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【体験記】東京大学工学系研究科システム創成学専攻(修士課程)院試受験

この記事の筆者について

東京大学工学部システム創成学科PSIの4年生です。2021年8月末にあった東京大学工学系研究科システム創成学専攻の2022年度入学試験を受験しました。誰かの役に立つと信じて、その時のことを書きます。

システム創成学専攻とは

システム科学に基づいて人工物や資源について研究する場所です。東京大学の学生ならシステム創成学科のAコースとBコースの人が主に進学する場所です。筆者のようにCコース(PSI)の人もちらほら受験しますが、技術経営戦略学専攻(TMI)という選択肢もあるので、大半はそちらを受験します。

システム創成学専攻ホームページ:https://www.sys.t.u-tokyo.ac.jp/

専攻への出願

出願は①工学系研究科と②システム創成学専攻の2カ所にします。提出する書類が異なるので、要注意です。

工学系研究科出願期間:2021/7/1~2021/7/7(申請書類)

システム創成学専攻出願締め切り:2021/7/21(独自専攻書類)

TOEFLスコア提出締め切り:8月

提出物:申請書、志望理由書、希望指導員の調査票、TOEFL iBTスコアレポート、成績表(東大工学部生は提出不要)

審査方法

審査は、①書類審査と②筆記・口述試験の2段階に分けられます。

書類審査では、志望理由書と成績をもとに審査され、書類審査を通過した人が筆記・口述試験に進みます。

志望動機・希望研究内容書を重視し、学部等の成績を参考にして書類選考を実施する。書類選考の結果は8月26日(木)までに、本専攻ホームページ等で通知する。書類選考を通過した者(書類選考合格者)のみが筆記試験や口述試験を受験することができ、その他の者は不合格となる。

書類審査で落とされることはほぼありません。基本的にはウェルカムなスタンスで審査して、筆記・口述試験の方で競争させていると思われます。

筆記は、英語(TOEFL iBT)とシステム創成学関連科目の2つです。英語はコロナ対策で昨年度からTOEFL iBTのスコア提出になっていますが、以前まではTOEFL ITPを一斉受験できたようです。システム創成学関連科目は、昨年度出題内容が刷新され、以前のようなパズル問題ではなくなりました。代わりに材料力学や流体力学、地球惑星科学、システムモデリングなどの分野から選択して回答するものになっています。

口述試験は、面接のことです。

それはそうと、募集要項を細かく読むと、大事な記述があります!

書類選考と英語試験の結果を総合的に評価した上位の者には、筆記試験を免除することがある。

筆記試験免除があるのです!昨年度の試験では約半数が免除されていると聞きました。これはがんばって書類を書くしかない!と思い、TOEFLスコアはしっかりとって志望理由書を力を入れて書き上げました。

書類審査

①志望理由書

志望理由書には、志望動機と希望研究内容を書きます。指定様式には以下の通り、指示が書いてあります。

2ページ以内で、①本専攻 / 第一志望指導教員を志望した理由、②希望する研究内容、についてそれぞれ具体的に記述してください。③卒業後の希望する進路や 、④その他自己アピール、について追加しても構いません。記述は日本語または英語で 、 図表等を使用しても結構です。

志望理由はそんなに難しくなく、どうしてその分野に興味をもったのか、今までの研究で何をしてきたか、どういう課題があると思っているかなどをまとめて、修士課程で研究を続けたいと記しました。

一方、私の場合、学部4年生の7月の段階では卒論のテーマすら決まっていなかったので、修士での研究計画を書くのはけっこう大変でした。卒論のテーマとなりそうなものに、過去の先輩方の卒論や修論の要素を参考に書きあげました。「修士課程でやるレベルか?」と突っ込まれる要素はありましたが、精一杯書くしかないので、できるだけ肉付けして提出しました。

卒業後の進路は自分の夢を書いておきました。3行程度です。

自己アピールでは、大学の課外プログラムに参加していることや大学外で立ち上げた組織について書きました。

②成績

学部の成績は悪くありませんでしたので、特に心配していませんでした。東京大学ではGPAは算出されませんが、あえて言うなら私はGPA3.8/4.0くらいです。

書類審査の結果と筆記免除について

書類審査は無事通過しました。

しかし!ここで大問題が!

合格通知メールを受領したあとに「今年は筆記試験免除は行わない」と発表されたのです。

えええ!筆記免除を狙ってシステム創成学専攻を受けたのに、、。

たしかに嫌な予感はしていたのです。昨年度の募集要項に記載されていた文言と若干表現が変わっていたので。昨年度の募集要項には以下のように書かれていました。

尚、合格予定数の半数までを上限として、上記の書類選考と英語試験
の結果を総合的に評価した上位の者には、筆記試験を免除することがある。

今年度の募集要項(再掲)は以下の通りです。

書類選考と英語試験の結果を総合的に評価した上位の者には、筆記試験を免除することがある。

ん~、昨年度の方が具体的。まぁ、過ぎたことは仕方ないので、切り替えて筆記試験をがんばりましょう。

筆記試験

①TOEFL iBT(事前受験)

例年は試験会場でTOEFL ITPを受験できますが、コロナの関係で今年も昨年に引き続き、事前にTOEFL iBTを受験して、そのスコアが英語試験として利用されます。私は109/120のスコアを提出しました。

②システム創成学関連科目(8/29)

全部で6題の中から2題選び、回答します。午前に3題、午後に3題出されて、それぞれ1題ずつ選択します。試験時間はどちらも90分間です。

「システム創成学関連科目」では、以下に示す3つの分野から文章題(数式や図形等が含まれることもある)がそれぞれ2題出題されます(計6問)。受験者はその中から2問を自由に選び、論理的に自分の考えを記述します。なお、この際に選択した分野は、自分が志望する研究分野と関係している必要はありません。分野名とその出題範囲は次の通りです。
1. 地球・宇宙・フロンティア資源工学
 地球・宇宙・フロンティア資源工学:人類が抱える資源・環境に係る重要な課題について、 海底・宇宙資源や物質循環・低炭素技術の観点を含めたフロンティア資源に関する設問から、システム的なものの見方を問う。地球惑星科学と地球工学のごく基礎的な知識が必要となるが、選択で情報科学に関する設問もある。
2. システムモデリング
 対象となるシステムの挙動について、数理的にモデル化して解く問題を出題する。システム創成学において必要性の高い基礎問題あるいは具体的な設定をした応用問題で、大学学部レベルの数学全般を習得し利用する力も問われる。
3. 人工物の力学と設計論
 人類社会の豊かさや地球規模課題に対する解決手段を具現化する人工物の信頼性に関連する材料力学・流体力学・設計工学の各領域およびそれらを複合的に考える力を問う問題を出題する。大学学部レベルの同科目の習得が問われる。

システム創成学科所属の受験生の多くがそうかと思いますが、私は材料力学と流体力学の勉強をしていきました。システムモデリングのアルゴリズムや確率を解く人も多いですね。

私の場合、海外大学院への進学準備も進めていたので、ほとんど勉強の時間がとれませんでした。試験の前々日まで奨学金の申請に追われていました。というわけで、学部での貯蓄と試験前日の復習で試験に臨みました

午前は材料力学の問題を選びました。計算問題は基本的な問題だったので、たぶん解けました。記述問題は、全然自信をもてずになんとなくの答えを書きました。出来は6割くらいでしょうか。90分の試験時間ぎりぎりで解き終わりました。

午後は流体力学を解こうと思ったのですが、問題を見たときに流体力学の知識をほぼ使わないもので焦りました。せっかく勉強してきたのに、これは解けそうにない!

急遽数学の問題を選びました。まったく勉強していない分野でしたが、2変数関数の最小値に関する問題だったので、大学受験の知識を使ってなんとか解きました。議論が甘いところは減点されるかもしれませんが、それなりに解けたかな。危ない危ない。高校時代の自分、ありがとう!

選考辞退届について

午前と午後の筆記試験が終わった後、選考辞退届について説明されました。

工学系研究科には補欠合格制度がないため、合格発表後に辞退者が出ても繰り上がり合格がありません。そしてシステム創成学専攻は合格発表後に定員割れを起こすことを嫌っています

他の学部や大学院を併願していて、システム創成学専攻より志望順位が高いところに先に合格した場合、システム創成学専攻の合格発表より前に選考辞退を申し出てほしいということらしいです。合格枠をなるべく確保したいということで、辞退届なるものが存在します。

システム創成学専攻は本当に自分たちのところに入学してくれるかどうかをとても気にしています。口述試験でもそのあたりは聞かれますので、併願している人は要注意です。

口述試験(8/30)

例年は対面ですが、今年も昨年に引き続き、すべての受験生がオンラインで面接を受けました。私の面接は午前に指定されていたので、指定時刻にZoomに接続しました。

時間が押しているのか、Zoomの待機室で集合時間から20分ほど待たされました。複数の受験生が同時に入室を許可され、全員マイクとカメラの接続テストをした後、それぞれに別のZoomリンクが渡され、その別のZoomリンクにアクセスして口述試験開始です。バーチャル背景は禁止です。

口述試験では、メインの教授1人+その他4人ほどから15分程度質問をされます。まずはメインの教授からテンプレートの質問を一通りされます。聞かれた質問は以下の通りです。

①受験番号、現在の所属、氏名を教えてください。
②他の大学院(学部)を受験したか。
③どうして第一希望の指導教員のもとで研究したいのか。
④どうしてシステム創成学専攻を志望するのか。

②は明らかに上述の合格枠を気にしての質問でしょう。合格を出したら確実に入学してくれるかどうかを見極めているのだと思います。④の質問も、志望の本気度をはかっているものと考えられます。

そのあと第一希望の指導教員から質問を1~2個受けます。ここは先生によって質問事項がかなり変わると想像されます。私の場合、希望していた先生が不在だったので、代理の先生から現在の研究内容について軽く質問されました。

残りの時間は他の先生方が自由にいろんな質問をしてきます。志望理由書に書かれたことをベースに聞いてくる印象でした。

①卒業後の進路にXXX(職業)になりたいと書いているが、具体的に行動していることはあるか。
②XXX(職業)でなければならない理由はあるか。
③YYY(私の研究分野に関係する政府の資料)について思うことはあるか。

特に意地悪な質問はされなかったので、普通に受け答えをすれば大丈夫だと思います。

合格発表(9/14)

16:00に発表予定と書いてあったので、15:50頃に工学系研究科のホームページにアクセスして待機していました。15:58には合格者受験番号が発表されました。

無事、合格です。

不合格の人は少ない印象です。そもそも受験者数が例年より少なかったのではと思います。(受験者数と合格者数は工学系研究科のホームページに掲載されています。)

最後に

ここまで読んでくださりありがとうございます。「読んだよ」という気持ちでこの記事に♡をつけてくださると嬉しいです!

どのくらい世の中の人がこういう情報を求めているか気になるので、よろしくお願いします!

それではまた次の記事で。See you!









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