ナイジェリアのテスターをもっとダイジョウブにしてみた
こんにちは,QAエンジニアの上野です.今回は,ナイジェリアのテスターと一緒にテスト設計をしている事例について紹介したいと思います.
ナイジェリアとDAIJOBUの存在意義
DAIJOBUには,日本のほかにナイジェリアにも仲間がいます.なぜナイジェリアなのか,という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません.単純に弊社CEOの山中が猛烈なナイジェリアファンであることも理由の一つですが,もっと戦略的な理由があります.
アフリカはよく人類最後のフロンティアと呼ばれますが,中でもナイジェリアは人口が急速に増えていること,平均年齢が非常に若いことから今後の飛躍的な経済成長が見込まれており,100年後にはGDPが世界上位に食い込むと予想されています.また,自国の通貨の不安定さがBTCやUSDCなど仮想通貨の利用を促したために,多くの若者が仮想通貨やweb3プロダクトに対する知識を持っているという現状があります.一方で,33.3%以上(2020年現在)と非常に高い失業率は社会課題であり,雇用を作り出すことは大きな社会貢献となりえます.そのため,web3領域という得意分野を活かしてナイジェリアでの雇用を創出することはDAIJOBUの存在意義の一つであり,今後グローバルな市場で戦っていくうえでの大きな布石になっているのです.
弊社CEO山中のナイジェリアに対する熱量については,ぜひこちらの記事を読んでみてください.
DAIJOBUでは,ソフトウェアテストに興味があるナイジェリアの人々に対して,一定の採用基準,採用後の教育と試験の合格水準を設けて,高い品質水準に応えられるテスター(※1)の育成プログラムを運用しています.さらに,最近ではテスターをQAエンジニア(※2)に育成する試みが始まり,私はナイジェリアの優秀なテスターを教育するという大役を担うことになりました.
(※1)弊社ではテスト実行をメインで担当するロールまたはそのメンバーをテスターと呼称しています.(※2)弊社ではテスト計画〜設計,モニタリングとコントロールをメインで担当するロールまたはそのメンバーをQAエンジニアと呼称しています.
テスターをもっとダイジョウブにする取り組み
この取り組みのきっかけは,ナイジェリアチーム立ち上げ担当から「ナイジェリアのテスターをQAエンジニアに育成したいと考えているが,できると思いますか?」と相談を受けたことでした.
私はその時,時間はかかるものの育成は可能だと答えました.DAIJOBUのナイジェリアチームでテスターとして採用される人は,高い正確性や注意力を備えており,成長意欲が高いうえにドメイン知識も豊富だからです.最初はしっかりと考え方やプロセスの意図を教え,足りないところのフィードバックを繰り返しながら少しずつ彼ら自身でできることを増やしていけば,面白さに気づいてくれる可能性は大きいでしょう.といっても私にできることは,ただテスターの成長意欲を信じて,彼らが納得できるまで一緒に考え抜くだけです.早速テスターへのインプットを始めることになりました.
いざ,テスト設計
テスト対象には,とあるweb3プロダクトを使用することにしました.書き起こされた仕様書がなかったのでテストベースとして利用できるのはプロダクト自体であり,あとは私たちのドメイン知識や経験に頼るしかありません.まずテスト対象のプロダクトについて説明したあと,「他の類似プロダクトから類推して,このプロダクトは何を実現する必要がありますか?」「ユーザーはどんな使い方をすると思いますか?」という問いに対して,思いつく限り自由に出してもらいます.質問が出れば書き留めておいてもらいます.
これまでの自身の経験や遭遇した不具合から自由に発想し,大量の観点がでてきました.この段階の中間成果物を説明してもらいながら確認するのは,お互いにとって非常に勉強になります.なぜそれが大事なのか,自分だったら思いつけるか,逆に自分だったらこんなことを追加する,などの会話は誰としていても楽しいものです.漏れやダブりを確認し,まとめられるものをまとめて,優先順位の低いものを削り、大まかに粒度をそろえます.ここまでできれば,あとはテストケースのフォーマットにしたがって観点を漏れなく記述してもらいます.
この間何度か直接のフィードバックと机上レビューをはさみましたが,それ以外でもわからないところをどんどん聞いてくれるので進めやすく感じました.この取り組みでテストの面白さが少しでも伝わっていればいいなと思います.何より私自身も英語でテスト設計を教えるのは初めてで,それ自体がとても面白い経験でした.
直面した課題
もともとDAIJOBUはフルリモートなので特に違和感なく進めることができたものの,ナイジェリアでは停電がよく発生し,一度など真っ暗な中でミーティングに参加してもらったこともありました.回数を重ねていくとインフラ面の脆弱さが課題になるかもしれません.こういうところも含めてダイジョウブにしていければいいなと感じた瞬間でした.
イギリスにいたときはナイジェリアとの時差はなかったのですが,今後日本で同じ取り組みをする際は時差によりどうしても確認やフィードバックが遅れることもありそうに感じました.また,特に初期の段階では英語対応できるQAエンジニアの少なさが課題になるかもしれません.この取り組みをスケールしていくためには,なるべく日本対ナイジェリアのような構造から脱却し,ナイジェリアチームで完結できるようにしたほうがよさそうです.ナイジェリアチームのなかでQAエンジニアへ着実にステップアップしてもらい,彼ら自身がまた教育する側に回れるような仕組みづくりが必要でしょう.
今後やっていきたいこと
上記のような課題はあるものの,ナイジェリアのテスターのドメイン知識の深さと意欲の高さに,課題を遥かに上回る大きなポテンシャルを感じました.
DAIJOBUのナイジェリアチームが今後の海外展開の重要な礎となるよう,技術面から支えていきたいと思います!
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