Rord to モノローグ 20240428③

市の会議室で、2日連続稽古をする。
やっばり、声をちゃんと出すと、気付けることが多い。

誰かに話しているので、仮に相手を精神科医にしてみた。
無理やり連れてこられただろうから、最初は口が重い。
ポツリポツリ話すうちに、自分の記憶に入り込み、追体験をしていく。

「おい、桃を食べさせてくれよ」
あの人の声は、自分を責めて追い詰めていく、自分自身の声。
食べさせてあげられなかった後悔と罪悪感。
食べさせてあげれば良かった。
声が聞こえる度、追い詰められていく。

死期が早まるような気がして。
桃は桃源郷の食べ物。
死の果実。
そんなもの、食べさせる訳にはいかない。
義母が食べさせたから、あの人は死んでしまった。
死の果実。

桃=死
桃=憎しみ
桃=恐怖
桃=毒

「自分でもよく分からないのです……どうして……」
理由は分かっている。
今となっては、何故そう思い込んでいたのか分からない。

が、それ以外の理由が見つからない。
あの人の、追い詰めてくる「食べさせてくれよ」、自分自身の後悔に向かっての言い訳。
「だって!! 桃を食べたら、早く死ぬと思ったのよ!! 仕方ないじゃない!! そう思ったんだもの!!」

何故、笑うのか。
笑わないと、現実を受け止められない。
笑わないと生きていけない。

全体の下敷きとして。
桃を食べさせてあげられなかった後悔。
あの人を亡くした事を受け入れられない程、強い悲しみ、喪失感。
もう一度、会いたい。
会えたら、桃を食べさせて、笑って欲しい。

そして。
あの人のそばに行きたい(死にたい)。
あの人がいなければ、私が生きている意味など無いのだから。



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