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マスクのはなし

昨年4月から新しい職場に異動になった。

みんな、「はじめまして」から、マスクをしていた。

何が起こったか。職場の人のほとんどの人の、マスクの下の顔を知らない、という現象が起こった。

マスクを外した時のイメージとの違いのギャップにいちいち驚かされる日々。八の字眉毛でいつも反省している感じの、着ぐるみのくまみたいな癒しキャラの人が、マスクを外した途端に生身のオス感を出してきたりする。

課長、めっちゃエラ張ってますやん、と思ったりもした。もちろん言わないが、飲み物を飲んだりするたびに私の中では別人と化す課長にポーカーフェイスで戸惑ったりしていた。

目だけより、鼻と口があると、なんか生々しくなるのは、そこに穴が空いているからかな、と思う。

近くの席でよく関わる人は、穏やかで声のトーンも落ち着いていて、一見すごく優しいのだが、目が全然笑っていなかった。きっと目だけが見えているからわかることだった。恐ろしかった。話をして仲良くなるにつれ、だんだん目に表情が出てくるのが、目ばかりみていたからよくわかった。目だけだと冷たい感じにしゅっとしていたが、口元までみるとやんちゃな顔だった。きっとマスクをしてなければ冷たい印象にはならない人だった。おもしろいなと思った。

マスクをしていてある日ふと、私も口角が楽になったなと気づいた。どうやら愛想笑いで無理に口角を上げていたらしい。特に職場の飲み会のあとなどは、軽く筋肉痛になっていた。どれだけ気を遣っていたのか。このまま顔が重力に負けて下がっていくんだろうが、笑いたい時だけ笑えばよい。というのは、楽なことだ。少し解放された気がした。

きっと私も今は楽しい時しか目が笑っていないので、いろいろバレているのだろうと思うが、飲み会もないので、問題なかった。

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