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音楽の原風景 〜その6〜

前項でザックリではあるが学生生活におけるサークルでのバンド活動を入学から卒業まで掻い摘んで書いてきたが(活発な課外活動的なこともあったがこれはまたいつか)、ここからはしばらく細かいところに触れながらバンドとアルバムを紹介していくことになる。

今回はSLAYER。今では前回のJudas priestと同じくらい敬愛しているが出会いは大学一年時の学祭を控えた夏合宿、宿泊部屋での同期モトノリとの一言である。

モ「今プロに誘われたスレイヤーまじでしんどいわー」

正直何言ってんのかわからなかった。それもそのはず、大学入学即メタルの洗礼を浴びただいじ少年はまだ『SLAYER』を知らなかったのだ。なぜか付き合いで合宿中のスタジオに行くことになり、そして担当のベースの先輩がなぜか不在で、そしてなぜか今プロに「4弦の開放を16分で良いからドラムに合わせて弾いてて」と言われ数分で音を上げることになる。弾いた曲はかの有名な『Angel of death』だった。

いろいろどーこー言う前に「なんて曲だ!」と言うのが正直なところだった。良いことも悪いこともゴッチャに混ざり合った感情と衝撃が頭の中を駆け巡る。

その後同期のよしみもあり、合宿が終わってからも学祭へ向けたスタジオ練習に見学に行くことが多かった。その中で他の曲も知っていくことになり迎えた学園祭。我が軽音楽部は教室をさながらライブハウスかの如く、本格的な音響、照明機材を借り学生たちの手でライブを全て作り上げていく、高校卒業して一年も経っていない人間にとってとんでもない世界が広がっていたのだ。お世話になりましたシャム猫カンパニーさん。

壊したら1000万円の弁償と言われ飲み食い厳禁のルールを敷かれた48チャンネルのPA卓に大音圧のスピーカーや録音機材、ストロボやピンスポなど当たり前の照明機器が続々組み上げられていく姿に、机や椅子を崩し会場設営をしながら心躍らせていた。

そしてその日のミーティングにてPA係になることになった。

コードの巻き方はもちろん機材の扱い方や音の作り方などはここで勉強することが多かった。そして一番大きいのはいろんな音楽を聴けること。機材をいじりながらコピーとは言えサークル全ての出演バンドを見聞きすることは大きな経験になったと今振り返ると感じる。(四日間で延べ約40バンド。これを四年間)

話が逸れたが学祭でのそのSLAYERコピーバンド。もちろん本番はベースを担当する先輩が弾き、俺はPA卓の前に陣取っていたのだが、開始早々…



ゲージが全てレッドゾーンに振り切った。


音圧など全てとんでもないことになるのは覚悟したが、隣に座る先輩で当時スタジオでバイトしていたK先輩も破壊と弁償という惨事と隣り合わせの顔を真っ赤にしてPA卓のツマミをいじってどうにかゲージを抑え込もうとしていた。

とりあえず無事に機材を破損することなくそのバンドも、その年も、卒業するまで終えることが出来たが衝撃は凄かった。その興奮そのままに音源を買ったCDはStain of mindのシングルカットにライブ音源が4曲入ったCDだった。

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比較的グルーヴに特化したこの頃の楽曲で好きな曲ではあったが、目当てはもちろんこのCDに収録されていたライブ音源の「Angel of death」に「Raining blood」だ。もちろん「Mandatory suicide」や「Chemical warfare」も後々好きになるのだが、なぜこれを買ったのか。


安かったからだ。


それだけ『REIGN IN BLOOD』の衝撃を早く味わいたかったのだ。そしてその二曲のライブ音源はアルバムへの執着に拍車をかけた。

そんなこんなでやっとたどり着いた名盤『REIGN IN BLOOD』、今回の本題となるスラッシュメタル、いや全てのメタルの名盤である。

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とにかく速い。曲のテンポもプレイも音数も、そして30分ちょっとで聴き終わる収録時間も。しかしそんな短い収録時間に対して濃密にも程があるほどどこを切っても徹頭徹尾スレイヤーなのである。SLAYER is SLAYERなのである。そして攻撃性や残虐性、ドロドロした世界観を一気に駆け抜けるように聴ける激烈さ。全てが完璧だった。よく「これを聞けないならメタルは聞けない」「スレイヤーを知らずしてメタルを語るな」とか色々言われるほどヘヴィメタル史上屈指の誰しもが通るマスターピースだ。(全部アルバムを持っていても絶対これが最高最強のアルバムだと思う)

そんなスレイヤー。初めて生で観たのは今のLOUD PARKの前身だったイベント『Beast Feast 2001』だった。PANTERAとのダブルヘッドライナーで二日間に渡って開催されたライブイベントの初日のトリで地獄のような楽しさと身体の疲労と痛みを味わったことは今でも忘れない。そのイベントに一緒に行ったサークルの先輩方と飲みに行くエレベーター内でRaining bloodのイントロの3連タムを真似して地面を踏み鳴らしエレベーターを止めたくらい頭がバカになっていた程だ。(壊してません)

それからというものスレイヤーの来日公演にはほとんど行った。一度だけたどり着いた最前は良い意味でも悪い意味でも生き地獄を身体で体感した。一流どころの海外バンドの前線の激烈さを体力面でも安全面でも民度でも治安でもいろんな部分で味わった(悪いところを言えば頭にヒザが入って脳震盪起こしたり、飛んできたペットボトルにアレが入ってたり、ダイブして流れてくる人を下からボコボコ殴ってるのがいたり…etc)。でも毎回Tシャツは絞れるほどビチャビチャで、身体がボロボロになるくらいメチャクチャ楽しかった。War ensembleでは全力疾走で走り回り、久しぶりに聞くBlack magicのイントロでうっかり叫んだり、Discipleでは「God hates us all!!!」と叫び散らかしたり、その他の曲でも沢山。

惜しむらくは去年のDownload Japanが最後の来日公演となってしまったこと。11月までの活動を示唆していたため宣言通りの活動停止ではあるが途中で亡くなったギタリスト、ジェフ・ハンネマンを亡くしたことや、ドラムのデイヴ・ロンバードを観れなかったのが惜しい。もちろん最後を飾ってくれたゲイリー・ホルト、ポール・ボスタフには最高の賛辞を送りたい。

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特に最後の公演はPA卓の真後ろ、開けた景色で観れたことは最後の最高の思い出として死ぬまで忘れることは無いだろう。



最高の時間と思い出をありがとう。

SLAYERよ、永遠なれ。

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【次回予告】

サークルでの偶然

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