レイシストであることはたやすく、アンチレイシストになることは難しい。だからこそ、一歩踏み出したい『アンチレイシストであるためには』(イブラム・X・ケンディ/辰巳出版)

本書で扱われるレイシズムは、キリスト教会で黒人に銃撃をするとか、黒人が白人警官に殺されるといったレイシズムとは大きく違っている。現在の社会に蔓延するレイシズムは、そういった単純なものではなく、レイシストが作り出している「レイシズムポリシー」(政策や制度など)が根本的な問題であることを指摘し、白人のみならず黒人を含む非白人をも差別する側に立たせるレイシズムを、著者自身の幼少期からの経験に即した形で取り上げ、自己の言動すら批判の対象としながら明らかにしていく。

黒人間にある肌の色の濃淡、文化に対する偏見、ジェンダーやセクシュアリティ、コミュニティや教育の空間など、実に様々な角度から分析がなされている。なかでも、経済格差・資本主義の部分は印象的で、「資本主義は本質的にレイシズム的であり、レイシズムは本質的に資本主義的だ」と指弾する。そのためアメリカの民主党の議員にさえ容赦ない批判を行っている。

「私はレイシストではない」というのは簡単だ。しかし、実際はどうだろうか?
そして、著者が考えるアンチレイシストとは?
それは第17章「成功へのステップ」の終わり近くに著者が考える「アンチレイシストであろうとするためのステップ」が8点ほど紹介されている。ただ、これをクリアするのはなかなか難しいことかもしれない。一方で、それほどレイシズムが社会に浸透していることを示している。

「訳者あとがき」で訳者は、「この本」が「日本で日常的に直面するさまざま差別(中略)について深く考え、改善していくための指針」となることを「心から願っている」と書いている。この考えに強く同意すると同時に、私自身の言動を改めて省みようと思う。

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