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災害における税制上の措置について

 この度の令和6年能登半島地震により被害を受けられた皆様に、心からお見舞い申し上げます。能登半島地震のような災害に係る税制上の措置は、いわゆる国税四法に係るものが注目されがちかと思います。しかし、それ以外の税にも災害に係る税制上の措置が用意されているため、簡単にまとめておきます。


1.印紙税

 令和6年能登半島地震が発生した日から5年以内に作成される、不動産の譲渡に関する契約書又は建設工事の請負に関する契約書(以下、まとめて「不動産等契約書」といいます。)や、消費貸借に関する契約書に係る印紙税が非課税とされます。不動産等契約書の場合、市町村長等から、り災証明等を受けた被災者が作成し、地震により滅失又は損壊した建物(以下「滅失等建物」といいます。)に代わる建物(以下「代替建物」といいます。)を取得する場合等の一定の場合に作成する契約書が対象となります。なお、被災者には、本人だけでなく一定の要件に該当する相続人が含まれ、代替建物については、滅失等建物に代わるものであることが、契約書その他の書面において明らかにされている必要があります。また、不動産等契約書の当事者が、被災者と、被災者以外の者である場合、被災者以外の者が保存する契約書は、被災者以外の者が作成したものとみなして課税されます。

 消費貸借に関する契約書の場合、銀行、信用金庫などの金融機関が、能登半島地震の被災者を対象として、新たに設けた特別貸付制度の下で行う金銭の貸付けに際して作成される契約書で、被災者以外の者に対する貸付金の利率に比べて年0.5%以上有利であることが明示されている等の要件に該当すれば、印紙税が非課税とされます。

2.登録免許税

 滅失等建物に代わるものとして新築又は取得をした代替建物や代替建物の敷地となる土地の所有権の移転等の登記、代替建物の取得等に係る資金の貸付けに伴う抵当権の設定の登記で、自然災害の発生した日以後5年を経過する日までの間に受けるものについては、一定の要件の下、登録免許税が免除されます。

3.自動車重量税

 能登半島地震により被害を受けて廃車する自動車(以下「被災自動車」といいます。)については、自動車重量税の還付措置が設けられています。被災自動車について、永久抹消登録等を行い、還付申請書を提出することで自動車重量税の還付を受けることができます。なお、自動車リサイクル法に基づく還付手続を既に実施済みの場合は、被災自動車に係る還付制度による還付との差額が還付されることになるので、留意が必要です。

4.地方税

 現時点において、石川県では、自動車税(種別割)、個人事業税、不動産取得税の減免制度が設けられているようです。いずれも申請が必要ですが、能登半島地震による被災に基づく申請の場合は、申請期限が自動的に延長されています。

 また、市町については、条例に基づき、固定資産税等の減免措置が適用されるものと考えられます。

【執筆者プロフィール】
公認会計士・税理士 越田圭(こしだ けい)
(社)ファルクラム租税法研究会研究員。
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)、『税理士が知っておきたい!土地評価に関する建築基準法・都市計画法コンパクトブック』(共著/第一法規)ほか、論文・寄稿多数。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年3月号より

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