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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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2022年7月の記事一覧

真夏のシュガードーナツ

「東京にしては珍しく、ここのは関西風の出汁で、美味いよ。」 かつて4年間ほど、代官山の蔦屋書店から徒歩で十数分の場所に位置するヴィンテージマンションの一室に、毎週通っていたことがある。 そのマンションの近くにある小さな蕎麦屋で、私はKと向かい合って熱々のかけそばを啜っていた。 ある年の、暑い夏の日で、私はノースリーブの薄手のワンピースにスポーツサンダル、KはTシャツにハーフパンツにニューバランスのスニーカーという、とてもラフな格好をしていた。 互いに熱いそばの汁のせい

映画「わたしは最悪。」世界で1番最悪なわたしの人生も、全部まるごと引き受ける

この映画を観ながら、過去の自分の愚かな経験や行動もパッとしない人生もそんなに全然悪くなかったかもしれない、いいや、悲しくてムカついて後悔し夢でうなされたあのつらい出来事すら、本当はむしろ何ひとつ全部、私は忘れたくないのかもしれない。と思えていた。 自分の不注意で他人を傷つけたことも、欲にまかせてしまった誰にも言えないあの夜も、大人として恥ずかしい失態も、たくさんあったかもしれない。 でも、それだって消えて忘れる必要なんて、全然ないのではないだろうか。 ノルウェーの首都、