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音楽の原風景 〜その4〜

さて、前項までで高校生活までを振り返ってきたが早々に現役合格を決め大学入学までの高三の冬季休暇中はベースを爪弾きながら、学校より紹介?推薦?のあった高校一年生の冬季講習の講師としてお金を稼ぎながら新生活に想いを馳せていた。そしてだいじ少年は晴れて入学式を済ませ、大学生活に邁進していくのである。

サークル勧誘で賑やかな中庭にて手荒い歓迎とも言える数多のチラシをもらい、家で目を通していく中『軽音楽部』のチラシが目に付いた。野郎臭い太めの荒々しい雑な文字にあまり聞いたことのない海外バンドの文字列、そこにXの文字があったのだ。『-JAPAN』ではない『X』の文字に心が動いた。「ここはこだわりのあるサークルだ」と瞬時に理解し、ほとんど入部に心は傾いていた。

「明日新歓説明会があるようだ。覗いてみよう。」

入会後に聞いた話ではあるがその軽音楽部は某「見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込む」バンドのギター増川氏が一年時在籍していたとか、某「ザ・黄色い猿」の菊地兄弟の弟が在籍していた、とか由緒あるサークルで他にもスタジオミュージシャンや音楽関係者の方々を輩出したとんでもないサークルだった。

さて、日が変わり授業を終えた少年は授業が終わり教室のある5号館の階段を降り、同じく食堂のある地下一階まで「バンドをやる第一歩だ!」と意気揚々と階段を駆け下りていった。集合場所が食堂への階段を降りてすぐの自動販売機が並んだ目の前のテーブルだったのだ。階段を降りると…



白い煙と山積みになったヘルメット、灰皿と化した食堂の湯飲みやビールやコーラなどの空き缶…



めっちゃんこ怖かった。


板目紙を三つに折りコーナー紹介のようにされたモノには『軽音楽部』『気軽に来てね!』『初心者大歓迎!』と書かれてはいるものの、とんでもなく悍ましい空間が食堂の一角に広がっていた。まるで映画などで見る場末のバーのような。今振り返るとアングラなヘヴィメタルをやっている人間たちっぽいと言えばぽいのだがパヤッパヤの成り立て大学生にはとんでもない世界が広がっていたのをよく覚えている。(その後食堂では喫煙が禁止になり、酒類の販売も禁止になる。)


しかし軽音楽部以外のサークルを見切った少年は負けなかった。


数分後…


「ベースやってるの?」「ビール飲む?あ、一年だからダメか〜」「やっぱJAPANじゃねえよな!」「高校どこ?」


打ち解けていた。



10代後半〜20代前半のバンドマンはベースとドラムのリズム隊人口が圧倒的に少ないのだ。そういうところもチヤホヤされていたポイントだったような気もする。

そんな中、後に『今プロ』と呼ばれるギターがめちゃくちゃ速い某I先輩(オリンポス16闘神というバンドで今も活動中?)に呼ばれる。

「ねぇねぇ、みんなこれバカにするんだけど聴いてみてよ〜」

MDウォークマンのイヤホンを渡され聞こえてきた音楽に頭をブン殴られたような衝撃を覚えるのであった。

それがGAMMA RAYの『Somewhere out in space』の一曲目、「Beyond the blackhole」である。

ダルダルのベースでナニしてんだ?と言わんばかりのスラップから始まり大仰なメロ、絨毯爆撃を思わせる絶え間ないツーバス、勇壮なサビにこれ見よがしにテク任せで弾きまくるギターソロ。後々知るのだが、ジャーマンメタルでは有名なHelloweenのギターだったカイハンセンが始めたバンドで彼のクセというかエッセンスがこれでもかと叩き込まれた曲だったように思える。

イヤホンを離し「めっちゃカッコいいです」と返すとすぐさまイヤホンを装着しその曲だけ聴き込んだのだった。ウォークマンの液晶リモコンには『GAMMA RAY Beyond the blackhole』と書いてあった。

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これがだいじ少年のヘヴィメタルとの出会いである。

CDを先輩に焼いてもらい当時はメチャクチャ聴き込んだ。「買えや」言われそうだが当時はサブスクのようなものもなく、金なんてものは入学に際し洋服や携帯代に消え、CDに焼いたり、MDに入れたり、というのが主流だったのだ。なお、原盤を買うのは数ヶ月後のことになる。

そうして新たな世界に足を踏み入れた少年はライブ初出演、そしてヘヴィメタルの源流へと辿りつくことになる。


なお後日談としてこの曲がダサいと言われる由縁は、ジャーマンメタルにありがちなドコドコ言い続けるツーバスに決して上手くはないけど味のある、言わばヘタウマなヴォーカル、キャッチーを通り越したクサいメロディーとテクニック自慢のギターソロの三拍子が揃っていた「クサメタル」と呼ばれるような楽曲だったからだ。たまに同級生と話すと「ダサい」と未だに言われる。


バカ正直で結構好きなんだけどなぁ。


【次回予告】

初ライブ、そしてメタルゴッドとの出会い

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