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【書評】凡人のための地域再生入門①

タイトル通り、凡人の主人公が、実家の廃業の準備をしていく中で、地域再生に目覚めていく様を、小説風にしたためた書籍。

すごーく読みやすく書いてあるので、気負わずさらっと読めます。そして、本当に面白く、自分でもできるのでは、と思わされる構成になっています。

小説のストーリーの合間合間に、トピックス的に「地域再生豆知識」が出てくるが、それも面白いです。

ここでは、その「地域再生豆知識」の中で、関心があるものを紹介します。

※長いので②か③に分けて紹介します。

〇地方の空き地

事業をたたんだ後も、同じ建物に住み続ける人が多いため、その「店舗」は空き店舗のまま廃れていってしまい、居住スペースと一緒になっているがゆえに、賃貸市場にも出てこない。このような駅前のスペースを使うには、賃貸サイトを見ても出てこないので、地元で知り合いを増やしていくしかない。


〇地域活性化イベントの怖いところ

地域活性化のイベントは、テレビなどの成功事例を見た「お偉いさん」が、「うちでもやってみよう」と思い付きで発案し、お偉いさんに周囲も反対するメリットがないので、中間管理職も、守りの姿勢で取り組むから、無駄な、予算だけ消費するイベントになりがちになる・・・


〇地方は資金の流出で衰退する

地方は、資産持ちが、資産を地域の投資にかけて、レバレッジを聞かせず眠らせているため、衰退する。

また、大型のスーパーなどが出来ると、便利にはなるが、結局、得られた資金が本店である別の場所に集められてしまい、地方に再投資されないため、思ったような発展につながらない。


〇地方の中で、資金を回す

①地域「外」から人・物・金を稼ぎ

②地域内で取引を拡大させ

③地域から人・物・金が出ていかないようにする

三位一体の考え方によって発展させる必要がある。


〇とある地域で活躍できるか、の試金石は?

地域活性化の成否は、「明るく楽しく、覚悟を決めて」事業に取り組むメンバーが集まるか、にかかっている。

その判断基準として「地元のイケている店のオーナーと親しくなれるかどうか」を事業が出来る地域かの判断基準にするのが望ましい。

センスのいい店にはセンスのいいひとが集まり、そのような人の口コミで、更に輪は広がっていく。その輪に入ると、情報もつながりも多く得られる。


〇不安があるからと言って人の賛成を精神安定剤にしない

地方での企業を志すと、周囲はこぞって反対する。それは間違いなく親切心であるが、事業を手伝ってくれるわけではないので、その人の経験や勘から好き勝手話をしているだけのことも。

これからの挑戦するのは楽しいこと。周囲の賛成による精神安定剤にすがるのではなく、自分で覚悟を決めてやるしかない。


〇やったことがないんやから、聞けや

会社の仕事と違って、個人で動くときは「さっと」決めていかないと時間がない。やったことがないことがわからんのは当たり前やから、とりあえず聞きまくるんや。

あと、不安に何のは、なんも逆算せんと、不安だと悩んでるだけ。ちゃんと逆算して計算すれば、見込みがたつから、実現可能性のあるプランがねられるやろ。

〇悩んで暗くなっている人は誰も助けてくれない

不安だからとやらなければ、そこに不安がありつづけるだけだ。

不安だからこそ、その原因を特定して、解決する方法を模索するように自ら動き出すことが重要である。

あかるく、一つ一つ前に進んでいけば、自然と仲間は集まる。


〇逆算開発の必要性

むやみに先行投資するのではなく、競合会社より効率の悪い開発をすれば、大手にすぐにやられる。

まずは、需要を獲得するための営業を先に行い、確実な収入を確保した状態で、リスクとリターンを明確にして資金調達を行うことで、戦う必要がある。

だからこそ、採算になるが、「営業を先回り」することが大事!要は、顧客をちゃんと作ってからリスクを取ろう、ということ。


〇地方に必要なのは天才ではなく覚悟

覚悟をもって失敗し続けること。

覚悟のない人が集まって会議しても、保身に走るだけで、何も生まれない


〇店舗を出す前にマーケットでファン作り

投資をする前に、営業を。

店舗はなくても、その前に、マーケットなどで腕を磨いたり、ファンを作ったりすることも大事。

自治体の補助金で出店する人と、自分で場所代を払って出店する人では本気度が違うし、力量の見定めも可能になる。


〇(再掲)地方で起業する際の3つのポイント

①先回りして営業し、明確な顧客がいる商品・サービスとすること

②優秀なメンバーと立ち上げること

③最初にお金を使いすぎないこと


〇地方ほどとがったコンセプトが大事

有名メーカーの商品を仕入れて売るのでは、商品で差別化出来ないので、必ず規模の論理で大手に負ける。

投資のかからないネットならまだしも、店舗を持つのであれば特に、製造小売りかサービス型の業態(もしくは尖ったコンセプトのセレクトショップ)であった方がよい。

地方にも大型のショップはあり、ネットで市販品は何でも買える。


〇開業時はスタートダッシュで失敗すると見限られてしまう

個人事業は、大企業と違い、個人の持ち場を守るだけでなく、全部をやらなければならない。大々的に宣伝して、オペレーションがうまく回らなかったら、客がすぐに離れてしまう。敢えて平日にオープンして、慣れてから週末を迎える、などの工夫も大事。(マストではないが)


〇プレスリリースを送るのもお忘れなく

これは「東大卒 農家の右腕になる」を参照


〇初めての出店を二人でやるのは失敗しやすい

仲がいい故に詰めが甘くなったりする。また、一緒に事業をやったことがないため、シビアな話し合いにおりがあわず、頓挫することも。(出社日の分担、収益の分担方法など、特に金回りに話はもめる最大の原因。自分の方が貢献している、はサラリーマンでもあるある。)

家族に話をしていない場合にも、うまくいかないこともある。


〇情に流された意思決定はまいなす。メリハリのあるやり取りを。

周囲から厳しいと言われても、メリハリをつけてルールはルールとして守ってもらう。言うべき時ははっきり言う。

ただし、言い方には気を付けて。(今回の件は、色々と大変だったと思う。けど、最初に決めた通り守らんと。)


〇狭い世界だと「いろいろな噂」はつきもの

是々非々でいこう。そして、過剰に気にしすぎず。


〇田舎の店舗を借りるのもなかなか大変

・いつかつかうかも、と手放さない

・当人とは話がついていたが、最後で、東京住の息子が出てきて、法外な家賃を請求してくる

・横並びで高値を付けていたのに、1軒だけ安値をつけると、周囲から反感をかう

等々の理由で困ることも。


〇区分所有物件

1つの土地に二つ建物を建てると、エレベーターやトイレなどの共用部分にかかる費用が増えてしまうため、1つの土地・一つの建物を複数人で共有して保有する物件のこと。

借りたり買ったりする場合に、権利関係の合意が難しいため、交渉に難航することも。


〇小さくても成果が出るといい意味でも悪い意味でも回りの目が変わってくる

①どうせ成功しない → 成功し始めると

②あの店のせいで客がとられた → ちょっと行政が悪くなると

③調子に乗るからこうなる

というよくある悪口。

魑魅魍魎の嘆きに毒されないようにしましょう。


①はこの辺で。

本当に読みやすいし面白い本です。

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