消費者は自分で自由に望みかつ選んだつもりで他人と異なる行動をするが、この行動が差異化の強制やある種のコードへの服従だとは思ってもいない」
まるで自ら選んだように思えても、このチャンネーの記事を読まない限り、クレジットカードなんて必要なかった。クレジットカードはそもそも欲しいものではなかったはずだ。でも、買ってしまうのである。この行動が差異化への強制やある種のコードへの服従をさせてしまっているのである。
均質化していく世界
2010年代。もうほとんどの商品は出尽くして、製品もどんどん均質化していく。そういった時代に、マーケターができるのは製品を変えずに、いかに人を不幸にさせて、買わせるかなのではないかと思う。でも、それって本質的に価値があるのだろうか。本当は必要ないものを、虚構の不足感を作りあげて売って、得られるお金に、本当に価値があるのか。
2010年代に入ってもこのままじゃ、2020年代もたぶんおんなじ感じで幸せにはなれない。疲れてしまうのだ。せっかく高いお金で服を買っても、みんなの憧れがすぐに変わって結局インスタ映えスポットにお金を払わなければいけない。ほかのヒトが別のものにあこがれた瞬間、それは無価値なものになる。
さらに、みんなわかりやすいような差異を求めた結果、ありとあらゆるものが均質化していく。それはたぶんモノだけではなく、ヒトもそう。ソーシャルの肩書も、RT数やフォロワー数を目指している人はどんどん均質化していく。まるで何かの不足感をみんな感じながら、それを追い求め、没個性的なアカウントになっていく。
別に年収1000万円というステータス自体、「本当に欲しいモノ」ではなくて、他人が欲しがっているモノにすぎない。にも拘わらず、みんな欲しがるから欲しくなる。そして、同じゴールを目指して均質化していく。
そうそう、合理の世界はたぶんもっと均質化する。そして広告クリエイティブも、デザインも、ある程度は均質化していく。Adobe Senseiなんかみてもそう思うし。
「スキ消費」を増やす
そんな時代に、我々は何を売ればいいのか。ここ最近ずっとそれを考えていたんだけど、たぶん「スキ消費」を増やすことなんじゃないかと思う。
みんなのあこがれの目線を消費しなくても、自分自身が「これいいね!」と思えるような消費。それを増やしていくのが幸せに繋がるんじゃないかなと思う。そして、そういうスキと思えるのは、哲学が大事なんだと思う。哲学がなければ、スキにはならない。
哲学が必要になる時代
だから、いま一番の競争の源泉は、画一化のための能力ではなく、哲学だと思う、というか思いたい。画一化は、Googleさんとかがきっとどこかがまとめてやってくれる。
画一化されきった後の世界で、本当に大事になってくるのは、哲学なんじゃないかと思う。そしてこの哲学に対して、「スキ」の消費を増やすことこそ、重要なんじゃないかなと思った。
※元ツイート
参考文献
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