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【書評】日本を救う未来の農業 ~イスラエルに学ぶICT農法~

農業関連の書籍を色々読んできましたが、極めて中立的ではない、著書の意見を主張するために、むりくりデータをかき集めて書かれた書物に見受けられました。

自己の主張を正当化するために様々なデータを引用されておりますが、その引用方法がいささか強引で、途中から「またその強引なデータでその結論か…」と辟易してきました。が、何とか読み切りました。

ただ、有用な部分もいくつかあったので、いくつか抜粋。(違和感のあったところも)


〇全体の論調(何度も同じことを繰り返す)

・日本の農業は1980年代以降、進歩していない

・日本の作物は「安全」だと思われているが、農薬使用量は世界トップクラス

・日本の農業は、収益の約半分が支援金からなっており、こちらも世界最高水準、税金の無駄遣い

・日本の農業は、関税による鎖国により、①単位面積当たりの収穫量が少なく、②価格が他国に比べて7倍程度(うろ覚え)も高い

・日本の農家は職人気質で、おいしさを追求するため、剪定などにより、本来収穫できるはずの収量を減らして糖度を上げるなどして、単位面積当たりの収穫量がすくなるなるような戦略を取り続けている

・日本は多雨かつ四季があり、肥沃な土壌を持つため、農業に適した環境にある。よって、大した努力をせずに来ている現状がある

・イスラエルは、栄養のない土など、農業に適さない環境だからこそ、ドリップ灌漑など、知恵を絞って収量を増やし続けており、それを日本でも真似すべきである、自分もその研究を行っている


〇役に立った点

・日本は、代々引き継いだ作物を農家が作り続けるだけで、どの程度のマーケットがあって、その作物をなぜ作るか、という説明が出来ていないことはほとんど。代々作っているものを作って、せいぜい、それをどう売るか考えるだけ。ちゃんとマーケットニーズを把握せよ。

・国内での消費がほとんどであり、海外に出す努力をしていないため、収穫後の作物の鮮度を保つための様々な技術が発達していない。ポストハーベスト技術と呼ばれ、海外では多く研究されている。

・肥料の上げ方が、ドリップ灌漑だと、水分と合わせて適宜適切に与えることが出来るが、土壌に散布式で実施すると、初期に一気に巻いたのち、追加で少し巻いて終了になるため、最適な配布方法とはいかない。一部の農家で、勘と経験から、ゆっくりと浸透するタイプのたい肥をまいているところもあるが、最適とは言えない。

・肥料を上げるのは、「糖度」を上げるためではなく、「タンパク質」を作るため=枝木を伸ばすため。どうやったら糖度が上がるのかをしっかりと考えられていないことが多い。(これは本当か怪しい。書物の中では、ただしく化学的な観点から検証されてるかは不明)

・「うちは父の代からずっとこの栽培方法だ」と伝統を重んじるが故に、トライ&エラーがなされず、安定収入は実現できるものの、革新的な収穫量の伸びが期待できない。トライ&エラーはどの産業でも必要なのでは?


〇違和感を持った点

・日本の農産品の価格は、他国に比べて約7倍(?)、などというデータを一面的なデータから算出して、それをあたかもすべての作物に当てはまるかのように何度も引用しているが、実際の作物の販売価格ベースで比較しているのか甚だ疑問。これと同じように、とある一つの結果から得られた、いち「凡例」がすべて他の事象にも当てはまるかのように繰り返し論じている。何度も同じ話がでているので印象的に映るが、極論をあたかもすべてに当てはまるかのように伝えているだけ。

・データを示している箇所は強引であるが、それだけでなく、データを示さずに断定しているものが多いが、そのデータソースが、ネットのブログか?と思われる表現が見受けられる。



参考になる部分も多々あったが、これを鵜呑みにするのは極めて現場の事を理解していない頭でっかちになりかねないので、注意したほうがよいと感じました。

いいとこだけ頂きます。

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