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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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2021年1月の記事一覧

夢の終わりを、見たくなかった。

 最近は少し家でひっそりしつつ、時間があればぶらぶらと近所を散歩し、それから気が向けば映画を観るといった反復運動の中で生きている。  私はこれまで一度読んだ本、そして観た映画というのは基本的には見返さないという生き方をしてきた。それはなんとなくあらすじも結末もわかっている話を再度見直すというのは、時間が勿体ないという考えが頭の中にあったから。それがここ最近は、少しずつだけれど昔見て"記憶の中を掘り起こす"という活動をしている。  そして今年最初に観直したのは、ジュゼッペ・

時間を旅する人たち

水の上に石を落とすと、静かに波紋が揺れる。 ちょうど日常のちょっとした変化に対して、それがまるで波紋のようにだんだんと異なる影響をもたらすことをバタフライエフェクトというそうだ。 そういえば昔『時をかける少女』というアニメ映画を見たことがあるけれど、主人公が過去に起こした出来事によって未来が大きく変わってしまうという、そんな道筋だったように思う。3作品にわたって制作された『Back to the future』もそうだ。 タイムスリップをネタにした話なんてものはこの世の

さよなら、ドビュッシー

休みの日、なかなか表立って外に出づらくなってしまったので、とりあえず映画を見よう!と思い立ち、契約しているネットサービスを漁っていたらなんとも懐かしいタイトルを見つけた。 『さよなら、ドビュッシー』<あらすじ> ピアニストを目指す16歳の遥は、両親や祖父、従姉妹らに囲まれ幸せに暮らしていたが、ある日火事に巻き込まれ、ひとりだけ生き残る。全身に火傷を負い、心にも大きな傷を抱えた遥は、それでもピアニストになることをあきらめず、音大生・岬洋介の指導の下、コンクール優勝を目指してレ