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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #16 同一労働同一賃金(2)

 働き方改革といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係を巡っては続々と変化が現れてきています。
 この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用を巡る問題をご紹介していきたいと思います。
 今回は、前回に引き続き、「同一労働同一賃金」について解説していきます。


1 同一労働同一賃金

 前回ご紹介させていただいたとおり、同一労働同一賃金とは、同一企業での正社員と非正規雇用労働者との間に生じる、不適切な待遇の格差を解消させる取り組みやルールのことをいいます。
 現在は、パートタイム・有期雇用労働法や、派遣法に規定されています。

2 正社員と契約社員との手当の支給の違いが争われた判例

 同一労働同一賃金の下、待遇の違いが裁判で争われたケースが多数存在しています。その中で、最高裁が平成30年6月1日に重要な判断を示しました。正社員に支給されている手当が契約社員に支給されていないことが合理的か否かが争われたのですが、会社側は、正社員は長期間働いてもらい、将来的に会社を担ってもらう人材だから、待遇を良くする必要があり、支給される手当に違いがあることも合理的だと主張して争いました。
 ただ、最高裁は合理的か否かの判断をする方法として、手当の支給の趣旨・目的を踏まえて、個別的に判断をする、という方法をとることを示しました。
 つまり、例えば通勤手当が支給されているとすれば、その趣旨、目的は会社までの交通費を補填する意味で支給されていて、その目的は正社員と契約社員とで同様に妥当するため、契約社員に支給しないとするのは不合理で違法と判断されました。
 この他、無事故手当や皆勤手当、給食手当、作業手当などについて、不支給となっていることが違法と判断されています。そして、手当を支給しないことが、同一労働同一賃金に違反して違法な場合、支給されなかった分に見合った金額について損害賠償が認められることとされました。

3 想像以上に影響が大きい同一労働同一賃金

 正社員であっても契約社員であっても、同じ業務、責任を果たしている場合には同じ待遇とするというのが同一労働同一賃金です。
 実体としては非正規社員の待遇の引き上げにつながることが予想されますが、想像以上に企業に与える影響は大きくなっています。

 次回は、同じく平成30年6月に最高裁が判断を示した、定年後再雇用と同一労働同一賃金の問題についてご紹介します。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年4月号より

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