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大道芸ワールドカップ有識者会議についての解説と訂正 (1)

1. はじめに

【筆者: 彦一(フリージャーナリスト)】

この記事を公開しようと思ったきっかけは、ジャニーズ事務所の一連の事件の報道です。
ジャニーズの問題の構造が、大道芸ワールドカップのそれと相似するところがあまりにも多い。例えば「事件は過去の事であり、今の責任者は知らなかった」と蓋をしようとすること。既得権益を得た演者が、見て見ぬふりをして押し黙ること。

私自身も、腐敗してしまった大道芸ワールドカップ(以下、W杯)から意図的に距離をとり、口をつぐんでいました。
しかしながら、声を上げないということが、W杯実行委員会の虚言や隠蔽を助長してしまいました。

この記事では、私が取材を通して知り得た事実、また、より詳しい知見をお持ちの方に依頼したご寄稿を掲載し、主にW杯実行委員会から発せられた虚偽を訂正していきたいと思います。

現在のW杯実行委の多くの方々が真に良いイベントを作ろうと奮闘されていることは私も存じており、その行為には心より敬意を抱いております。
と同時に、変わらず虚偽や隠蔽を続けている部分も承知しております。
0か100かではなく、是々非々。
私にとって愛着のある大道芸W杯を妨害する意図はなく、莫大な公金が投入されているイベントをただただ健全化したいという公益のために、事実を記録していきたいと思います。

2. 有識者会議開催の経緯

【筆者:渡邊翼(パフォーマー)】

2022年の大道芸W杯でプロデューサーの差別発言が問題となり解任される騒動がありました。
この方は大会の企画や演出にも関わっていた為、私は、組織から詳細な説明を公表しないまま開催するのはあまりにも危険過ぎると考え、出来るだけ早急に実行委員会としての見解を多くの人の目に触れる形で公表して欲しいとW杯実行委員会に要請しました。
その後、実行委員会の不誠実な対応の数々があったものの、多くの方々のご協力により以下についての要請書を大会の共催である静岡市へ提出しました。

① 差別問題についての経緯説明と対応を公表する事。
② 組織の運営体制の改善を話し合う場を設ける事。

これを受けて実行委員会から①は即日公表され、大会前日11月4日に対面で出演者のみを対象とした説明会が開かれました。②は大会の開催後に行うと確約されました。

②が必要だと考えた理由については大道芸W杯について知るうちに、プロデューサーの差別問題の原因は組織の運営体制にもあると感じた為です。
大会開催後12月20日に大道芸人や他大道芸イベントの関係者など有識者をお呼びし、実行委員上層部と大道芸W杯の組織体制についての話し合いを行いました。
この際に2022年以前から大道芸W杯の抱える問題について言及していた数名の方々は実行委員会から参加を断られるなどの経緯がありました。
話し合いの内容はこちらのサイトから閲覧できます。
https://diartsu2.wixsite.com/---w-2022/blank-1

また驚いたのは、その有識者会議の内容も実行委員会の公表したものは要旨として回答のみにまとめられ、大会公式サイトのニュースの過去の記事の一部として目につきにくいようにアップロードされていた事でした。

https://daidogei.com/

動向を気にしている人も少なくないと思いましたが、大会後にも相変わらずこのような不誠実なやり方をする事は非常に残念に思っています。

3. スポンサー過干渉問題

3.1. スポンサーへの忖度と隠蔽

【筆者: 彦一】

W杯実行委が有識者会議の〝要旨〟として公式HPに掲載した文書の中に、スポンサーとの関わり方について以下の記述があります。

質問1. 一部スポンサーとの関わり方(※筆者注: 地元商店街の方からの質問)
前プロデューサーの就任にはスポンサーからの斡旋であったと聞いている。経緯はどうあれ、多額な公金が使われている事業において、スポンサーが人事や内政に干渉することは公共性の観点から問題をはらんでいると思う。
また、このスポンサーから実行委員会は事務局物件を提供してもらっていると思うが、この事がスポンサーの過度な内部干渉に影響しているのだとしたら、今後スポンサーとどのように適切な距離を持ち、公正な関係性を構築していくのが良いか。組織としての考えを聞きたい。

回答1. (※筆者注: W杯実行委・大長事務局長が回答)
一部スポンサーとの関わり方について、スポンサーからの過度な影響を受けているというような指摘があったが、それは一切ない。この2022年の大会の中で、経験してきた中ではスポンサーからの意向が大会に反映されたということは一件もない。

「大道芸ワールドカップin静岡についての意見交換会要旨」大道芸W杯HP

これは明らかな虚偽です。
渡邊翼さんが公開した会議の全部文字起こしを読むと、会議で以下のようなやり取りがあったことが記されています。

“ 久保 ”
今、事務局をスポンサーの方のところを無償で借りておかれてますよね。 そういう状況ですとスポンサーの方から何か頼まれたりとかした時にですね、やはり断りにくいという状況があるのではないかという事で、今回奥野プロデューサーを指名したというか連れてきたのは、そのスポンサーだったというふうに聞いてますがそれは事実ですか?

“ 大長事務局長 ”
奥野さんを推薦されたというのは事実です。はい。私もそうです。

“ 久保 ”
私もというのは?

“ 大長事務局長 ”
事務局長である私も、そのスポンサーさんから推薦されました。(スポンサー関係者の個人名が出たので実行委員会から削除要請。”そのスポンサー”に表現を訂正)

「大道芸ワールドカップ in 静岡についての意見交換会」全部文字起こし

ここで言われているスポンサーとは「株式会社アイワホールディングス」、「アイワ不動産」のことです。
読者が理解しやすいよう、公益性のために会社名を出します。
私がYouTubeに謝罪会見の動画をアップしたときは、会社名・個人名を伏せておりました。そのときは固有名詞を明らかにする必要性を感じなかったからです。自己解決してくれれば良いと思っていました。
しかし、この件についてW杯実行委では腫れ物に触るように、無かったことにしようとしているだけで、何ら解決できませんでした。

YouTubeではピー音で隠しましたが、03分50秒「アイワ不動産の方ですか」と質問、04分05秒「一番最初にお声をおかけ頂いたのはF会長から」と答えております。動画を見ると、短い時間のやり取りの中で、このF会長に対してものすごく忖度している事が伺えます。

このF会長とは何者なのか?
御年80歳を超え、古くは大道芸ワールドカップの生みの親・天野進吾元静岡市長と大学時代の同級生です。その縁あってか、アイワ不動産は長年に渡って大道芸ワールドカップのスポンサーをされております。(それについては感謝しております。)
そして上記文字起こしの抜粋部分でも語られているように、アイワ不動産はW杯事務局の部屋を無償貸与している家主でもあり、それ故に特殊な力関係が生じております。これについては後の項で詳しく触れます。

2022年だけ見ても、W杯の新しく就任した三役のうち、差別問題で辞任したプロデューサーと、事務局長の大長さんを、このF会長が連れてきて、
W杯実行委員会はそれをそのまま受け入れました。
このF会長が、W杯に対して謎の権力を振るっていたことがわかります。

また、このことはW杯実行委の多くが知っていたと思われますが、
〝要旨〟の虚偽発表に対して実行委の中から疑問の声が上がらず、隠蔽を続けていることは、誠に残念です。


3.2. 実行委員会の虚偽発言

【筆者 : 渡邊翼】

私は大会直前(2022年10月29日)に大長事務局長と静岡市まちは劇場推進課・鈴木課長と対面で大会の問題点について話し合いました。その時はスポンサーであるアイワ不動産から無償で事務所を借りている事についても触れ、大長さんも「そういう関係性は良くないんですよ。」と仰っていたのですが、大会後の有識者会議では一転、「指摘されるような事はありません。」と意見を変えていました。以下、面談のとき許可を得て録音していたものを、正確に文字起こししたものです。

"渡邊 翼"
今、事務局はそのビルに入ってると思うんですけども、例えば気に入らない人物がいたら「ここから出て行ってくれ」というふうに圧をかけたら逆らえないじゃないですか?

"大長事務局長 "
そうですよ。だからこの関係は良くないんですよ。別にスポンサーだからっていう事ではなくてですね、そういうような影響を受けないようにしないといけない。

"渡邊 翼 "
そうですね。あくまで自立した立場...。

"大長事務局長"
だから私は、どこかのタイミングで引っ越しをするのか。

"渡邊 翼"
事務局を?

"大長事務局長 "
はい。そういうふうには思ってましたけどね。


3.3.元事務局スタッフの証言

【筆者:元事務局スタッフ】

私は、事務局長(当時)から依頼を受け、2018年から約3年の間、W杯事務局に勤務していました。私を含めた新体制の事務局員と実行委員会は、より良いW杯を目指し、運営コストの圧縮と透明かつ公正な運営を実現するため業務に取り組んできました。
しかしながら、業務委託していたイベント業者の会計や業務内容の見直しをはじめたことがきっかけとなり、実行委員会内部で対立や混乱が生じ、人間関係の悪化もあり、不当な扱いを受けるようになりました。怪文書を含む私個人や事務局に対するネガキャン、そしてコロナ禍を理由にした契約金の打ち切りなどで業務継続が困難となり、私は2021年に退職しました。

事務局物件貸主による過干渉

W杯実行委員会は、地元スポンサー企業により提供された物件に事務所を置いています。
2021年5月、私はW杯実行委員長から次のような報告を受けました。地元スポンサー企業の会長が、「一部の事務局員を辞めさせなければ、事務局物件は今後使わせない」というのです。私は、会長とは面識もなく何か誤解があるならばそれを解く必要があると感じ、W杯実行委員会に説明ないし話し合いの機会を設けることを委員会に訴えましたが、受け入れてもらえず、これが一因となって私たちは意に反して辞めることになりました。私たちがやめる頃には、事務局移転の話はなくなっていたそうです。

私は退職後に会長にアポイントを取り面会させていただきました。会長になぜ件(くだん)のような横暴な要請をしたのかを質問したところ、「そのようなことは言っていないよ」と逸らされてしまい、事実関係は不明です。一部の事務局員と実行委員が、会長に一方的な私たちの不平・不満を吹き込んだためとも漏れききましたが、しかしいずれにせよ、W杯実行委員会は会長に頭があがらず、その一存に振り回されているのが実態だったのだなというのが正直な感想です。事実、新たな実行委員長・事務局長・プロデューサーの三役は同会長の推薦により決していると仄聞しています。

以上のとおり、有識者会議において現事務局長の発言(スポンサーの意向が大会に反映されたということは一件もないとの内容)は事実と異なるものであると考えます。

今回、彦一さんに寄稿の機会を頂き経緯の説明をさせていただきましたが、自浄作用を促し、フェアでぬくもりのあるフェスティバルを開催してもらうことが目指すところであり、W杯を妨害する事が目的では無い事をご理解頂ければ幸いです。

※第2部に続きます

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