KATHARINE HAMNETT

　服を買ったりするのは好きな方だが、いろんな店で買うというより、割と同じ店でずっと続けて買う傾向がある。
　社会人になった頃から、スーツやシャツはキャサリンハムネットで買っていた。
　当時、自分のミュージシャン仲間がよく着ていてかっこいいなと思っていたのと、細身のシルエットが当時気に入っていたからである。

　自分の買い方は割とまとめ買いで、年に1回か2回お店に行って、店員さんに勧められるがままにスーツやシャツ、ネクタイ、普段着などをまとめて買っていた。
　自分は比較的お店の方などに顔を覚えてもらいやすいようで、お店に行くとだいたいこちらが何をいうでもなくおすすめを教えてくれるので、その中から気に入ったものを買う、という買い方がこの店に限らず多かった。
　つまり、お店をくまなくみて回って吟味するというより、自分で選んだわけでもない候補を見繕ってもらって、その中から良さげなものを選ぶという方式である。
　一見、余計なものを買わされてしまいそうな気もするが、単純に、こんなふうに自分が思ってもみなかった候補を出してもらうのは楽しい。また、発見というほど大袈裟でもないけれど、あぁ思ってもみなかったけど、これはこんなふうに着るのか、なるほどと気付かされることの方が圧倒的に多かったのも事実である。

　また、同じお店に行き続けるのは、純粋にお店の方と仲良くなるので、会って話をするのが楽しい、ということもある。
　実際、キャサリンハムネットは、代々お店の方と仲良くしていたのだけれど、お店の方の異動か何かの弾みでそのコミュニケーションが途絶えてしまってから全然行かなくなってしまった。

　それ以外でも、お店の方とコミュニケーションをとるレベルで何度も通うようになったお店はいっぱいある。
　普段着だが、一時期は赤レンガ倉庫にあるオーシャンユニオンという、なぜかマリン調の服ばかり置いてある店に通っていた。別になにか船や港に思い入れがあるわけでもないのに、お店の方とも仲良くなってしょっちゅう通っていた。このお店はもう無くなってしまった。
　フランソワ・ジルボーという、これももう日本にはなくなってしまったデニムのお店は、実はキャサリンハムネットの店長さんに教えてもらった。今そのデニムは長男が着ている。
　デニムで言ったら、元町にあるジャンキーという店でそれこそ学生の頃から買っている。ここで、リアルマッコイやサムライジーンズなどのいわゆる復刻風ジーンズをよく買った。
　靴は一時期メレルに凝っていた。なぜか今は全然履いていず、普通にニューバランスのスニーカーを買っている。

　なので、意外と歴代持っている服のブランドというかメーカーは、１０本の指で収まってしまうんではないかくらいのレベルである。それくらい、同じところにリピートすることが多い。しかも、言われるがまま買うことが多いので、いいお客だったんじゃないかと思う。

　そんな遍歴を経て今自分が一番服を買っているのは、本牧にあるマツザキ商店という、軍もの専用のお店である。
　別にミリタリーに興味を持ったというわけではあまりなく、単純に機能的で安いからである。ジャケットでもパンツでも大体数千円の単位だし、当たり前だが丈夫で、やっぱりちゃんとしているから冬でも寒くもないし、なんといっても動きやすい。
　迷彩柄などは主張が強すぎるからあまり持っていないけれど、単純に黒やカーキのパンツ、単色のシャツなどは言われなければ軍用とはわからないものばかりだし、シルエット的にも普通に売っているものと遜色がない。
　このコスパと機能性に気付いてからは、服だけでなく、バッグやらなにやら、ここで買ったものがものすごく多くなってしまった。この前も買った手袋の驚きの機能性に驚いている。マジで全然寒くない。

　ただ、ここ数年は、服といってもそんなに新規開拓をしていない。
　単純に、会社がほぼ私服OKになってしまったので、無難なZARAやGUでしか会社用の服を買っていないからである。これらのお店では別にコミュニケーションがあるでもないので、単にいって買うだけというか、感覚的には量販店で何かを買っているのに近い。

　また、あとは自分の服の好みがついに和装に行き着いてしまったというのが一番大きいんだろうと思う。そういえば、いわゆる服屋には行かなくなったが、中古の和服屋さんとかはめちゃくちゃ新規開拓した気がするし、お店の人ともよく話すような買い方をした。
　ただ今までと違うのが、和装は男物の中古の出入りが少なく、行っても行っても新しいものなど滅多に入らないので、おすすめを聞いても別にない、ということがほとんどだということであった。なのでこちらも最近はほとんど行かなくなってしまった。
　いずれお金に余裕ができるような時代が来たら、着物を仕立てたりなどして優雅にやってみたい気もするが、今の現実世界でそれを実行するのはゲームにおける最終武器レベルに現実離れしたゴールドを要求されるので、まぁ趣味としては中古の宝探しをするので十分かなと思っている、