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【書評】農家はつらいよ①

農業関連の書籍を読み漁っているが、今回はタイトル通りの本。

実家が農家で、農業をついだ苦労話をつらつらと。実話ベースの話で、本当に農家の大変さが生々しく書かれていて、ドキドキする、この道に進んで果たして良いのかと(いきなり農業をするわけではないですが、、、)

ここでは、単語帳的なメモと良かったエピソードを簡単にまとめていきたい。

なお、この書物は20年程度前の話から始まっており、今は改善されている点も多々ある&かなり特異な地域であったこともあると思われますのであしからず。


〇クミカン口座=組合員勘定口座

農協の組合員が作ることが出来る口座。残高がマイナスになっても、決められたマイナス限度額までは自動的に借りることが出来る。農業生産の売上管理から補助金の振り込みまで、各種金回りを一括管理出来て楽。

決済費が1年に1回のクレジットカードのような口座。当然利息はかかる。

とはいえ、なにも考えずに借金が出来てしまって、そして自動的に利子なども引かれるとすると、農業経営がずさんになる温床の一つなのではないか、と勝手に仮定してみているのであった。(今度、親父に聞いてみよう)


〇政府管掌作物

政府が保証してくれる作物。米・豆・麦などが該当。


〇農協の営農指導部

個々の農家の技術指導や経営指導をしてくれる人。

それだけでなく、地域農業戦略の策定や農地利用調整、精算部会活動支援、営農企画業務なども行っている、らしい。


〇経営安全率

経営安全率とは限界利益に占める経常利益の割合<経常利益÷限界利益×100=経営安全率>のこと。<売上-変動費=限界利益>なので、あとどれくらい売り上げが落ちたら、赤字になっちゃうか、ってことですね。

安定経営のためには、15パーセントは目指したい…


〇横流し

農業につかうお金を農協から無利子で借りられる制度は多くあるが、その場合、商品を全て農協におろすという「誓約書」を書かされていたよう。そして、それを破ることを「横流し」というそうだ。10年縛りがあるよう。

JAも無利子で貸している以上、他でメリットを得られないといけないのはその通り。企業の海外留学後、5年間は転職禁止、みたいなものか。


〇メロンがほぼ全滅

農業は天候に左右されるため、失敗はつきもの。それでも技術をみがけば、徐々にスキルアップする物。失敗では、お金は残らないが、栽培技術が残ることをお忘れなく。


〇営農計画書

1年間の各種作付け計画等から各種交付金の支払いベースとなる資料。これにより、クミカン口座の年間の釈入限度額も決まるので重要な資料だ。

そして、この営農計画書に則って、農協の営農指導部から、作付け作物に関する指導が入ることも…例えば、地域として赤身のメロンをブランド化して売り出したいので、全て赤身のメロン作ってくれ、等々。

農家が作りたい物を作れない、という状況が発生しうるのは、果たしていいことなのか悪いことなのか…


〇ハウスの開け閉め

これはハウス作物ならどこでも必要な作業。

メロンは特に、昼の時間帯に締め切ってしまうと、室内の温度が上がりすぎてしまい、茎や葉が焼けてしまい、あっという間に全滅してしまうのだ。

例えていえば、室内を常に28に保つために、空調ではなく窓の開け閉めで常に換気量を調整するようなもの。子供の肌掛けを1日中見ているようなもの。


寒い地域では、ビニールを2重にしていて、片方のみしか開けていないくて全滅、なんていうことも…1年間に1回しか収穫できないので、1年間の努力が1日のミスでおじゃん、という悲惨な状況もあるようだ。


〇機械共同利用組合

複数県の農家がお金を出し合って、共用の機械を購入する組合。今でいうところのシェアリングエコノミーの走りでしょうか。

それだけでなく、一緒に悩みを相談したり、時に作業を手伝ったり、機械整備の方法や農家との付き合い方を教えてもらったり、非常に重要な組織、のようです。


〇相続問題

農家の家で、土地を本家の長男が全て引き取る、というのがこれまでの習わしではあるが、そうならないこともしばしば…

この本の例では、土地を持った祖父がなくなり、祖母がいる場合には、兄弟で話し合って、長男一人への相続ではなく、1/2の相続権のある祖母に土地を相続させることで、祖母の面倒を本家が見続けるように縛り付ける、ということもあるようだ。

これは、兄弟自身がそう思っていなくても、兄弟の妻や親族が、祖母の面倒を見るのを煙たがってそのようにさせる、などということもあるそうで、兄弟が大丈夫だから大丈夫だろう、とたかをくくっていると、痛い目にあうはず。

問題が起きた際には、本家じゃないから、と拘わらず、相続の段になって口をはさんでくるとは…

実は私も、農家の本家の長男で、3人兄弟なので、正直、不安です…


〇農業改良普及センター

農業・農村の現場において農業者と直接接して技術・経営指導等を行うことにより、担い手育成、産地育成、食の安全性の向上等地域の課題解決を進めます。新規就農者の支援なども行なっており、県や市が運営している組織のようで、直売に関する人材の紹介などもしてくれていたようなので、JAとは独立した組織だと推察。


◯個人情報保護法(著書内では消費者保護法と記載)

直販などをした際に、集めた情報を使ってDMを送る場合には、受け手の許可が必要になるが、その根拠となる法律。(勝手に伝票等に記載された住所にDMを送ってはならない)2005年から全面施行されており、それ以前は個人情報の扱いはもっと無秩序だったようですね。


〇農業青年会(農業青年クラブ)

将来の農業を担っていく20~30代の若者が中心となって組織され、各人の課題の共有や地域のボランティアなどを行う団体。

日本全国に850団体、1万3千人のクラブ会員がいるとのこと(農水省HPより)


〇農業青年会、機械共同利用組合等の離脱

地域の行事や共同イベントなど、協力しながら取り組んでいることが多いため、自分で直販するなどの「自分勝手」なことをして輪を乱し、組合などから抜けると、その地域の農業関係者からはのけ者扱いされる。

それは、地域のBBQにも家族ぐるみで呼ばれなくなるし、仮に手助けしたい人がいても、その手助けした人もいじめられるから手助けが出来ない。苦しい経験をすることになるよう。


〇農業で必要なモノ

①しっかりと安定して作れる農家

②自分で販路を拡大できる農家

どっちがかけてもダメ。


〇ダイレクトマーケティングの理論を学ぶ大事さ

今でいうD2C。これは様々な分野で活用されている知見なので、再現性の高い手法が多く書籍等で出されている。

時にはコンサル等をつかってもよいが、しっかりと勉強して、いいと思ったことは試してみるのが大事。



どれだけ農家は大変なんだろう、と戦々恐々としながら読み進めています。

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