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定額減税のポイント

 2月号の「気を付けたい所得税改正のポイント」で定額減税について簡単に触れましたが、6月からいよいよ月次の事務手続きが始まります。


1.定額減税を始めるための準備をしよう!

 6月からの定額減税控除に先立ち、社員一人につき、いくらの定額減税を行うべきかを確定しなければなりません。所得税で定額減税を行う金額は下記のとおりです(非居住者は除く)。

 気を付けなければならないのは、同一生計配偶者と源泉控除対象配偶者は同じではないということです。「同一生計配偶者」とは、納税者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が48万円以下の人をいいます。配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下の場合、源泉控除対象配偶者にはなりますが、定額減税の対象には含めません。また、定額減税では本人の所得制限はありません。本人の合計所得金額が900万円超になることがわかっている場合、配偶者を記載していないこともあるので、再確認が必要です。
 扶養親族も所得税では16歳未満の子どもは控除対象にはなりませんが、定額減税の対象にはなります。通常、16歳未満の子どもも所得金額が多い方の扶養として申告しますが、合計所得金額が1,805万円を超える場合には、定額減税を受けられる配偶者や親族の扶養としておく方が有利になります。

2.定額減税を記録する

 6月以降に支給する給与・賞与の源泉税について、定額減税の金額に達するまでは徴収しないという方法を採ります。単身者で定額減税の額が3万円の場合でも、社会保険料等控除後の金額が503,000円以上でないと1ヶ月で引くことはできません。複数月にわたって定額減税の事務を行う必要があります。ではどのように管理をすればよいのでしょうか。国税庁のHPから下記のような「各人別控除事績簿」のEXCELをダウンロードすることができます。

<POINT>
 ①6月で引ききれない定額減税額は7月以降の給与・賞与から控除する。
 ②合計所得金額が1,805万円を超える見込みの社員も定額減税を実施する。
 ③納付書には定額減税控除後の金額を記載する。税額が0のときは税務署       に提出のみ。
 ④控除しきれなかった税額があっても、令和7年の給与からは控除しな  い。

3.年末調整で行う減税事務

 年末調整では確定した合計所得金額を基に、年間の所得税額との精算を行います。年末調整の対象となる人のうち、合計所得金額が1,805万円を超える社員は、年調減税額を控除しないで年末調整を行います。住宅借入金等特別控除があるときは、住宅借入金等特別控除後の所得税額が限度となります。

 一人別源泉徴収簿や源泉徴収票には、定額減税前の税額、控除した定額減税額、控除後の所得税額、定額減税額を控除しきれなかった場合には控除しきれなかった 金額を記載します。

【執筆者プロフィール】
税理士 永井智子(ながい ともこ)
(社)ファルクラム租税法研究会研究員。
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)ほか、論文・寄稿多数。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年5月号より

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