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あなたは誰のような声になりたい?

まだ僕がスクールと契約して講師をやっていたときに、よく生徒である皆さんに投げていた質問だ。

「誰のような声になりたくて、どんな歌唱をしたい?」


大抵の人はそんなにすぐに出てこない。

だから、改めてどんな声になりたいのかを考えるいい機会になる。そして、そうすることで自分とその目標との距離もある程度は見えるので、トレーニングの長期的プランを立てやすくなる。目標モデルと比較して自分の足りないところを考えたり、モノマネしてみることもとてもいい結果につながることが多い。


しかし、今となってはこの質問を本気で投げかけていたことに少し後悔している。

この質問は、現実を見て欲しいがために投げかけているものなのに、逆に現実を錯覚させてしまうことがあった。


目標やゴールを設定することは大切なことだが、それにできる限り早く、そして楽してたどり着きたいと考えてしまうのが人間の性だ。

これが意外と厄介で、身体の筋力やバランスなどの繊細なものを変えていったりトレーニングをすることが、長い期間と質の高い内容を要するということを理解していない人にとっては、その目標やゴールを早く掴みたくて仕方ない!というふうになってしまうのだ。

長期的なものを共有したつもりだったのに、いつしか「いつになったら彼のような声が出ますか?あと3ヶ月以内に可能ですか?」みたいな質問が出てきてしまうのだ。

気づいたら長期的な目標がすぐそこまできてしまう。

さらに、まだまだ遠い目標に対して無理やり寄せにいこうとしても、大抵の場合は必要ない癖がついて逆効果になる。



例えば、レッスン内で「ba ba ba」という特定の母音子音の組み合わせで、hiCまで高音地声発声(≒Belting)ができたとしよう。

じゃあhiCまでの音域の曲をすぐに歌えるのか?

もちろんそんなわけがない。

母音や子音、メロディ、リズムが変われば話が全然変わってくるであろう。

一旦、素晴らしい声、新しい声を見つけてからそれを曲に活かすのが最も難易度が高い。

だから、誰の声になりたいのかを考えるよりも、まずは徹底的に発声の自由度を手に入れる方向でトレーニングすべきだと今は感じる。

いい意味で、変な期待をさせないことって大事なのかな、とか思っている。


それと並行して、歌唱技術系のトレーニングは取り入れればいいし、たくさんのシンガーの声を聴いて自分の中で選択肢の幅を広げておくことも大切だろう。

大事なことは焦りすぎないこと、早く掴もうと急ぎすぎないこと。

でも、適度に焦って早く掴もうとしてみること。

発声練習だけをやらないこと。

歌唱練習だけをやらないこと。


全部うまくバランスをとって。

多すぎず少なすぎず、やりすぎずやらなすぎず。

次、これ「多すぎず少なすぎず、やりすぎずやらなすぎず」をテーマにして書いてみたい。発声はこれで割となんでも説明できる説があると思っている。


※ご注意

科学的情報と、レッスン経験などを元に記事を作成しておりますが、まだまだ世界的に見ても研究段階なのが発声という分野です。真実が保障された物ではないことをご了承ください。一つの見方、考え方であると捉えていただけると幸いです。

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