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晴読雨読

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晴レノ日モ雨ノ日モ、私ハ本ヲ読ム
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2020年7月の記事一覧

『盤上の向日葵』

タイトルでピンときた方もいらっしゃるかもしれないが、最近柚月裕子さんが書かれた『盤上の向日葵』という本を読んだ。柚月裕子さんの作品といえば、やはり最も有名なのは『孤狼の血』だろう。最近読んだ本の中では、ずば抜けて完成度が高かった。話としては、ヤクザと警察の間にある義理と人情の話と絡んで、サスペンスチックな仕上がりになっており、それなりのボリュームがあるのにさらさらと読めてしまう。 その延長線で読んだのが、『盤上の向日葵』。この本は、将棋界に彗星のごとく現れ、タイトル戦に挑む

読後感想『琥珀のまたたき』

幼い頃の記憶。誰しも幼い頃のことを思い出すと、ほとんどのことが朧げながらも、どこか断片的に思い出す記憶があると思う。そしてなぜか楽しい思い出よりも、どこか苦い思い出の方が、脳裏に強く焼き付いていて思い出すたびに少しシュンとなる。 わたしがちょうど小学校に上がる前に、隣に兄と妹の兄妹が住んでいた。よく一緒に遊んでいたのだが、妹は非常に犬が苦手であるときそのことを面白がった兄がわたしも巻き込んで、妹に犬をけしかけたことがあった。 その途端、妹は恐怖で泣き叫び、その事実を知った

根底にある、ものがたり。

先日、ファクトリエ代表を務める山田敏夫さんが著した『ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命』という本を読んだ。わりと3、4時間程度で読めてしまう内容になっているのだが、中身は学ぶべきことが多かった。苦労を重ねてきた筆者だからこその言葉の重みがある。 これまで衣服などのファッションは、だいたいブランドはわかってもそれをつくった生産者が見えないようになっているのが普通だった。そのタブーともいうべき概念を打ち破ったのが山田敏夫さんが設立したファクトリエである。