「オタク2人」からの大逆転 実力診断テスト振り返り(窪田七海)
10. 窪田七海(私の魅力に 気付かない鈍感な人/光井愛佳(モーニング娘。))
ピンクのフリフリ衣装でバッチリと決めに来ていて、かわいい寄りでしたが、強さもある圧巻のパフォーマンスでした。ベストパフォーマンス賞もあったかも…。
そして歌唱賞受賞ということですが、むしろ歌唱以外も光った演出だったように思います。
まずここで述べておきたい。おめでとう!
さて、この窪田七海ちゃん。昨年の実力診断テストの時点では、「オタクが2人しかいない」と言われるほどの不人気メンバーでした。
まず加入した研修生の同期には、橋本桃呼(現・ラストアイドル2期)、後藤咲香(元・SPATIO)と言った人気メンバーになる器の子が2人いました。その二人に加え、今回賞を受賞した為永幸音をはじめとする有力メンバーたち、そしてその上の期にも、のちにビヨーンズでデビューを果たす山﨑夢羽や西田汐里、実力診断テストでベストパフォーマンス賞を獲得した島倉りか、松永里愛など、今思えば錚々たるメンバーが揃っていました。
錚々たるメンバーの中で、まずパートは貰えなくて当然。発表会の中では2軍ユニットでの登場が常連でしたが、そこでさえほぼ出番なしの窪田七海ちゃん。オタクが2人しかいなかったのも、まだマシな状況だったと言えるほどに空気でした。
研修生の同期って、だいたいは同じオーディションを経て入ってくるということで同期なのですが、正直に言うと、「窪田七海だけはなぜ研修生入りしたのか分からん」というような声が大きかったと思います。
2018年の実力診断テストでも、トリで「わがまま 気のまま 愛のジョーク」を披露しますが、本当に空気。
おそらく、研修生オタクであっても多くの人は下線の事実を忘れています。そのくらいには空気。
この頃、窪田七海を推していると言うだけで、彼女を馬鹿にしているといったように取られてしまうほどに、誰も彼女には関心がありませんでした。
そんな子がここまで評価されるようになったというのがハロー!プロジェクト・ドリームなのです。まさに、“ハロドリ。”
そこまでの過程には大きな転機が2つあったように思います。
一つは、2019年の実力診断テスト。「恋愛ハンター」を歌って、力強いパフォーマンスと、帽子が取れてしまったアクシデントを演出に見せかけるワザを披露します。
2年連続でモーニング娘。のEDM曲を選び、絶対に評価はされないだろうという予想屋を横目に、なんか窪田よかったぞ!?という爪痕を残しました。
※モーニング娘。のEDM曲では賞は難しいという予想は当たっています。あくまでも
この際に、実力診断テストの情報誌を制作していた私は、窪田オタ3人目である高校生の少年に、「窪田について何か書いてくれないか?」とお願いしました。
自分でも窪田七海がイマイチ分かっていなかったから、依頼するしかなかったのです。
文字数が多いぜ…でも、読んでくれ!
このコラム、そして本番のパフォーマンスで彼女の人気は少しだけ上がり、オタクは2人から12人に増えたと言います。
でも、まだ12人。全員がオタTを着たとしても、中山夏月姫ちゃんには到底敵いません。
そこからの2つ目の転機は、2019年7月に研修生選抜ユニットに選ばれたことです。
この恋愛ハンター窪田を機に存在感を増していった窪田七海ちゃんですが、言うてまだ一軍ユニットではパートを一つ貰えるか貰えないかというゾーンでした。
ですが、6月の発表会を終えての突如の発表で、選抜ユニットへの加入が決まりました。
正直に言うと、ここでもまだ「なんで窪田が選ばれているの?」という声はあったと思います。まだまだ笑われる存在でした。
しかし、もともとの力強さが歌唱力にも活きるようになっていき、何より5人ユニット(当時)なので、歌割りもたくさん回ってくるようになり、徐々に彼女の魅力に気付いていく人が増えたように思います。
この頃くらいからは、窪田は来てるぞ、という感覚が私の中にもあり、12月発表会では、「エースではないけれど一角を任せられる存在」になったと思い、公演後には酒を飲みました。
そうして、コロナで表舞台もない中での久々の公演が実力診断テストでした。そんな中でもちゃんとおうちで対策して来たのでしょう。1.5キロのダンベルをマイクに見立てて練習してきた成果は、上野まり子先生にも届きました。
そして今回はEDM路線ではなく、往年の鉄板ナンバーといった感じで、それ自身をモノにしてしまえば評価されるという選曲を行いました。
「私の魅力に 気付かない鈍感な人」。
かつてオタクが2人しかいなかった窪田七海ちゃんに歌われると、今やオタクがたくさんいるその姿ではやはり感慨深いものがあります。
もともとは道重さゆみに憧れてアイドルを目指したという彼女ですが、その中で佐藤優樹の個性溢れるパフォーマンスにも魅せられます。現に、この選曲は『まー鈍』とも呼ばれる、本家に並ぶほどの伝説のパフォーマンスの元曲という意味付けが大きいです。
それに影響されて選んだと、本人からのお話もありました。
3回目の実力診断テストでは、窪田なりのかわいさを発揮した窪田七海ちゃん。かわいいで圧巻したのは、大したものです。
さゆに憧れるアイドルってたくさんいるのですが、それで終わらずに自分なりのかわいさを見つけ出し、実際にパフォーマンスできたアイドルってそういない。
力強さ=さゆらしさ、とはそのままでは言えない部分もある。でもその力強さを武器にして、さゆの代名詞である『かわいい』を魅せ付けたのはお見事の一言。
さゆに憧れる→さゆにはなれない→なれないのではなく、私なりのかわいいを目指す、という物語の結晶こそが、この鈍感に詰まっていたと思います。
窪田の魅力に かつては気付けなかった鈍感な人たちのたくさんの投票があったのだと思います。
てか気付いていたお二人、なんなんだよ…。