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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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#ライフスタイル

休みの最後、クラシック

 4連休の最終日は、家で静かに映画を見たり本を読んだり時々気まぐれで簿記の勉強をしたりしていた。簿記については正直細く長く勉強しているので、もはや自分でも受かりたい気持ちがあるのか甚だ疑問だ。そもそも人は勉強するにしてもその先に何かないとやる気が上がらない生き物なのだろう(それは私だけかもしれないが)。  久しぶりにクラシック映画を見た。1927年にドイツで製作された『メトロポリス』。Amazon Primeとかでも見られなくて、仕方なしにTSUTAYAで借りた。こうした昔

今も、気がつけば側にいるような

 僕の伯父さんは変わっている。少し、いやだいぶ変だ。  今のこの時代、安定した職を持つ事が当たり前。貯金だってそれなりに持っているべきだということは、見通しのつかない将来を考えてみても世間一般の通説だ。決まった仕事もなく、年がら年中どこほっつき歩いているのかわからない人がいるのであれば、その人は否でも応でも世間では白い目で見られる。生きづらいことこの上ない。  そんな風潮にも関わらず、伯父さんはひたすら決まった職を持たずに、全国各地を渡鳥のように練り歩いていた。  他の

この世はかくも素晴らしく、かくも酷い

 なんとなくこの社会に身を置いていると、客観的に見た時に人は割とその人の正しい内面を知ろうともせず、世間一般のイメージばかりに囚われているような感じがする。そうした勝手な先入観や偏見によって、間違いなく生きづらいと感じてしまう人間がいる。  西川美和監督と役所広司がタッグを組んだ『すばらしき世界』。公開当初から非常に気になっていて、ようやく時間ができて劇場に足を運ぶことができた。直木賞作家・佐木隆三氏の小説『身分帳』が原案となっている。 ■ あらすじ殺人を犯し13年の刑期

真昼の日輪を追いかける

 最近ハマっているのは、自転車に乗ること。  住んでいる場所が田舎なこともあって、歩いて回るにはとにかく不便。そんなわけで、昨年末にtokyobikeのbisouという自転車を意を決して購入した。思った以上にお金がかかってしまった。それでも、小さな楽しみを得られたと思って満足している。運動不足解消も兼ねて、愛機に乗り周辺を駆け回ることが、近頃における週末の日課。  目的は、ランチ巡りだ。  緊急事態宣言が発令されていることもあるので、密を避けるような形でコア時間を外し、

アメリカン・ポップカルチャーに踊らされる

 昔からコカ・コーラやマクドナルドといった、いわゆるアメリカの資本主義のシンボル的なモノ達が好きだった。  青春時代(あの頃は若かった)、ポスターを集めるのにいっときハマって、アンティークショップに行っては目ぼしいものがないかどうか漁っていた。学生時代、ニューヨークにあるMOMAへ立ち寄った時、かの有名なキャンベル缶がいくつも描かれたアンディ・ウォーホルの作品を見ていたく感動した記憶がある。   感覚的には、きっと古き良きものを愛でる感覚と通ずるものがある気がする。昭和レ

さよなら、ドビュッシー

休みの日、なかなか表立って外に出づらくなってしまったので、とりあえず映画を見よう!と思い立ち、契約しているネットサービスを漁っていたらなんとも懐かしいタイトルを見つけた。 『さよなら、ドビュッシー』<あらすじ> ピアニストを目指す16歳の遥は、両親や祖父、従姉妹らに囲まれ幸せに暮らしていたが、ある日火事に巻き込まれ、ひとりだけ生き残る。全身に火傷を負い、心にも大きな傷を抱えた遥は、それでもピアニストになることをあきらめず、音大生・岬洋介の指導の下、コンクール優勝を目指してレ

海の上で生きるピアニスト

他の記事でも不慣れな短編で題材にするほど、海という存在はわたしの中でとても大きい。今住んでいる場所は、海からそれなりに距離のあるところなので、おいそれと海のある街へ行こうにも時間をかけて電車に揺られながらその場所へ向かうことになる。 個人的には家にいるよりも、比較的移動する方が好きなので電車に揺られている時間はわたしからしたら全く苦ではない。そのため、好きな音楽を聴きながらのんびりと自分だけの時間を過ごしている。そして海が近づくに連れて開け放たれた窓から潮風が舞い込んできて