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大地の再生 能登震災復興支援レポート① 輪島市東山集落編 1/2 ※図解付


はじめに

日常生活において、私たちが住む家や敷地、田畑、道路、公園などの空間は、手入れを重ねることで長く安全に使い続けることができます。昔の人々は、自分の力で土地を開拓し、家を建て、道を作りながら、自然の持つエネルギーを活かしつつ、自らの生活空間を作り上げました。自然災害が多い日本では、自然と共生しながら暮らしを支えることが大切であり、それが美しい日本の風景を形作ってきました。
しかし、現代では土木や建築は専門家に任されるようになり、私たちは自分の手で自然の中に居場所を作る力を失いつつあります。その結果、自然を観察し、対話を交わしながら、日常的に暮らしの場を手入れする習慣も失われ、人と自然のつながりが薄れてしまいました。
手入れがされない場所は、時間と共に劣化していきます。一度壊れてしまった場所を元に戻すには多くのエネルギーが必要ですが、大地の再生は、この劣化を遅らせ、回復させる力を持っています。専門家でなくても、誰でも行えるこの方法は、自然の力を引き出し、人と自然が共に育つ場を作り上げるものです。放置すれば悪化していく場所も、適切な手入れをすることで、徐々に良い方向へと向かわせることができます。
自然と共に育つ場所はしなやかで、災害にも強くなります。また、被災後に大地の再生を行うことで、二次災害や三次災害の予防になり、ホコリや泥などの不快な環境を軽減し、より健康的で安全な暮らしを守ることができます。
自分たちの手で、自分の居場所を守り育てていく術、それが「大地の再生」です。
 

輪島市東山集落 道路メンテナンス編1/2

2024年8月22日から23日にかけて、震災後の復興活動の一環として、能登の復興支援活動の視察と経過観察が行われました。この日は、合同会社杜の学校の代表である矢野さんを中心に、杜の学校スタッフ及び大地の再生の最前線で活躍するメンバーが参加しました。今回の作業では、矢野さんが震災後から取り組んできた復興現場のメンテナンスと経過観察を行いました。

流域の風通しと通気浸透水脈のメンテナンス

8月22日の午前中には、石川県輪島市東山集落の風通し作業(風の草刈り)と通気浸透水脈のメンテナンスが行われました。震災時に土砂災害で封鎖されていた集落へ繋がる道路は、杜の学校スタッフ等によって開通された場所です。この地は、南志見川上流に位置しています。現在は、地元の土木業者さんの合意を得ながら、二次災害防止のための通気浸透処置や土留め処置を行っています。

大地の再生メンバーが能登に集結

空気と水の流れを整えるメンテナンス

矢野さんによる、沢周辺の風と水の流れを改善するメンテナンスと説明が行われました。震災によって庭の一部が崩落し、沢が土砂で埋まってしまったため、空気と水の流れが悪化していました。
崩落した家や土砂の溜まる道などがある中で、見落とされがちな箇所ではありますが、この沢の詰まりを小さな力で取っていくことで、この場とこの場に住む人々にとって大きな良い影響をもたらします。大掛かりな作業は必要ありません。
空気と水の滞りは、周辺の植物たちが弱くなり、地力が下がることで更なる敷地の崩壊などの二次災害をもたらす可能性もありますし、水が停滞すると悪臭の発生など、人の健康にも被害を及ぼします。
この状況を改善するために、矢野さんは自然の法則に従った作業を行い、必要最小限の力で流線型の流れを作ります。

震災によって庭の一部が崩壊

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